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最新パーツ性能チェック 第226回

ZenとVegaが合体した「Ryzen G」は低予算自作における革命だった!

2018年02月12日 23時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラ ハッチ

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 ここからは実ゲームベースのテストに入る。まずは「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター(FF14)」の公式ベンチを使用する。ビデオカードのレビューではフルHDから4Kまで解像度を変化させてチェックするが、今回は解像度をフルHDに固定し、画質が“最高品質”と“標準品質(ノートPC用)”の時にどうスコアーが変化するかチェックすることにしたい。

「ファイナルファンタジーXVI:紅蓮のリベレーター」公式ベンチのスコアー

「ファイナルファンタジーXVI:紅蓮のリベレーター」公式ベンチ実行中の平均fps

 3DMarkではかなりの健闘をみせていたRyzen Gのパワーは、FF14ベンチでは見る影もない。Core i5/i3の内蔵GPUには余裕で勝てているが、GT 1030には全く歯が立たないといったところか。だがFF14ベンチはGeForceが非常に有利であること、さらにRyzen 5 2400GとRyzen 3 2200Gの結果に大きな差がないことから、ドライバーの不具合である可能性も高い。製品が実際に発売され、ドライバーの完成度が上がれば、もう少しGT 1030に迫れることを祈りたい。

 続いては「ファンタシースターオンライン2(PSO2)」のキャラクタークリエイト体験版(Episode4)のベンチマーク機能を利用する。画質は軽めの“4”および“3”で計測した。

「ファンタシースターオンライン2」のキャラクタークリエイト体験版(Episode4)のスコアー

 PSO2ベンチもNVIDIA肝いりのベンチであるが、FF14ほどガチガチなGeForce寄りという訳ではない。むしろCPUパワーに引きずられる傾向が強いので、シングルスレッド性能が低いRyzen Gではあまりスコアーが出ない。ここでもGT 1030とインテル製CPUの組み合わせの前には全く歯が立たない印象だ。

 しかし、内蔵GPUパワーだけで勝負させると、Ryzen Gシリーズはインテル製CPUに対しほぼ2倍のスコアーを叩き出している。Ryzen 5 2400Gで画質3であれば、だいたい60fpsを出せている。この事実を考えると、Ryzen Gシリーズがいかに革命的な製品であるかがわかるだろう。

 続いてはそろそろゲームエンジンが大幅刷新されるという「World of Tanks」のベンチマーク“Encore”を試してみた。画質は“最低”および“中”の2通りで計測するが、解像度はフルHDに固定している。

「World of Tanks: Encore」のスコアー。A12-9800Eの中画質におけるテストはスペック不足により実施不能

 スコアーの順位的なものはPSO2ベンチの結果に近いが、こちらではRyzen 5 2400GとRyzen 3 2200Gの差がしっかりついている。このベンチでも最低設定ではインテル製CPUとGT 1030のペアに完膚なきまでに叩きのめされているが、このベンチでもCPUの処理性能が影響しやすいためこれだけの差がついたとかんがえられる。

 だが中設定では負けはしているものの、Ryzen Gはかなりインテル製CPUに迫っているといえるだろう。Ryzen 5 2400Gなら、中設定でも50fps近くに落ち込むことがあったが、概ね60fpsあたりでウロウロしていた。描画負荷の軽いゲームに限定すれば、Ryzen Gシリーズのコスパはとてつもなく高い。

 ここまでかなりGeForce寄りのベンチが多かったので、特にVegaと相性の良いDirectX12ベースの「Forza Motorsport 7」も試してみた。画質は“低”または“中”をベースにしたものを使用したが、前者はMSAAなし&異方性フィルタリングは4x、後者はMSAA x2&異方性8xに設定した。また、オンオフのように2段階しかない設定については、全てオフ(またはより軽い選択肢)に統一している。

「Forza Motorsport 7」低設定におけるフレームレート

「Forza Motorsport 7」中設定におけるフレームレート

 これまでGT 1030に叩きのめされてきたRyzen GがForzaでは一気に逆転、インテル製CPU&GT 1030の組み合わせよりもはるかに高フレームレートを叩き出した。まだドライバーの熟成が足らないのか、もしくはメインメモリーをVRAMとして使う仕組みがボトルネックなのかまでは分からないが、Ryzen G環境ではベンチ中にフレームレートが激しく落ち込むポイントが何点か存在した。

 ただ内蔵GPUでも驚くほど高いフレームレートが得られていることは疑いの余地はない。ドライバーの熟成でどこまでフレームレートが安定するかが見ものだ。

 リアル作業系のベンチも少しだけ試してみよう。まずは「Lightroom Classic CC」最新版にRAW画像(4000×6000ドット、NEF形式)を200枚インポートし、レンズ補正をかけた上でDNGに変換する時間と、DNGを最高画質のJPEGに変換する時間をそれぞれ比較した。JPEG変換時はスクリーン向けのシャープネスを適用している(適用量は標準)。

「Lightroom Classic CC」によるRAW画像変換時間

 このテストは時間を計測しているのでグラフのバーが短いほど優秀ということになる。その意味ではインテル製CPUに対しRyzen Gシリーズは完敗といえるだろう。メモリークロックはRyzen Gの方が速いので、単純にCPUの馬力の差といえる。

 ただA12-9800Eの惨状(Bulldozer系なので仕方ないとも言えるが)を考えると、APUとしてはとてつもなくパワーアップした、という考え方もできる。

 続いては「Premiere Pro CC 2018」で編集した4K動画(再生時間約3分半)を「Media Encoder CC 2018」でエンコードする時間を比較する。コーデックはH.264を使用、さらにドライバーの問題からかRyzen Gではデコード処理にGPGPUを使うとフリーズしたので、全てCPU側で処理させている。

「Media Encode CC 2018」による4K動画エンコード時間

 順位的にはLightroomと同様にインテル製CPUの方が優秀であるといえるが、Ryzen 5 2400GとCore i5-8400、Ryzen 3 2200GとCore i3-8100の差はそう大きくはない。このテストに限っていえば、十分選択肢に入るレベルの性能といえるだろう。

 最後に消費電力をチェックしよう。“アイドル時”とはシステム起動10分後の安定値、“高負荷時”とは「OCCT」の“Power Supply”テストを5分回した時点での安定値をそれぞれ計測している。

システム全体の消費電力

 グラフのバーの長さだけ見ると、Ryzen Gシリーズの高負荷時の消費電力がヤバそうな感じに見えるが、OCCTのPower Supplyテストで限界まで回しても150Wを超えない程度に収まっている。Core i5/i3とGT 1030の組み合わせは高負荷時はよいが、アイドル時はRyzen Gよりも明らかに消費電力が増えている。

 ちなみに、ゲーム中の消費電力はRyzen 5 2400Gでも90から100Wといった所で推移している。

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