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超高齢社会の日本だからこそできるインバウンドサービス

第2回かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム(KSAP)デモデイ

特集
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「需要予測AIの開発」ROX

ROX CEO 中川達生氏

 パン屋などの製造小売業では、来店客数の予測をして食材を調達したり仕込んだりしているが、結局値段を下げて販売したり、10%は捨てているという問題がある。この予測の精度を高めることで、無駄をなくそうとしているのが需要予測するAIシステム「Hawk」だ。

 Hawkは、店舗の過去の情報やオープンデータを元に需要を予測。最大45日後まで予測できるので、従業員やアルバイトのシフトも組みやすいのが特徴だ。さらに、KSAP期間中に時間ごとに何人来るかという予測も可能となった。

 ただ、予測にはズレが生じるもの。予測と実際の結果のズレを機械学習によって高精度化する仕組みも備えている。実際に店舗で来店者数の予測として活用してもらったところ、人件費の最適化やシフトの作成時間の大幅短縮、食材の破棄が55%減など、一定の効果が得られたという。

 すでに、大手のファミレスや社員食堂、運送業などでも利用されていて、パソコンがあれば誰でも利用できる。KSAPによる成果としては、昨年8月に16店舗だったのが2月には41店舗まで増加、特許出願も完了している。CEOの中川達生氏は「今後は店舗型の事業者をもつ企業との協業や新規テーマでのAI活用として手がけていきたい」と語った。

「訪日外国人旅行客×アクティブシニアで体験型コンテンツを提供」TRIPLUS

TRIPLUS 代表取締役 秋山智洋氏

 訪日外国人旅行客が年々増えているなか、より日常を体験したいという外国人が多くなってきている。TRIPLUSの代表取締役の秋山智洋氏は、「誰もが年を取るのにそれを楽しめないのは不思議なこと。その大きな理由として社会への参加が減ることが挙げられます。まだまだ輝けるシニア層の方々を支えるだけのサービスばかりが目立ちます。TRIPLUSは、旅行先の日常生活を体験したい外国人旅行客が、まるでそこで暮らしているかのような体験を、日本で暮らす50歳以上の方々によって提供されるサービスです」と熱く語る。

 近年、単なる観光地巡りから体験型コンテンツを希望する外国人旅行客が増えてきている。しかし、それを実現してくれるサービスはまだ少ないのが現状だ。自身がイギリスでたまたま出会った老人の手作り料理の食事が、今でも忘れられない経験となっており、この体験がこのサービス立ち上げの活力となっている。

 秋山氏は「日本人は有名な観光資源がないからインバウンド客は呼べない、語学力がないからおもてなしができないといった固定概念を払拭し、このサービスを通じて演出していきたいと考えています」と語り、年齢にかかわらずお金を稼ぎながら、いつまでも活躍できる社会を作っていくことを目指している。すでにさまざま団体や組織が後押しをしており、「超高齢社会だからこそ実現可能な魅力的な日本発のサービスを提供していきたい」と秋山しは熱く語った。


 ピッチの途中で、黒岩祐治神奈川県知事が来訪。「ここへは初めて来ましたが、新しいものが生まれるという予感が漂っていますね。先日、WeWorkの親会社であるソフトバンクと神奈川県は包括連携協定を結びました。なので我々もベンチャー支援をしっかりやっていきたいと思っています。こういったイベントが定着して、ますます新たなベンチャーが誕生することを、県としても全面的にサポートしていきますので、ぜひみなさんにもご協力くださいますようよろしくお願いします」とベンチャー支援に力を入れていくことを約束した。

 こうして10社のピッチが終わり、歓談しながらの交流会が行なわれたが、デモデイに参加したオーディエンスのみなさんによる、応援したいベンチャーへの投票も行なわれた。また、第2回KSAPグランプリの発表もされたが、なんと結果はどちらも「TRIPLUS」だった。秋山氏が語った日本の将来へのビジョンに対し、共感を抱く人が多かったとともに、成功して欲しいという気持ちが込められていたのであろう。

 W受賞したことに対して秋山氏は「このサービスのプランを考え人前で発表したとき、絶対無理だと言われたことがありました。3年間で1000人以上の高齢者の方にお話を伺ったり、外国人旅行客にインタビューしたこともありました。こうした声を聞きながら、将来必ず役に立つものになると確信。先日スペイン大使館に招かれたとき、このビジョンが形になることを見せてくれと鼓舞されました。世界中に高齢化社会であってもポジティブに日本の良さを伝えられるためのサービスにしていきたいと思います」と抱負を語った。

 第2回KSAPはこれで終わりだが、第3回、第4回と続けて支援していく予定だ。神奈川県によるアクセラレーション・プログラムに参加したいベンチャーは、次回の募集を随時サイトでチェックしてほしい。

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