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【IDF開幕】Intel新トップがAtomより低電力の「Quark」を公開

2013年09月11日 22時30分更新

文● 塩田紳二

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Atomよりさらに低消費電力なQuark X1000チップを公開。利用する企業が必要な回路と組み合わせて専用のSoCを作ることができる

 IDFの基本的なスケジュールは、朝に基調講演があり、そのあとでセッションが並行して行われ、展示会場などがオープンする。初日の最初の基調公演は、通常インテルのCEOが行ない、同社の今後の方向性や新製品の概要などを紹介する。2日目以降の基調講演は、事業部長などがそれぞれの担当分野の製品などを紹介する。

今年5月に就任した新CEOと社長が基調講演に登壇

 さて、そのIDF初日の基調講演で登場したのは、今年5月に就任した新CEOであるBrian M. Krzanich氏と、同じく社長となったRenee J. James氏である。今年5月以降、インテルの役員は大きく変わった。プレスブリーフィングに登場する役員の顔ぶれもまったく入れ替わり、まったく新しい会社に生まれ変わったようだ。

IDF初日の基調講演に登場したBrian M. Krzanich氏

 インテルの方向は、CPUからSoCに切り替わった。SoCには広い意味があるのだが、「特定種類の製品を作るための回路とCPUを集積したもの」だとすれば、GPUやチップセットを統合したCore iシリーズもSoCといえるが、実際のSoCはもう少し周辺回路を統合していることが多い。

 スマートフォンやタブレット用なら、無線LANやBluetooth、場合によって3Gモデムまでを統合している。Atom系などには、こうした傾向があり、ときどきSoCという表現をしていたが、PC用のプロセッサについては、あまりSoCといった表現をしてこなかった。しかし、いまやインテルのライバルはAMDよりもARMだ。スマートフォンやタブレット分野に進出するには、ARMとの戦いを制す必要がある。

Krzanich氏は、コンピューティングの現状をパーソナル化がすすみ、さまざまなデバイスが接続されていくと分析する

 インテルの戦略はすべての分野に強力な製品を投入することだ。その分野とは、サーバーからPC、スマートフォン、タブレット、そして、IOT(Internet Of Things)やウェアラブルと呼ばれる小さくバッテリで動作する機器までを含む。

そこに対してのインテルの戦略は、強力な製品を各セグメントに投入することだという。サーバーに関しては「加速」、PCには「革新性」、そしてタブレットやスマートフォンなどの個人的な機器に対しては競合他社の製品に匹敵し、さらにリードできる製品だという

 まずはサーバー。IDFと同時に発表されたXeon E5 v2は、Iby Bridgeベースで22nmプロセスでの製造となる。プロセスが一段シュリンクしたことで、最大コア数を12に増やした。また、LLC(Last Level CacheでL3に相当)を最大30MBとSandy Bridge世代よりも10MB増やしている。

 初代のXeon E5では、8コアのダイのみを製造していて、出荷時にコア数を制限していたため、LLCは20MB固定だったのだが、v2では、6/10/12コアを別のダイとしたため、LLCは15/20/30MBとコア数に応じたものになった。また、12コアでは、内部のリングバスを3重として、バスの負荷分散を図った。だが、SoCと呼べるレベルの製品はどちらかというとAtomを使ったC2000(Avoton/Rangeley)だろう。ギガビットイーサーネットや暗号化モジュール(Rangeleyのみ)なども内蔵する。

PC用の次世代プロセッサ「Broadwell」を公開
タブレットではCore iとAtomの両方を投入

 PC分野はBroadwellが次世代プロセッサとして用意される。基調講演では、Broadwellを使ったプロトタイプのノートPCを見せたが、ベンチマークなどのデモは行われなかった。Krzanich氏によれば、Broadwellを製造する12nmの製造プロセスの開発は順調で、年末から生産に入り、OEM企業にBroadwellを出荷できるとした。ただし、Broadwellを搭載した実際の製品の登場は2014年になる。

