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2010TOKON10 日本SF大会レポート

金魚の街でストパンの軍事考証をまじめに議論した2日間!

2010年08月11日 21時00分更新

文● 行正和義

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2010TOKON10
2010TOKON10のメイン会場となる1Fホールはディーラーズルームおよび展示企画のコーナー

 8月7~8日、タワーホール船堀にて日本SF大会「2010TOKON10」が開催された。TOKON、つまり東京で実施するSF大会としては10回目にあたるのだが、日本SF大会としては第49回となる、もはや老舗のイベントである。


そもそもSF大会ってなんぞや?

 日本SF大会というのは、例えば“コミケ”のような同人誌即売が中心のイベントとは違い(“ディーラーズルーム”と呼ばれる同人誌即売会場もあって、多くのサークルが出店している場所もあるが)、企画ものの展示がメインとなっている。各種グループの発表やSF作家のトークといった、趣向を凝らした企画に参加することこそが大きな楽しみなのだ。十数件の企画が同時併行で開催されるため、すべてを見て回るのはもちろん無理なのだが、駆け足で回って見た中から注目すべき企画と、会場全体の雰囲気を紹介していこう。

タワーホール船堀今回の会場は船堀駅前にあるタワーホール船堀。比較的新しい施設のうえ、映画館、結婚式場も備えており、実際SF大会中に結婚式が行なわれていた。なんてタイミングが悪い……と少し同情してしまったのも確かだ
宇宙の戦士のパワードスーツ 鳥居周平氏制作の1/1スケールの3D(鉄製)モデル
会場に入るとすぐにお出迎えしてくれるのが、今回の星雲賞アート部門を受賞した加藤直之氏が描く「宇宙の戦士のパワードスーツ」(ライブでペインティング中)そして鳥居周平氏制作の1/1スケールの3D(鉄製)モデル。――個人的に、モノアイはどうかと思うのだが……
「電脳金魚」の企画
“金魚の街”として知られる船堀での開催に合わせて、さまざまなアーティストから寄せられた「電脳金魚」の企画。いずれも名の知れた漫画家・イラストレーターの作品が並ぶ
宇宙塵 ローダン研究会などの老舗サークル
ディーラーズルームはいわゆる同人誌即売会。名の知れた作品から、かなりの“ド”マイナーな分野の研究読本まで、しっかりやっているサークルもあって(元SFモノとして)ちょっとうれしい日本のSF同人誌としては最も古くからある「宇宙塵」もディーラーとして参加。このほか“ロー研”ことローダン研究会などの老舗サークルが並んでいて、古参SFファンとしてはあまりに変わらぬその姿にちょい涙が……

会場の様子をピックアップして紹介!

セミナー「幹細胞医学が見る夢」

 大ホールで実施された本大会最大とも言える企画は、慶應義塾大学による「幹細胞医学が見る夢」と題した市民公開講座だ。これは慶應大学から招いた教授・講師の方々と作家・瀬名秀明氏、哲学者・東 浩紀氏が、生命医学の最前線を紹介するとともに、その意味をSFに繋げるというアカデミックな構成だ。

市民講座「幹細胞医学が見る夢」
大ホールで実施された慶應義塾大学グローバルCOEプログラム市民講座「幹細胞医学が見る夢」。市民講座とSF大会とのジョイント企画としてアカデミックなセミナーとして面白い

トークイベント「佐藤嗣麻子の映画&トークショー」

 佐藤嗣麻子氏、山崎 貴氏らがさまざまな映画(いわゆるSF映画には限らない)をネタにしたトークショーなのだが、やはり今年の年末に公開を控えた「ヤマト」(実写版)への言及も見物だった。

佐藤嗣麻子の映画&トークショー
山崎 貴氏の自主制作フィルムなども紹介されたトークショー。2人を相手にするのは寺田克也氏と夢枕 獏氏

トークイベント「初めてのツイノベ」

 Twitterベースで小説を書いている人たちを呼んでのトークショー。140文字以内でどれだけの表現か可能かという技術的な観点よりも、いままで小説を読まなかった読者が読むだけでなく自分で書きはじめているという、書き手/読み手ともに新しい層が形成されているという分析が、なかなか興味深い。

初めてのツイノベ
Webや電子書籍、ケータイ小説など出版形態が移り変わりゆくなかで、Twitterでの小説というのは新しいジャンルに違いない。出演は内藤みか氏、新城カズマ氏、円城 塔氏、哉桜ゆえ氏

