ケーブルを接続することなくワイヤレスで充電する――以前から各社が開発を進めてきた非接触充電(ワイヤレス給電)について、SamsungとQualcommが標準団体「Alliance for Wireless Power(A4WP)」を立ち上げた。モバイル界と無線チップ技術のトップ企業が組むことで、標準化が進むと期待される。
SamsungとQualcommは5月7日、アメリカ・ニューオーリンズで開催中の「CITA Wireless 2012」でA4WP設立を発表した。電磁誘導を利用したもので、Qualcommの「WiPower」がベースとなる模様だ。
WiPowerは近接場磁気共鳴技術で、4.5cm程度離れても充電が可能というものだ。A4WPの非接触充電技術のメリットについては、
●容易に実装できる送電側と端末側のアンテナ設計
●シンプルな電力制御システム
●金属以外の表面を経由した送電が可能
の3つを挙げている。対象としては、Bluetoothヘッドセットから高度なタブレットまで、幅広い消費者家電端末を想定しているという。今後非接触充電技術の標準化に加え、製品検証、規制遵守などに取り組み、業界の受け入れを促進する。
非接触充電についてはすでに、「Wireless Power Consortium」(WPC)が2009年に立ち上がっており、「Qi」規格の策定や推進を進めている。ドコモの端末など対応製品ではすでに先行している。
WPCにはSamsungも含む100社以上が参加しており、電磁誘導を利用するという点ではQiとWiPowerは同じだが、金属以外の表面が利用できる点、送電までのプロセスなど細かな点で違いがありそうだ。
A4WPは現時点でSamsungとQualcommの他に5社(SK Telecom、Powermat Technologies、Gill Industries、Ever Win Industries、Peiker Acustic)で、幅広く参加企業を募るとしている。SamsungとQualcommという影響力の大きな2社が促進することで、どのぐらい商用化が進むのかが注目される。なお、Samsungは次期フラッグシップの「GALAXY S III」で非接触充電キットを紹介している。