パソコンの開発プロジェクトで
またしても1年で結果を出すことを命じられる
さてCOOだったOpel氏がLowe氏のプランに肩入れしたこともあり、CMCはLowe氏のプランを承認。Project Chessと名付けられ、IBUとして独立した開発組織をLowe氏は率いることになる。そして1年で製品を出荷開始することが求められた。
Lowe氏はこのProject Chessの実務責任者としてGSDにいたPhilip Don Estridge氏を据える。その後Lowe氏はより上位の仕事に忙殺されることになり、事実上Estridge氏が総責任者としてPCの開発にあたることになる。
画像の出典は、IBM Archives
もともとの“the Dirty Dozen”だったメンバーはそのままProject Chessにシフトしたようで、主なメンバーとしてはシステムアーキテクトをLewis Eggebrecht氏とDavid O'Connor氏が、ハードウェアをBill Sydnes氏が、Jack Sams氏がソフトウェアを、David Bradley氏がBIOSを、Mark Dean氏が拡張バスと拡張カードを、H.L.Sparks氏がマーケティングをそれぞれ担当したようだ。
ここからの話は比較的広く知られている。CPUとして16bitのものを使う、という決断はもともとLowe氏がCMCに提示した事業計画書に書かれていたという話もあり、一方でマイクロソフトがIBMに助言したという話もある。
ただそもそもIBMはSystem/23の開発で深刻なメモリー不足に見舞われていた。なにしろRAMは合計128KBと言いつつ、16KBの細切れが8バンクあるという、ものすごくプログラミングに苦労する構成だったために、IBM-PCの開発では16bit CPUを使うことを強く望んでいたそうで、16bit路線は規定だったと思われる。
その一方で、周辺回路などはSystem/23のものをかなり継承した構造になっており、となると16bitのデータバスは不可だった。
結果、インテルが1978年に発表したIntel 8086を使うことは不可能だったが、インテルはこの目的のために外部バスを8bit化したIntel 8088を1年遅れの1979年に発表しており、ハードウェアの基本路線はこれで確定したことになる。
問題はむしろソフトウェアの方で、まず基本となるOSを求めてDigital Researchの門戸を叩くものの、すれ違いに終わったという話は連載402回で紹介した通り。
その後IBMの一行はマイクロソフトを訪ね、かくしてMS-DOSが爆誕することになるわけだが、ここではおいておく。
またIBMはIntel 8088を採用することを決断するものの、インテルに対してセカンドソース供給ベンダーを用意することを要求、これをインテルが飲んだ結果として多数のベンダーが8086や8088のセカンドソース生産を行なうことになり、ここから現在まで続くインテルとAMDの競合が始まるわけだが、その話もいずれする。
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