トークイベント「ヒコーキが先かストーリーが先か」

 ここではアニメ「ストラトス・フォー」に関わった人達を中心に、飛行機アニメの描写を熱くトーク。もちろん「ストーリーが先か」の問いなど問題外なくらい、ひたすら飛行機を描きたくてアニメを作っているという人たちなのだが……。企画書一発目が「こうです」と描かれたのが、パンツを見せながらうつ伏せ馬乗りの女の子(同作品のTSR4は伏臥式コクピットなのだ)。

 ちなみに別の部屋では「ストライクウィッチーズの世界設定」企画もやっていて、“パンツアニメ”に見えて(いや実際にはパンツではないのだが……)、実はいかに緻密に軍事考証がなされているかという濃い話が語られていた。

パンツ絵を描きはじめる山内則康氏
飛行機をアニメに出すことが楽しくてしかたないのだけれど、それがストーリー上にどう必要性が……と言ってる最中に、パンツ絵を描きはじめる山内則康氏

トークイベント「スーツアクター/スーツアクトレス中の人座談会」

 ゴジラなどの怪獣系から戦隊ヒーローまで、「スーツの中の人」を招いてのトークショー。火薬を使ったシーンにおける“やばかった話”など、普段あまり顔出しでしゃべらない人たちだけに「ああ、あれの中ってこんな人だったのか」という新鮮な驚きと感動があった。

 このほかにも特撮系企画「TVファンタスティック」では、池田憲章氏がおなじみの解説スタイルで熱く古いSFドラマを紹介していた。

特撮ヒーローの“中の人”が語る撮影の現場
最近の特撮ヒーローの“中の人”が語る撮影の現場。ちなみに司会は破李拳竜氏だ!

 もちろんアニメ・特撮関係も多いものの、活字SFをじっくりと語っていこうという企画もあり、各ジャンルの作家陣の座談会や日本SFの歴史を見直そうといった堅めの内容もある。特に、今年1月に他界した柴野拓美氏を偲ぶ企画では、国内SFの黎明期からの故人の役割をSFの大御所たちが振り返るトークとなった。

 さらに今回、星雲賞受賞となった「グイン・サーガ」(シリーズものは本来、完結をもって賞の対象となるのだが、作者逝去により未完のままでの受賞となった)を振り返り、100巻を超えるこのシリーズが、30年という長期に渡ってSF界に与えた影響がいかに大きかったが再認識させられた。

故・柴野拓美氏を偲ぶ会
故・柴野拓美氏を偲ぶ会では日本SF界の大御所たちのトークが聞かれた

 このほか、宇宙関連の企画などもかなりの盛況を見せていたのだが、セミナーやトーク中心の企画に加えて展示タイプの各種企画がSF大会という“お祭り”を盛り上げた。「カフェ・サイファティーク」は、メイド喫茶ならぬ“ハカセ喫茶”。現役理系のメガネ君たちが白衣で接客し、高度な知的会話を楽しめるというもの。しかも、特別ゲストとして瀬名氏も白衣で登場するなどサービス満点だ。

SF大会の理系メガネ君執事さんもいる
SF大会の理系メガネ君として、この人以上の適役がいようか!? と思えるくらいぴったりの瀬名氏。周囲のメイドさんたちは接客ではなく受付係だ接客の基本は白衣の現役理系メガネ君たちだが、もちろん執事さんもいるぞ
「志村式折り紙キングギドラ普及教室」 志村式折り紙キングギドラ
SF大会の企画にはかなりユニークなものもある。こちらは「志村式折り紙キングギドラ普及教室」。折り方は公開されているので、ぜひマスターしよう
アニメや特撮に流用されたライブラリ音楽をみんなでのんびりと聴こ~ぜ「アニメや特撮に流用されたライブラリ音楽をみんなでのんびりと聴こ~ぜ」企画は、正直タイトルそのまんまの内容なのが、出所不明な音楽の元ネタを見つけてくる企画立案者(音楽ライター諸氏)には脱帽させられる

 ――ともあれ、アニメや特撮関連の企画で盛り上がりたい方でも、活字SFの現状と未来をまじめに考えたい方でも、SFというジャンルで括られるモノを楽しむことができるならば、この年に一回の祭りを必ずや楽しめるはずだ。

手作りプラネタリウムと3映像ディーラーズルームの一角を占める謎の半球は、ヒゲキタ氏制作の「手作りプラネタリウムと3D映像」。暗黒星雲賞2連覇は伊達ではない高クオリティの全天立体映像だ
時刊新聞
SF大会で慣例となっている「時刊新聞」も健在だ。どんなイベントがどこそこで行なわれていて盛り上がっているぞ! という内容の新聞(といってもA41枚の手書きコピーなのだが)を毎時刊行して配布するという、超リアルタイム刊行物だ

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