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旧ウォークマンのものづくりを受け継いだDJオーディオ機器「GODJ Plus」秘話

ハードウェアベンチャーは儲からないがロマンがある

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 2012年末、世界初のバッテリー駆動によるオールインワンDJシステム「GODJ」が発売された。それまでDJシステムと言ったら高価で大きな機器を指していたが、「GODJ」は重さ286gと持ち運べるコンパクトボディーが人気でブレイク。そしてそこから4年。後継機種がお目見えしたとのことで、「GODJ」を手がける株式会社JDSoundの宮崎晃一郎代表に話を伺った。

株式会社JDSoundの宮崎晃一郎代表取締役

「GODJ」から4年、後継機種「GODJ Plus」がお目見えした

旧機種「GODJ」

 「GODJ」発売から4年。これまで旧GODJにおいてソフトウェアで解決できる部分に関してはアップデートで解決してきたが、ハードウェア的な部分への要望も多かったことが新機種開発のきっかけにあったという。

 「そろそろ一新したいと考えていたが、まだまだ小さいベンチャーなので何千万単位の資金を準備して新製品を作るのは難しい。それでクラウンドファンディングに挑戦となった。2011年に宮城県仙台市で被災をして震災後に起ち上がった我々の会社が、さらに実際に津波をかぶった石巻市でものづくりをする、というストーリーに共感していただけたのも大きかったのではないか」(宮崎氏)

 「GODJ」の後継機種の名前は「GODJ Plus」。クラウドファンディング「Makuake」を利用し、目標金額は2000万円とした。予約価格は3万7800円と、この手の製品としては格安。モノだけではないストーリーは大きな反響を生む。結果は1292人がサポーターとなり、約5300万円、日本では当時の最高獲得金額が集まった。購入ユーザーの地域を見ると人数の多い東京、神奈川に続いて、宮城県、福島県が入っているという。

 だがその後1年間は、期待に応える製品を作らねばというプレッシャーで宮崎氏としては精神的にきつい日々が続く。当初予定では2016年10月末の予定だったが、結果的には約5ヵ月の遅延となり、2017年3月にリリースされ、一般販売は2017年4月28日のスタートとなった。しかし、サポーターの期待をいい意味で裏切る製品に仕上げられたと宮崎氏は胸を張る。

イベント会場内ではんだ付けを行なう宮崎氏

 Makuakeで募集をかけたのと前後し、2016年3月28日にアスキーの主催のIoT/ハードウェアスタートアップのビジネスイベント「IoTH/W BIZ DAY」にも展示している。

 「あの時は、まだようやく動いた1台を持ってきたが、かなり厳しいスケジュール。これまでも経験はしていたが、量産まで持っていくのはやはり難しい。ノーミスでは進まず、つまづくところは大体つまづくもの。クラウドファンディングでサポートしていただいた皆さまには進捗報告を忘れずに行うことで、どうにか走り抜けられた」

 日本のハードウェアスタートアップが5000万円以上を集めるというのはまさに快挙。統計データによると、9割のサポーターが30~40歳代の男性だった。ガジェット好きで、音楽好きで、古いラジカセのような香りがするところに惹かれる人のツボにはまったのだろう。かくして、2台のプレイヤーとミキサーが合体していて、なおかつバッテリー駆動、という世界初のオーディオDJハードが生まれた。

コンパクトながらスピーカーの実力は本物

GODJ Plus

 「GODJ」をヘビーに使い続けてくれていたユーザーの多くは、「GODJ Plus」を購入してくれたようだ。宮崎氏は一部のユーザーとはTwitterなどで定期的に連絡を取っているそうだが、クラウドファンディングの話をすると即飛びついてくれたという。

 そのため、「GODJ」と「GODJ Plus」の2台持ちユーザーのための機能も搭載した。たとえば、データベースの移行機能。DJなら楽曲は所有しているはずなので、それはまた取り込めばいいだけだが、曲ごとに再生する頭の位置を決めたデータの再設定には手間がかかる。これをデータベースとしてコピーできるようになっているのだ。

GODJ Plus
本体サイズ282×210×40mm
重さ1125g
オーディオ端子RCA出力、ヘッドフォン出力、ステレオ入力、マイク入力
インターフェースmicroUSB(充電およびPC接続用)、USB-A(USB機器用)、SDカードスロット
容量16GB(音楽データ領域14GB、録音領域1GB、システム領域1GB)
連続再生時間LCD点灯時12時間、LCD消灯時24時間
付属品USBケーブル、簡単マニュアル兼保証書
価格5万3784円

 筐体はA4サイズで、ノブの数は「GODJ」の6個から16個に大幅増加。充電はmicroUSBで、連続再生時間はLCD点灯時で12時間、消灯時なら24時間だ。

 インタビュー中、実際に端末を動作させているところを見せてもらったが、スゴイ音だった。コンパクトなボディなのに、クリアで迫力のあるサウンド。7割くらいのボリュームで、さすがに会議室ではこれ以上は無理というところまでになった。指向性は高くなく、全方位でキレイに聞こえる。コンパクトなスピーカーにありがちな低音強調もなく、「GODJ Plus」は低音も出るが、高音も出ているのがいい感じ。

 飲食店でのDJイベントにはもちろんぴったりだろうが、ホームパーティや屋外でのバーベキューや花見など、これまでDJ機器を持ち込めなかった場所でこそ本領を発揮できそうだ。電源がなくても動作するので、手軽に持ち運べる。

 「狙った効果ではないが、そこまで遠くまで音が飛ばなかった。機体の周囲にはしっかり音が通るものの、お隣さんにはあまり迷惑をかけずにすむ」(宮崎氏)

 さらにものづくりの点でも、国内工場を起点に大きな改善が図られている。

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