フランス文化省は1月15日、フランスで販売されているキーボードは、フランス語を書くことにまったく向いていないという公式見解を発表した。
フランスおよびベルギーでは「AZERTY配列」と呼ばれる配列を採用している。フランスへの外国人旅行者(ネットカフェの端末を使おうと考えた人など)にとっては困りものとされているが、実のところフランス人にとっても使いづらいという。
一般的な配列(日本や英語圏で馴染みのあるQWERTY)に対してアルファベットの位置が一部異なっているが、とくに最上段では記号が優先的されているため、数字入力の際にSHIFTが必要になる。記号の優先はフランス語ではアクセント記号(àやÈ、Ôといった文字)が多用されることへの配慮と考えられるが、いくつかの文字(ÙやOù)は使用頻度が低いにも関わらず独自のキーがあり、合字のæやœは単独のキーが存在しないといった不合理さがある。
パソコンの場合はOSのキーボードドライバーやワープロソフト、スマホでは入力アプリが対応しており、複数キーの同時押しなどで各種文字の入力に対応している。とはいえ、通常のタイピングでも複数キーの同時押し頻度が著しく多く、フランス人にとっては非常に不満があるという。
このような経緯があり、フランス文化省とアカデミー・フランセーズ(国立学術団体)は、ついに新たなキー配列の標準化を検討することにした。発表文では「フランス語キーボードでフランス語を書くことが不可能である」とまでで書かれている。今後、さまざまな意見を集めて新たな標準キーボード配列を策定するようだ。
なお、AZERTY配列は1900年代初頭に考案されたとされている。考案者は不明だが、ほぼ同時期に普及が始まったQWERTY配列を参考にしている。これまで、フランス語のアルファベット使用頻度を考慮した人間工学的な(BEPO配列など)キーレイアウトが考えられてきたが、一部の愛好者が使っているのみで普及しているわけではないようだ。
新配列が策定されたとしても、キーレイアウトに関しては伝統や慣れといったさまざまな要素があり、標準化しても実際に普及・定着するかどうかはわからない。とはいえ、ほぼ100年間にわたる歴史を持つとはいえ不便なことには変わりない伝統を見なおそうとする動きには注目しておきたい。