このページの本文へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第232回

SoC技術論 開発期間に大きく影響する検証とデバッグ

2013年12月09日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

大規模な検証とデバッグには
専用のボードを使用する

 では、検証をどうやってやるかだが、極めて小規模な回路レベルであれば、ソフトウェアのシミュレーターで確認できる。ただある程度の規模になると、当然ながらソフトウェアシミュレーションでは到底間に合わない。そこで登場するのが下の写真のボードである。

これは2009年のESC(Embedded System Conference)という、サンノゼで開催された組み込み向け展示会の会場で、ASIC設計支援ツールのベンダーが展示していたボード

 このボードは、2009年当時にAlteraで最大容量を誇った「Startix III FPGA」を20個搭載したボードである。背後に見えるボードは、Xilinxの「Virtex-5 FPGA」をやはり多数搭載したもので、そのベンダーの趣味やそれまでの開発リソースに応じてどちらのボードでも提供できるようにしているわけだ。

 FPGAというものは連載229回に名前が出てきたが、ハードウェアの回路をソフトウェア的に組み込んで実行できるデバイスである。

 このFPGAに、まずはブロック単位で論理設計が終わった部分を流し込み、ついでにその前後にテスト用の回路などもやはり論理設計を行なって単体で動作させて、テストするというわけだ。

 ちなみに、FPGAは同じプロセスで製造されたASICに比べて10倍ほど効率が悪い。ここで言う効率とは論理回路数/トランジスタ数比であって、例えばASICだとトランジスタ10個で組める回路が、FPGAにすると100個必要になるという意味である。

 このため、メモリーコントローラーのような小規模な回路なら1個のFPGAで収まるが、ある程度大きくなると到底1個のFPGAに収まらない。そのため、このようなお化けボードを場合によっては複数枚用意し、論理回路の側は複数のFPGAに収まるように適時分割して収めるわけだ。

 もちろん、これでは動作速度がなかなか上がらないが、フルスピードで動かすとテストが間に合わないため、もともとフルスピードでは動作させない。テストやデバッグ用の回路なども追加した状態でFPGAに入れるのが普通なので、速度はそれなりである。

 それなり、というのは最初は本当に数Hzで、場合によってはステップ動作での動作検証になるため、速度云々はまったく問題にならない。ある程度動くようになったら、例えばCPUだとLinux Kernelを流してみることになるのだが、その時点でもまだ数十MHzが普通であって、100MHzも動けば十分ということになる。

 余談になるが、このFPGA。AlteraにしてもXilinxにしても、ある程度の数(数万個程度)をまとめて発注すると大分価格が下がるが、逆に1個や10個で発注をかけると、特にハイエンド品は猛烈な価格になってくる。

 前述のボード写真に出ている「Virtex-5」のハイエンド品は1個100万円なのだが、現在のXilinxのハイエンドである「Virtex-7 2000T」では1個400万円という価格がついている。

「Virtex-5 LX」プラットフォーム

 この手のボードだとある程度まとめてFPGAを購入するからもうすこし部品原価は下がるだろうが、それでも1枚あたり数百万~1千万円超になっても不思議ではない。SoCベンダーの開発室に行くと、この手のボードがごろごろ転がっているのは「よくある風景」だ。

結合テストはシミュレーションで行なう

 FPGAに論理回路を分割して入れる手間はばかにならない。そのうえ、ある程度テストが進んで複数のコンポーネントをバスでつないで連携動作というタイミングになってくると、「遅い時には問題なく動くのだが、速度を上げると動かなくなる」という問題が必ず出てくる。

 このレベルの結合テストで長らく利用されてきているのがシミュレーションである。要するにソフトウェア上でハードウェアを完全にシミュレーションするのである。

 例えば1GHzで動作するSoCであれば、カウンターを1マイクロ秒づつ進めながら、その際に個々の回路やトランジスターがどう動くかを回路全体に対して計算するという恐ろしく手間のかかる作業である。

 すでに元の文献がないので記憶違いの可能性もあるが、大昔にインテルが「80386」を開発していたとき、IBMの「3090」というメインフレームを使ってシミュレーションを走らせ、電源投入からMS-DOSのプロンプトが出るまでの動作に実時間で3日かかったという話があった。

IBMの「3090」。IBMのウェブサイトより抜粋

 速度そのものは、その後のプロセッサーの進歩によってどんどん高速化していったが、その一方でLSIそのものの規模もどんどん大きくなっているため、結局のところ時間がかかることには変わりがない。

 先の例では、「80386」が27.5万個のトランジスターで構築されているが、昨今のSoCは28nmプロセスを使うものだと大体10億個近くになっており、回路規模は4000倍ほどになる。

 一方、性能比は「80386」が33MHz動作で11.4MIPS、対して最近のプロセッサーは、例えばインテルの「Core i7-3960X」が3.33GHz動作で17万7300MIPSなので1万5500倍ほどになる。

 つまり1985年当時に比べると3倍ほど効率が良くなっている可能性があるが、これは電源を入れてからDOSプロンプトが出るまで3日だったのが1日に減った程度で、まだ十分とは言えない。

 そこでEDAベンダーからはハードウェアアクセラレーターというものが提供されている。これは回路シミュレーションに特化した専用回路を搭載した巨大な箱で、EDAツールを動かすワークステーションに接続して使うものだ。

 これを利用すると、論理回路のシミュレーション速度が、ワークステーション単体で行なった場合に比べて数万倍から数十万倍になるとされる。

 下の写真はEDAベンダーの大手の1つであるCadenceの「Palladium」シリーズのアクセラレーターの外観であるが、以前AMDやインテルの後工程工場の中のテスト工程を見学した際に、これらがごろごろと転がっていた。

adenceのアクセラレーター「Palladium」シリーズ。ここに並んだ3種類の製品(左から初代Palladium、Palladium II、Palladium III)のいずれも高さが1mを超えるが、1.5mには届かないという程度だったと記憶している

