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クラウドコンピューティングEXPO展示会場レポート

センターの座をゲットした「クラウド」の現状を一望

2010年11月11日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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11月10~12日、千葉県幕張の幕張メッセにおいてリードエグジビジョン主催の「クラウドコンピューティングEXPO[クラウドジャパン 秋]」が開催された。5月に開催された同イベントが好評だったことを受けて開催されたもので、各種のセミナーや展示が行なわれた。ここでは展示会場の模様をいち早くレポートする。

クラウドの盛り上がりを実イベントにコンパイル

 2010年がクラウドコンピューティング飛躍の年であることは疑いないであろう。いまだにバズワードとして扱われることが多いクラウドという用語に関しても、ASP・SaaSやオンデマンドコンピューティングなど数々のキーワードを飲み込んだITアウトソーシングサービスの総称として、業界的には一定の市民権を得た状況と考えてよい。

 今回開催されたクラウドコンピューティングEXPOは、こうした業界の流れを見越した専門イベントということで、大きな注目を集めており、出展も171社に上っているという。ここでは、展示会場への出展のうち、クラウドサービスを提供する各社のブースを紹介していく。

先行者利益を持つニフティクラウド

 国内でいち早くIaaSを展開したニフティの「ニフティクラウド」は、年末までの目標としていた500ユーザーをすでに達成し、利益目標も上方修正したという好調ぶり。従量課金をベースにしたインフラ貸しとISPとしてのノウハウ提供がオンラインゲームやSNS事業者にアピールしたようだ。実際、事例のパネルがブースで数多く紹介されており、ユーザーの生の声を聞くことができる。

ニフティのブースではユーザー事例やパートナー出展が充実している

スキャンしたデータをクラウドに送るNIFTY Cloudサーバーを参考出品

 このイベントにあわせたかのように10・11月で新サービスを拡充したが、特に大きいのがAPIの公開。API経由でニフティクラウドを扱えるということで、パートナーとの協業施策を積極的に進め、おもにクラウド管理をサードパーティが容易に行なえる仕組みが展示されていた。今後の課題は、オンラインゲームやSNS事業者とは異なる一般企業ユーザーの開拓。そのため、12月にはSLAを発表し、信頼性をアピールしていくという。

さくらインターネットもクラウド進出へ

 データセンター事業者であり、ホスティング事業者でもあるさくらインターネットも大きめのブースを出していた。さくらインターネットといえば、物理サーバー重視の姿勢を転換して提供を開始した「さくらのVPS」のほか、全面外気冷却を採用した北海道石狩のデータセンターの発表など、今年は話題に事欠かない。ブースでは、こうした新しい施策をアピールする展示などが行なわれていた。そして、年内には満を持して低価格でシンプルなIaaS「さくらのクラウド」を提供するという。

現在建築中の石狩データセンターの模型を展示。全面的な外気冷却採用ということで、注目が集まる

VPSといえばサーバー、サーバーといえば鯖(?)ということで、こんなノベルティも配布中

国内データセンターに移したGMO-HS

 GMOホスティング&セキュリティは、2月に開始したアイルブランドの「True CLOUD」をアピール。True CLOUDは柔軟性が優れたIaaSで、1時間ごとにリソース変更が可能。料金も基本料金3675円/月に1時間単位のリソース(メモリ・CPU)使用量を支払うという体系で、本場米国のAmazon EC2に近い。また、アカマイのCDNにより、高速なWebアクセスが可能なのも大きなメリットだ。従来、海外のデータセンターを使っていたが、このほど国内のデータセンターにインフラを移管して、仕切り直しを図ったという。

GMOホスティング&セキュリティは、True CLOUDや各種サーバーレンタルなどを連携させるOpen Cloudをアピールした

 その他、クラウドサービスのほか、SaaSやモバイルデバイス、サーバー、通信サービス、セキュリティなど展示は多岐におよんでいる。各社の展示は写真でレポートする。

NTTデータはプライベートクラウド用の「Lindacloud」を展示。当初はHadoop用のサーバーだけだったが、NASやオンラインストレージ、シンクライアントなども用意されている

「S@@Ses(サースィズ)」を展開する日本ラッドは、10月27日にスタートさせた「完全外気冷却方式の排熱型データセンター」について展示。外気冷却方式のイメージモックが展示されていた

都心型データセンター事業者であるビットアイルは新クラウド基盤「サーバオンデマンドNEXT」をアピール

ソフトバンクブースは「ホワイトクラウド」を全面展開。iPadを首から提げた説明員が詳細を説明してくれる

ハードウェアの少ない展示会場で、富士通はPRIMEGY、PRIMEQUEST、SPARC Enterpriseまで一挙に展示しており、かなり目立っていた

富士通ブースでは業種特化分野から共通分野まで幅広くSaaSの説明ブースが設けられており、裾野の広さを感じさせる

数少ないハードウェアベンダーとしてデルが出展。クラウド事業者向けのPowerEdge CシリーズやEqualLogicのようなストレージを展示していた

NTTPCコミュニケーションズのブースでは、VPNソフトウェア「IP-WARP」を搭載した「ネットレジ」を展示。インターネットVPNを介して売り上げ管理を行なうクラウドに接続する

 ちなみにリードエグジビジョンのイベントというと、数々のテーマ別のイベントを東京ビックサイトで同時併催するというイメージが強く、実際今年の春のクラウドコンピューティングEXPOもソフトウェア開発展や組み込みシステム開発技術展、情報セキュリティEXPOなど10のイベントのうちの1つだった。イベントとして独立した今回は幕張メッセに会場を移した結果、春の時には「圧縮陳列気味」だった展示スペースもかなり余裕があり(とはいえ、普段用いられる1~8ホールではなく、9~11ホールだが)、展示もかなり見やすかった。

 初日の基調講演にはマイクロソフト代表執行役 社長の樋口泰行氏、セールスフォース・ドットコム代表取締役社長 兼米国セールスフォース・ドットコム 上席副社長 宇陀栄次氏が登壇したが、11・12日にもオラクル、日本IBM、NTTコミュニケーションズ、ソフトバンクテレコムなどのエグゼクティブが連日特別講演を行なう。トータルで5万人の来場者を見込んでいるという。

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