Broadwellを世界最初の14nmで製造されるSoCとして紹介
Broadwell搭載のプロトタイプを見せた。動作していることはわかるのだが、Broadwellがほんとうに動いているのかどうかを示すデモやベンチマークなどは見られなかった

 また、インテルは、タブレット市場を1つのセグメントとして確立したようだ。Windows 8の登場で、Core iシリーズでもタブレットや、2 in 1(キーボードを持ち、ノートPC形状とタブレット形状の両方で使えるPC)が実用段階に入ったからだ。これまでは、Atom系がスマートフォンやタブレット、Core iシリーズがノートPCという分け方だったが、スマートフォン、タブレット、ノートPCをそれぞれ別々の分野として扱うようだ。

タブレットに関しては、AtomとCore iシリーズの両方を対応させ、OSにはWindowsもAndroidも対応するとした

 ただし、タブレットをカバーするのは、Atom系列だけでなく、Core iシリーズも含まれる。たとえば、MicrosoftのSurface Proには、Core i5が採用されている。今回ハッキリしたのは、Core iシリーズによるのAndroidの展開だ。これまで、Androidは、どちらかというとAtomでカバーという感じだったのに対し、今回のプレゼンテーションでは、タブレットにCore iとAtom、そしてWindowsとAndroidという組み合わせがあったのだ。

 Bay Trailとなる次世代Atomについては11日の基調講演の話題となっているため、あっさりとした紹介だったが、スマートフォン向けのMerrifieldを紹介。Merrifieldを搭載したスマートフォンのプロトタイプを見せた。さらに、インテルは開発中のLTE-Advancedに対応したモデムのデモを行う。LTE-Advancedは、複数のキャリア(搬送波)を使い、通信帯域を拡大する技術。高速な通信を可能にする。デモでは、3つのキャリアを使い、通信帯域が2倍程度に拡大することを見せた。

スマートフォン向けの次世代AtomであるMerrifieldを使ったプロトタイプスマートフォンを公開。こちらもデモはなし
Merrifieldは世界最初のスマートフォンに搭載される22nm SoCだという。というのもARM系プロセッサを製造するファウンダリーの20nmへの移行が遅れているため。インテルはモバイルネットワーク用のモデムデバイスのビジネスも行っており、LTEへの対応を急ぐ
開発中のLTE-Advancedのデモ。搬送波を複数(左側のスペクトラムアナライザで飛び出しているところが搬送波の周波数)使うことで、転送速度が向上したことを示す(右側が転送速度のグラフ)

ウェラブルコンピューターなどの新ジャンルに
Atomよりさらに低消費電力のSoCを投入する

 さらにインテルは、新規のプロセッサブランドとしてQuarkファミリを立ち上げる。これは、IOT(Internet Of Things)やウェアラブルコンピュータを想定した製品だ。小型でバッテリ駆動、しかし、ネットワーク接続(TCP/IP)が可能な程度には性能が必要な分野だ。Quarkとは、いわゆる素粒子のQuarkで、原子を構成する陽子、中性子などを作るもの。つまり、Atomより小さいということになる。詳細なスペックは公開されなかったが、チップサイズでAtomの1/5、消費電力で1/10という概要が示された。

インテルが新たにターゲットにしたのは、組み込み系の中でも、インターネットに接続し、サービスと一体になって動くデバイスやウェアラブルコンピュータ。超小型の機器で、低消費電力が低く、ネットワーク接続が必要となる分野だ
新たに投入するのはQuarkファミリ。第一弾はQuark X1000

 ただ、講演全体を見ると、Broadwellの出荷時期について2013年末に搭載製品が登場するかのように聞こえ、少し危なっかしいところもあった。あとで、インテルの広報から正確な意味を伝えるメールが送られてきたが、新CEOはなんとか最初のIDFの基調講演を終えた。ただ、スピーチの時間は30分程度と短く、後半をRenee James氏にまかせ、最後にQ&Aの時間を長めに取るなど、初舞台であることをうかがわせる構成の基調講演ではあった。

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