東京大学は8月29日、 常温で液体のリチウム塩水和物「常温溶融水和物(ハイドレートメルト)」を発見したと発表した。
東京大学大学院工学系研究科の山田裕貴助教と山田淳夫教授らの研究グループは、科学技術振興機構の袖山慶太郎さきがけ研究員、物質・材料研究機構の館山佳尚グループリーダーらとの共同研究により「水」をベースとした新たなカテゴリーのリチウムイオン伝導性液体「常温溶融水和物(ハイドレートメルト、hydrate melt)」を発見した。
水と特定のリチウム塩2種を一定の割合で混合することで、一般的には固体となるリチウム塩二水和物が常温で安定な液体、つまりハイドレートメルトとして存在することを見出した。発見したハイドレートメルトは通常1.2Vの電圧で水素と酸素に分解する水を使っているにも関わらず、3V以上の高い電圧をかけても分解しないことがわかった。
リチウムイオン電池の電解液が可燃・有毒な有機溶媒から、不燃・無毒な水に置き換わることで火災・爆発事故などのリスクを低下させることができる。さらに、自然界に存在する水が電解液原料になることに加え、電池生産工程における厳密な禁水環境(ドライルーム)を撤廃することができるため、リチウムイオン電池の価格化をもたらすとしている。水を使った安全かつ安価な高性能蓄電池デバイス設計と生産プロセス設計の双方が可能になる。これにより、安全性と低価格の両立が要求される電気自動車や家庭用の大型蓄電池開発の加速が期待される。