 ちなみに価格は、設計ツールとの組み合わせなので単体価格は提示されないが、ローエンドのものですら数億円、メインに使うグレードのものだと数十億円である。もっともEDAツールそのものが上から下まで全部そろえると数十億円の世界なため、極端に高いとも言いがたい。

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

ASCII倶楽部

注目ニュース

  • 角川アスキー総合研究所

プレミアム実機レビュー

ピックアップ
1
Anker PowerLine III Flow USB-C & USB-C ケーブル Anker絡まないケーブル 240W 結束バンド付き USB PD対応 シリコン素材採用 iPhone 17 / 16 / 15 / Galaxy iPad Pro MacBook Pro/Air 各種対応 (1.8m ミッドナイトブラック)
Anker PowerLine III Flow USB-C & USB-C ケーブル Anker絡まないケーブル 240W 結束バンド付き USB PD対応 シリコン素材採用 iPhone 17 / 16 / 15 / Galaxy iPad Pro MacBook Pro/Air 各種対応 (1.8m ミッドナイトブラック)
¥1,390
2
KIOXIA(キオクシア) 旧東芝メモリ microSD 128GB UHS-I Class10 (最大読出速度100MB/s) Nintendo Switch動作確認済 国内サポート正規品 メーカー保証5年 KLMEA128G
KIOXIA(キオクシア) 旧東芝メモリ microSD 128GB UHS-I Class10 (最大読出速度100MB/s) Nintendo Switch動作確認済 国内サポート正規品 メーカー保証5年 KLMEA128G
¥2,281
3
Anker USB Type C ケーブル PowerLine USB-C & USB-A 3.0 ケーブル iPhone 17 / 16 / 15 /Xperia/Galaxy/LG/iPad Pro/MacBook その他 Android 等 USB-C機器対応 テレワーク リモート 在宅勤務 0.9m ホワイト
Anker USB Type C ケーブル PowerLine USB-C & USB-A 3.0 ケーブル iPhone 17 / 16 / 15 /Xperia/Galaxy/LG/iPad Pro/MacBook その他 Android 等 USB-C機器対応 テレワーク リモート 在宅勤務 0.9m ホワイト
¥660
4
KIOXIA(キオクシア)【日本製】USBフラッシュメモリ 32GB USB2.0 国内サポート正規品 KLU202A032GL
KIOXIA(キオクシア)【日本製】USBフラッシュメモリ 32GB USB2.0 国内サポート正規品 KLU202A032GL
¥1,080
5
【Amazon.co.jp限定】 ロジクール 静音 ワイヤレス トラックボール マウス M575SPd Bluetooth Logibolt 無線 windows mac iPad OS Chrome トラックボールマウス ブラック M575 M575SP 国内正規品 ※Amazon.co.jp限定 壁紙ダウンロード付き
【Amazon.co.jp限定】 ロジクール 静音 ワイヤレス トラックボール マウス M575SPd Bluetooth Logibolt 無線 windows mac iPad OS Chrome トラックボールマウス ブラック M575 M575SP 国内正規品 ※Amazon.co.jp限定 壁紙ダウンロード付き
¥5,680
6
エレコム 電源タップ 6個口 3m 雷ガード 個別スイッチ ほこりシャッター付 耐熱 PSE技術基準適合 ブラック T-K6A-2630BK
エレコム 電源タップ 6個口 3m 雷ガード 個別スイッチ ほこりシャッター付 耐熱 PSE技術基準適合 ブラック T-K6A-2630BK
¥1,590
7
Anker iPhone充電ケーブル PowerLine II ライトニングケーブル MFi認証 超高耐久 iPhone 14 / 14 Pro Max / 14 Plus / 13 / 13 Pro / 12 / 11 / X/XS/XR / 8 Plus 各種対応 (0.9m ホワイト)
Anker iPhone充電ケーブル PowerLine II ライトニングケーブル MFi認証 超高耐久 iPhone 14 / 14 Pro Max / 14 Plus / 13 / 13 Pro / 12 / 11 / X/XS/XR / 8 Plus 各種対応 (0.9m ホワイト)
¥990
8
KIOXIA(キオクシア)【日本製】SDカード 32GB SDHC UHS-I Class10 読出速度100MB/s 国内正規品 メーカー保証5年 KLNEA032G
KIOXIA(キオクシア)【日本製】SDカード 32GB SDHC UHS-I Class10 読出速度100MB/s 国内正規品 メーカー保証5年 KLNEA032G
¥1,061
9
NIMASO ガラスフィルム iPad 第11世代(A16) 2025用/iPad 10.9インチ 第10世代 2022用 衝撃吸収 強化 ガラス 保護フィルム 指紋防止 ガイド枠付き NTB22I574
NIMASO ガラスフィルム iPad 第11世代(A16) 2025用/iPad 10.9インチ 第10世代 2022用 衝撃吸収 強化 ガラス 保護フィルム 指紋防止 ガイド枠付き NTB22I574
¥1,359
10
【Amazon.co.jp限定】 ロジクール ワイヤレスマウス 無線 マウス M185CG 小型 電池寿命最大12ケ月 M185 グレー 国内正規品
【Amazon.co.jp限定】 ロジクール ワイヤレスマウス 無線 マウス M185CG 小型 電池寿命最大12ケ月 M185 グレー 国内正規品
¥999

Amazonのアソシエイトとして、ASCII.jpは適格販売により収入を得ています。

デジタル用語辞典

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン