Intelがサンフランシスコで開催中の開発者向けイベント、IDFの2日目。基調講演では初日(関連記事)に軽く触れた次期製品群を公開した。
基調講演に登場したのは、副社長兼モバイル&コミュニケーション事業本部長Hermann Eul氏、上席副社長件PCクライアント事業本部長Kirk Skaugen氏、副社長兼ソフトウェアサービス事業本部長のDouglas Fisher氏の3人。
Bay Trail搭載製品はすでに開発がスタートしている
高性能と低消費電力のバランスで優れる
ピンクのトレーナーでちょっと陽気な雰囲気で登場したEul(ユール)氏は、次世代AtomシリーズのCPUコア「Silvermont」を紹介した。22nmプロセスのトライゲートトランジスタで製造され、マルチコア化が柔軟に行えるSilvermontは、実際のSoCである「Bay Trail」などでは4コアでリリースされる。すでにシャープ、富士通、東芝などを含む9社が採用を決め、製品開発にかかっているという。
続いてモバイルSoCである「Bay Trail」を紹介。背景には、花火のグラフィックスなどもいれた派手な雰囲気なのだが、Eul氏のカラーなのだろうか。Bay TrailはタブレットやノートPCなどに利用可能なプロセッサで、用途に応じてBay Trail-T(タブレット用)、Bay Trail-M(ノートPC用)などのバリエーションがある。
Bay Trailの性能を示すために行うデモで用いられたのは、アバターを使い、洋服の試着が可能なシステムだ。通販サイトなどに採用されるPhiSix社が開発した技術で、実際に販売している洋服をアバターに試着させ、モデル歩きをさせることが可能という。
ここでIntelが主張したいのは、もちろんBay Trailの高性能。つまり、実際の人物に似せたアバターに、現実のデザインの洋服を着せて歩かせるためには、グラフィックス性能だけでなく、洋服の変形などの物理計算が必要。こうした処理を上位のプロセッサだけでなくAtomでもこなせるというところを見せたいのである。
さらにEul氏は、「もっとほしい?」と、さらに先の話を始める。Bay Trailは、スマートフォンを除くモバイルデバイスや組み込み用途をカバーするのだが、それ以外にもスマートフォン用「Merrifield」やIntelが開発中のLTEモデムなども存在する。また、来年にはSilvermontの14nm版となる「Airmont」も登場予定だという。
次世代デバイスの成功に
まずWindows 8.1の成功が必要
続いて登場したのは、Kirk Skaugen(カーク・スカウゲン)氏。まずは、2013年版Ultrabookのうち2in1デバイス、いわゆるキーボードを持ち、ノートPCとタブレットの両スタイルで利用できる製品についてそのメリットを述べ、第四世代Coreプロセッサを採用する新デバイスを紹介した。
次にMicrosoftの副社長であるTami Reller氏をステージに招き、登場間近のWindows 8.1について語らせた。Windows 8.1は、Ultrabookの重要な要素の1つと言える。特に2in1はWindows 8.1の成功に大きく依存する。タッチパネルを装備し、タブレットになる2in1 Ultrabookは、Windows 8.1なしにはありえない。
14nm化された次世代Coreシリーズの「Broadwell」
最高性能の発熱量が抑えられている
次にSkaugen氏が紹介したのは、次世代CoreプロセッサとなるBroadwell。第4世代CoreプロセッサとなるHaswellの14nm版だ。このBraodwell世代では、Ultrabookでもファンレスが可能になる。一般にプロセスが微細化することで、消費電力が下がる。前世代と同等の性能(クロック周波数)を維持しても、消費電力は小さくなり、このために発熱量も低くなる。
22nmで製造されたHaswellでも、回路設計により平均的な消費電力は小さくなったが、バッテリ駆動時間を延ばすことはできても、発熱量を下げることはできなかった。発熱量に関していえば、プロセッサの最大クロックで動作させたときに出る発熱量でファンが必要かどうか決まる。Haswellを高いクロック周波数で駆動すれば、2世代前のIvy Bridge(22nm製造)と同程度の消費電力となるため、最高性能時の発熱量は小さくならなかったのだ。
Skaugen氏は、Haswell(第四世代Coreプロセッサ)とBroadwellの消費電力を比較するデモを行った。おなじプログラムを動作させて、消費電力をグラフで表示するものだ。これによれば、Broadwellは、Haswellの70%ぐらいの消費電力であることが示された。
さらに画像とともに被写体までの距離を計測可能な3Dカメラ(奥行き情報を取得可能なカメラ)について説明を始める。今年6月のComputexでデモを行ったものだ。
コンピューターがカメラなどを使い、写っている顔や手などを識別して動きを追跡しジェスチャーなどを認識して動作することを「Perceptual Computing」という。ただし、通常のカメラでは、たとえば、背景に手とおなじような色があると、区別ができなくなってしまう。しかし、3Dカメラを使うと、画像としては区別できなくても、距離情報から手前にある手と奥にある背景を区別可能になる。
Intelは、Ultabookに組み込み可能な3Dカメラモジュールを開発、Perceptual機能を持ったUltrabookを2014年後半に出荷可能とすることを発表した。現時点では、ASUS、DELL、HP、Lenovoが対応予定だという。
Intel製CPUでも作られるChromebook
最後に再度Fisher氏が登場、Intel製CPUとWindowsやAndroid、Chrome OSとの関係を語った。そして、Haswellを搭載したChromebookやChromebox(据え置き型のChromeOS搭載機器)を発表した。Chromebookを開発したのはHP、Acer、東芝の3社で、ASUSはChromeboxを開発した。
Chrome OSは、ウェブブラウザをベースにウェブアプリを利用するシステムであるため、CPUのアーキテクチャとアプリケーションは無関係になる。すでにARM系のCPUやCeleron、第三世代のCore i5を使ったChromebookはあるが、最新の第4世代Coreプロセッサを使ったChromebookはこれが最初である。