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農業革命3.0は成功するか

世界初クモの糸で作る服登場、農業と産業に大きなインパクト

2016年04月06日 09時00分更新

文● 西牧/ASCII

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 農業とテクノロジーが組み合わさる時代がようやくこようとしている。どこからくるのか、山形県鶴岡市からだ。

 市内にある鶴岡アートフォーラムで「Agricultural Revolution 3.0(農業革命3.0) 展覧会」が開催された。ITを利用して新たな農業の取り組みをする「スマートアグリ」と先端バイオテクノロジーを導入した、「次世代農業」を体験するイベントだ。

 3月27日には農家や建築家、美術館のキュレーターなど各分野の第一人者が集まり、次世代農業についてそれぞれの切り口から語るカンファレンスも開催された。

農業からエネルギー産業や製造業へと拡張する「農業革命3.0」

 この農業革命3.0という大仰な言葉、なんとも聞きなれないがそれもそのはず。鶴岡市と、映像作家であるEUGENE KANGAWAさんの共同プロジェクトから生まれた概念だという。

 公式サイトを見ると、農業革命3.0について、こう書かれている。

 “スマートアグリとバイオテクノロジーという2つの柱の発展によって、農作物が従来の食料生産のみならず、生活の様々な素材やインフラを構成していくというビジョン──つまり“農作物が石油と同等かそれ以上の役割を担い得る”可能性と、これらを同時に支える農業都市の実現による農業の重要性の劇的な変化を示します。”

公式サイトより

 大雑把に解釈すると、従来の食料生産を主目的とした農業が将来エネルギー産業や製造業にもなり得る、ということなのだろう。単語も大きいが、概念としても大きく出た、という印象を持つ。

 展覧会は鶴岡市とKANGAWAさんのプロジェクトの総体、つまり両者がこれまで重ねた意見交換を披露する場であり、鶴岡市が「新たな農業都市」を宣言する場でもあったそうだ。アーティストと行政が組んで新たな概念を掲げ、展覧会を開く。ここにとても興味を引かれたから、今回カンファレンスに参加した。が、疑問も多い。

 もっとも気になったのは、なぜ鶴岡市なのだろうか、ということだ。

世界で注目を集める研究所とベンチャー企業

 鶴岡市にあるSpiberという会社をご存じだろうか。世界で初めて人工合成クモの糸「QMONOS」を開発したことで、注目を集めているベンチャー企業だ。Spiberの拠点は鶴岡市にあり、今回の展覧会、ひいてはKANGAWAさんと鶴岡市が意見交換をする中心になった、といっても過言ではない。

 そのSpiberが誕生したきっかけは15年前にさかのぼる。

 2001年4月、鶴岡市に慶應義塾大学先端生命科学研究所ができた。研究所では最先端バイオテクノロジーを用いて生体や微生物の細胞活動を網羅的に計測・分析し、コンピューターで解析やシミュレーションしているという。

 研究所の開設当初から所長を務める冨田 勝教授は、カンファレンスで当時をこう振り返る。

 「慶應義塾大学が鶴岡市に来た理由はなにか、答えようがない。山形県と鶴岡市が誘致した。その後、ここでなにをするのか、委員会を作って議論した。しかしまったくまとまらず、『いいアイデアはないか』と声をかけられた」

カンファレンスに登壇した冨田教授

 つまり、最初からバイオテクノロジーをやるために鶴岡市に研究所ができたわけではないという。

 「(考え始めてから)“そんなことを鶴岡で始めたのか”と言われることをやらないと意味がないと話が進み、コンピューターを駆使したバイオロジーをやろうと考えた」

 紆余曲折の末に研究所の道筋が決まったわけだが、現在では国内外から多くの研究者たちが視察にくるという。では、この研究所ではいったいどんな研究がされていたのだろうか。

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