スタイリングと機能を磨いて
スバルらしいSUV度を高めるビッグマイナーチェンジ
かつてスバルといえば、ラリーやステーションワゴンのイメージが強かったが、いまや国内外で、そのラインナップにおける主力はSUVになりつつある。とくにメインマーケットのひとつである、北米ではアウトバック、フォレスター、XVクロストレック(日本名はXV)という大中小の3モデルが、スバルの存在感を示している。
さて、そのアウトバック、フォレスター、XVといった3モデルは、今年の東京モーターショーでもスバルのブースで展示されていたうえ、多くのファンから注目を集めていた。というのも、フォレスターとXVはモーターショー開幕直前の10月28日にビッグマイナーチェンジと呼ばれる大幅な改良を受けていたからだ。
いずれもフロントフェイスを刷新した両モデルに、公道試乗をする機会が与えられた。それぞれSUVらしさを強めた、アグレッシブかつ安定感のある外観に進化した2台のSUVは、走り(中身)においても大幅進化を遂げているのだろうか。
まずはフォレスターの変更点と進化点を見てみよう。外観ではフロントグリルやヘッドライト、バンパーの形状を変更することで、ワイド&ハイというSUVに求められるイメージを強めている。リアのテールレンズについても、赤いブレーキ部分を高い位置に変えることで、視覚的な車高を稼いでいる感を強めている。
実際、220mmという本格オフローダーに匹敵する最低地上高(ロードクリアランス)を持つフォレスターだが、外観からもそうした悪路走破性を、よりアピールするように変身している。それだけにとどまらず、ホイールの意匠はスポーティーに、そして燃費につながる空力性能を向上させるように進化しているのだ。
その中でも注目したいのは新デザインのヘッドライト。その光源がLEDとなっているだけでなく、この新ヘッドライトには「アダプティブドライビングビーム」と名付けられた、対象物を自動認識して、適切な配光パターンに切り替える新機能がスバル車として初めて搭載されている。その対象物の認識に、スバルのコア・テクノロジーとなっている先進安全技術「アイサイト」の主センサーであるステレオカメラを利用しているというのもトピックだ。
走行機能については、パワートレイン系はNAエンジン車の燃費改善(15.2km/L→16.0km/L)が目立つ程度だが、サスペンションは大きく進化している。乗り心地と操縦安定性の両立を高次元に引き上げるといった狙いは当然として、ともすれば鈍重なイメージのあるSUVながらハンドル操作に対するクルマの反応を向上させているというのがセールスポイント。
発表によれば、ハンドルを回してから車体が動き出すまでの応答性を、35%も改善しているという。1/100秒オーダーでの話だが、体感できるレベルの進化だ。そのためにサスペンションの構成パーツを見直しているほか、ステアリングギア比をクイックにしているという。また、ターボエンジン車にはブレーキ制御を利用して旋回性能をアップさせる「アクティブ・トルク・ベクタリング」を新採用しているのもトピックだ。
前置きが長くなってしまったが、NAエンジン車とは異なる外観で差別化しているフォレスターのターボモデル「XT」の試乗を開始した。
メーター中央のカラー液晶モニターがエンジン始動時から進化を実感させ、期待も高まる。その走りは1610kgという巨体を物ともせずに加速させる、パワフルな2.0リッター直噴ターボエンジン(280馬力)が相も変わらず印象的。加速するとリアが沈み込んだ姿勢となり、サスペンションは悪路を意識したストロークを持っていることを感じさせるが、そこからブレーキを踏んでハンドルを切り込むと、前述した電子制御のおかげもあって、じつにスムースかつナチュラルに曲がっていくように仕上げられている。
まっすぐ走っているときには乗り心地に貢献する、いい意味でのフワッとした感覚が、コーナリングでは別の顔を見せるのは、面白い。
あらためて室内を見渡すと、ハンドルにはAppleのSiri Eyes freeに対応した発話ボタンが確認できるし、サンバイザーを展開するとバニティミラーが照明付きとなっているのも嬉しい。リアシートにはハイ/ロー切り替え式のシートヒーターが新たに備わっているなど、細部に渡ってユーザーの声に応えた、充実した装備としている。
なお、試乗した「XT EyeSight」のメーカー希望小売価格は312万8760円(税込)、そのほかNAエンジン車は214万9200円~289万4400円という価格設定となっている。