いま国内では「e-Sports」が盛り上がろうとしています。e-Sportsとは、エレクトロニックスポーツの略。コンピューターゲームやビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際に使われる名称のことです。e-Sportsにはプロ選手も存在しており、国内外で開催される賞金制大会での賞金を獲得したり、企業からスポンサードしてもらったりして生計を立てている人も。
しかし、e-Sportsという文化が国内でいまひとつ根付いていないのも事実。とは言え、世界的にみればe-Sports市場は活発化していっており、今後も市場規模は拡大する見通しだと報道されています(Newzoo)。
そんななか、国内ではいま人気の動画配信サイトでe-Sportsをもっと盛り上げようという取り組みがあります。
株式会社CyberZは国内最大級の“eスポーツスタジオ”を完備した「OPENREC STUDIO」(オープンレックスタジオ)をリニューアルオープン。2018年2月15日にメディア向け内覧会を開催しました。
東京・新宿にあったこれまでスタジオを六本木へ移し、収録スタジオ7室、コントロールルーム3室、控室13室、マスタールーム1室、美術庫3室を備えます。規模に合わせた大小さまざまな収録が可能なスタジオ構成で、複数のコンテンツを同時に生み出せることがこのスタジオの特徴としています。
月間200万人弱が利用するゲーム専門の動画配信サイト
CyberZが運営する「OPENREC.tv」はサービス開始が2015年、まもなく3周年を迎えるゲームに特化したライブ配信・動画コミュニティプラットフォームです。
内覧会で登壇をした取締役・青村陽介氏によれば「現在のマンスリーアクティブユーザー数は190万人、開設されているチャンネル数は約1万3000(2018年1月時点)」。
OPENREC.tvでライブ配信・動画ファイルのアップロードをするには「申請を受け、事前審査を経てからのチャンネル開設」という形をとっていることから、他のプラットフォームに比べると、現在、開設されているチャンネル数はまだまだ少なめです。
ただ「1日30件ぐらい問い合わせをもらい、その中から審査~開設への手順を経て、順次チャンネル数を増やしている」(青村氏)とのこと。
Twitchとは切磋琢磨していきたい
今回の内覧会ではプロゲームチーム「TOPANGA」と「SCARZ」による「ストリートファイターV アーケードエディション」エキシビジョンマッチを実施。
その後に設けられたプロゲーマーへの質疑応答で「プロゲーマーから見たOPENREC.tvに今後望むこと」についてメディアからの質問に対し、
「OPENREC.tvで配信をしている人の数は僕らからみてまだ多くない。チャンネルが開設しやすくなり、配信をする人の数が増えれば、結果的に、視聴者が楽しめるジャンルの選択肢が一層広がるのでは」
「僕らがやっているゲームコンテンツは英語圏プレーヤーが多いので、OPENREC.tvが海外に向けたプラットフォームへなることに期待したい」
という、OPENREC.tvで配信をする人たちの賑わいが増えていくことを望む声と、海外を意識したプラットフォームへ成長していくことを望む声が聞かれます。
これを受け、「OPENREC.tvの海外展開について」と、OPENREC.tvと同じくゲームに特化したライブ配信・動画プラットフォームである「Twitchがいま日本へ本格的な展開を進めていることについて」の2つの質問を青村氏へ投げたところ、OPENREC.tvの海外へ向けた展開については「こうした期待の声がかなり大きい。日本のプロゲーマーやゲームコンテンツを提供する企業の海外戦略に寄り添った形で、一緒に展開するのが勝ち筋なのかなと考えている」と語ります。
一方、ゲームに特化したプラットフォーム「Twitch」が日本へ本格的な展開を進めていることについては「良いプラットフォームなので切磋琢磨をさせて頂いていると同時に、現場でお会いする機会も多いので様々な情報交換もさせて頂いている。e-Sportsを一緒に盛り上げられたらすごくいい。そして、私たちとしては、今回リニューアルしたOPENREC STUDIOを通じ、良質なコンテンツを提供していくことでも差別化をはかり、しっかり戦っていきたいと考えている」と応じました。
OPENREC.tvの配信者育成の拠点となることに期待
今回の内覧会で最も気にしたのは「OPENREC STUDIO」はどのような人たちが利用できるかという点。
今回リニューアルされたOPENREC STUDIOは、現在配信しているOPENREC.tv公式番組コンテンツや(グループであるサイバーエージェントとテレビ朝日が共同出資して設立された)AbemaTVのゲーム専門チャンネル「ウルトラゲームズ」で放送されているコンテンツの制作、そして、e-Sportsのイベントでの利用などを想定。また、ゲームコンテンツを提供する企業、特定のスタープレイヤーや配信者とのタイアップによって、スタジオが活用される形が主体になりそうです。
内覧会で周った印象としては、スタジオ自体のセキュリティーなどの都合もあり、誰もが自由に出入りできるような形ではありません。よって、OPENREC.tvでチャンネルを開設している配信者すべての人が利用できるのではなく、ある程度限られた形での運用がメインとなっていくのかもしれません。
今回リニューアルされたOPENREC STUDIOがゲームに関心がある視聴者を惹きつけるための「魅力的な番組コンテンツが発信される場所としての機能」していくことはもちろんですが、それと同時に、プロゲーマーを目指す人だけでなく、OPENREC.tvでゲーム実況ジャンルのライブ配信をする「配信者が育成されていく場所としての機能」にも期待をしたいところです。
ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda)
ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
nodatakeo.com
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