2月より東京都では被害を防ぐための条例が施行
「裸の自撮り画像を送らされる」 中高生の間で被害増加
2018年02月06日 17時00分更新
中高生によるいわゆる「自画撮り」の被害を防ぐための条例が2月1日から全国で初めて東京都内で施行されました。「18歳未満の子どもに裸の画像を送るよう求める行為」を禁止し、違反した場合は30万円以下の罰金を科せられるというニュースを聞いた方も多いかもしれません。
被害によくあるケースとして、同じ世代や共通の趣味、関心事をきっかけにソーシャルメディアで知り合った(経歴や性別を詐称する)相手とダイレクトメッセージや、LINEなどのコミュニケーションツールのIDを交換。そこから徐々に、学校などの身近な話で共感をし合ったり、プライベートな相談をし合う仲になります。そして相手から「私も送ったからあなたも見せてよ」と自分撮りをした写真を交換したのちに、エスカレートしていって裸の画像を送るように求められるといったことがあるのだそうです。当然ながら、ここで「嫌だ」と断ったとしても、それまでに相手へ送った自分撮り写真やプライベートな情報をネットで拡散すると脅され、言われるがままに画像を送ってしまうこともあるとのこと。
内閣府の「政府インターネットテレビ」で公開している実際の事件を基に再現したドラマ「自画撮り被害が増加! SNS上の出会いに要注意!!」が参考になります。
距離が縮まるからこそトラブルは起きてしまう
近年、ネットを利用する上で、「法律や公序良俗に反しない」といった世間や社会秩序を守ること、「他人を中傷誹謗しない」ことで他人を傷つけないことのほかにも「個人情報は公開しない」といった自分を守ることについての注意喚起が多くなされてきました。
ただ、自分を守ることに関しては、「個人情報を公開しない」といった「“自分で”自分を守る」こと以外にも、「“他人”から自分を守る」ことも必要です。
この“他人”は「もともと明らかな悪意があるとき」もあれば、「最初は悪意があるように見せず、後から悪意を見せるとき」、さらには、「まったく悪意がなく、純粋に親近感を感じて自分との交流を求めて来るとき」もあります。
いずれの場合にせよ、世代や共通の趣味、関心事をきっかけに、お互いに共感し、親しくなったネット友だち(=ネットを通じて知り合い、リアルで会ったことがない友だち)との距離感はとても近いものになりがちです。
その結果、「最初は悪意があるように見せず、後から悪意を見せるとき」だけでなく、「まったく悪意がなく、純粋に親近感を感じて自分との交流を求めて来るとき」であっても、距離感が近くなったからこそ起こるトラブルも少なくないのかもしれません。
TwitterやInstagramといったソーシャルメディアに限らず、YouTubeやツイキャス、LINE LIVE、MixChannelのようなライブ配信&動画メディアなど、ネットを通じて、自由に情報を発信(投稿)したり、コミュニケーションしたりできるサイトすべてに共通して言えることがひとつあります。
それは、必ずネットで知り合った友だちとの「一定の距離感を保ち続ける」こと。親しくなったことによって、ネット友だちとの距離感を縮めたとしても、不用意に“縮め過ぎ”てはいけません。
いろいろな人とつながりたい欲求は自然なこと
世代や共通の趣味、関心事をきっかけに、自分自身の身の周り(日常)の世界を超えて「いろいろな人とつながり、お互いに共感しあいたい」という欲求はごく自然のことです。そして、インターネットやスマートフォン、ソーシャルメディアなどさまざまなサービスが普及し、身近になったことによって、その欲求を満たすことは容易となりました。
もはや、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアというサービスが当たり前となった以上、ネットを通じたコミュニケーションは避けることができません。
とはいえ、トラブルを避けるために「ネットやスマホ、ソーシャルメディアに依存しない」とか「自分撮りした写真をソーシャルメディアへ投稿しないようにする」とか、事例を示した上で危険性を注意喚起していくことはもちろん大事なのですが、トラブルを避けることはもはや「事実上、不可能に近い」かもしれません。さらに言えば、ネットでの交流が当たり前となったいま、相手を(とりあえず)信頼しないとコミュニケーションは成立しなくなります。
「ネット上では経歴や性別を容易に詐称できるから気をつけよう」と言われても、そもそも、ネットを通じて知り合う相手の見極めは、子どもはもちろん、大人でもとても難しいものです。ゆえに「相手が経歴や性別を詐称しているかも」とハナ(最初)から疑ってかかるのも難しいと思うのです。
ネットを通じてコミュニケーションする人と「一定の距離感を保つ」
ただ、知り合った相手が結果的にどのような相手だったにせよ、ネットを通じてコミュニケーションをするときには「一定の距離感を保ち続ける」ことで、トラブルをゼロにすることはできなくとも、トラブルに遭う可能性を軽減させることはできます。
この「一定の距離感を保ち続ける」とはどういうことでしょうか。
身近な例で言えば、テレビでよく見かけるタレントやアイドルの人がわかりやすいかもしれません。人気の芸能人であればあるほど、ファンとなってくれた人たちを大事にしつつ、一定の距離感を保ち続けることにより一層注力しているように感じ取れます。
さらに言えば、現在では、芸能人もソーシャルメディアなどネットを通じた情報発信が主流になりました。これまでテレビやコンサートなどでしか見ることができなかった憧れの人がソーシャルメディアによって、これまでよりファンとの距離感が縮まっています。
親しみを感じてコミュニケーションをとろうとしているファンに対して、芸能人の人も最初から「この人は悪意があるかもしれない」と疑ってかかるわけにはいきません。その代わり、コミュニケーションを大事にしつつも、ある程度の「一定の距離感を保ち続ける」ようにしています。
これと同じようなことが、私たちもソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアを利用する上で必要なことだと思うのです。
「一定の距離感を保ち続ける」って難しそう
ただ「一定の距離感を保ち続ける」って難しそうに見えます。しかし、私たち(大人も子どもも)も日常のリアルな世界で、人とのコミュニケーションにある程度の「一定の距離感を保ち続ける」ことで生活しているはずです。
確かに、メディアでは時折、ネットの世界で起きたトラブルが報じられています。とはいえ、同じ学年、性別、趣味の共感によって、ネットの世界で人とつながっていくことはいけないことではありませんし、話が盛り上がっても良いと思うのです。
忘れてはいけないのは、ネットの世界はリアルの世界よりもつながった相手に親近感が湧いてしまいがちですが、「ネットはリアルより特別なものではない」こと。そして、リアルの世界と同じように、ネットの世界でも「悪意を持った人は必ず存在する」ことは理解し、忘れないようにしておかなければなりません。
そして、リアルの世界でもネットの世界でも、「一定の距離感を保ち続ける」ことはコミュニケーションをする上で一番大事なことだと思うのです。
ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda)
ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
nodatakeo.com
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