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人力OCR、イラレでゴナD! ここが“胸熱”電子出版EXPO

2011年07月08日 23時00分更新

文● 盛田諒/ASCII.jp編集部

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モリサワの電子雑誌ソリューション「MCMagazine」も登場

 つづいてフォントメーカー。まずは写研が衝撃だった。今まで頑なに単体のフォントとして提供せず、出版関係者がまだかまだかと待っていた「写研書体」が、ついにフォント化を検討していると発表。どの書体を電子書籍で読みたいか、来場者へのアンケートを行なっていた。ブース裏ではiPadの「青空文庫」で石井明朝、Illustrator上でゴナDを使うデモを実施し、どよめきが起きていた。マニアックで恐縮だが、専用組版システムにこだわってきた同社がこういう形の展示をしたこと自体が、業界的には本当に衝撃なのである。

 次にモリサワ。オリジナルの電子書籍ビューアー「MCReader」につづき、電子雑誌ソリューション「MCMagazine」を参考展示していた。DTPデータから10分間ほどで電子雑誌に変換できるという気軽さが売り。記事本文をタッチするとDTPソフトのように拡大でき、Webで検索したり辞書を引いたりできる。表示はリフロー形式で読みやすい。

「写研の書体がついにフォントに!」とTwitterでも業界関係者がどよめいていた。発売時期などは未定

モリサワの電子雑誌ソリューション「MCMagazine」。本文を選択するとリフロー形式のボックスを表示する。画像をタッチするとそのまま購入用のWebページに飛べるようになっていた


EPUB 3.0への期待高まるAdobeのデモ

 DTPソフトメーカーは「InDesign」シリーズのAdobe Systemsから。ブースでは「InDesign CS 5.5」でEPUB 3.0の書き出しをするデモを行なわれていた。Webブラウザー上で表示した縦書きの文章には、しっかりルビが振られ、圏点が振られ、縦中横の数字も表示されている。これが本当に美しい。デモではWebKitを使い、Chromium上で動かしていた。年内にはこれがiOSやAndroid上で動くことになる。本当に待ち遠しい。

 そしてもう1社がQuarkだ。QuarkXPressが売りにしていたのが、iPad向けの電子書籍アプリを制作し、頒布する際のロイヤリティだ。通常は2~30%、またダウンロードごとに25円などのロイヤリティをとられることがあるが、Quarkではそれが一切かからない。かつては90%以上の市場シェアを持っていたQuarkだが、InDesign登場以来はやや影が薄い。電子書籍を鍵にどう展開するかが気になるところ。

AdobeのEPUB 3.0デモ。WebKitを使い、Webブラウザー上で縦書きの日本語にルビが振られた状態が表示される


知られざる中国・台湾の電子書籍事情

 最後はアジア系のブース。まずおもしろかったのが中国の方正株式会社。創業は1985年、北京大学が100%出資の産学系企業だ。従業員は現在3万人以上。中国で出版されている約80万タイトルの電子書籍をほぼ独占的に制作しており、現在は毎年10万タイトル規模で出版を予定している。まさに国家規模の電子出版集団なのだ。

 その方正が制作しているのが「CEBX」という独自のフォーマット。リフロー式(拡大すると文字組みが変わる)とレイアウト式(拡大しても文字組みが変わらない)をボタン1つで切り替えられるのが特徴。PDFの50~90%まで圧縮可能という軽量さも目を引いた。「EPUBとPDFの特徴を合わせ持つ」というこの形式を使い、日本語向けの「JEBX」も開発中という。何かと注目を集める中国が、電子書籍でどう日本に影響を与えるか注目だ。

 そして最後が、台湾図書出版事業協会で聞いた話。スマートフォンの人気が高い台湾では電子書籍の浸透が早い。電子書籍ストア「BOOK 11.com」はいま普通の書店並みに人気という。また台湾の電子書籍には、一般のWebユーザーが書いた無料のコンテンツを出版社が買って有料化する、CGMベースの流れが定着しつつある。「アマorプロ」から「無料or有料」へという出版のしくみが、早くも現実味を帯びているのだ。

CEBXのデモは中国語だったが、日本語にも対応しているという。リフローとレイアウトをボタン1つで切り換えられ、圧縮率も高いのが特徴

 というわけで今回は周辺分野が熱かった。周辺という意味でいえば、電子出版のコンテンツを動かしている、注目の電子書籍系Webサービス「パブー」「BCCKS」など、出展のない企業もある。現在は電子書籍リーダーそしてストアという“ハコ”が整った状況だ。今後、出版社そしてWebから新たなコンテンツが続々と出てくるのを楽しみに待ちたい。



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