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ハイブリッドクラウドとジンブラの買収。ほかは?

VMware CEOが語ったこと、語らなかったこと

2010年03月03日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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3月2日、米ヴイエムウェアのCEOであるポール・マリッツ氏が来日会見を行なった。仮想化市場をリードする同社のCEOの来日だけに、多くのプレスが詰めかけた。

データセンターはVMwareに依存している?

米ヴイエムウェアCEO ポール・マリッツ氏

 ポール・マリッツ氏は、仮想化業界をリードしてきた同社の現状を説明した。サーバーの仮想化からスタートした同社だが、近年はVMware vSphereによりデータセンターの仮想化に着手。現在はプライベート、パブリックともに、クラウドコンピューティングのインフラを提供するベンダーとして業界に大きな影響力を持つ。マリッツ氏は「データセンターの自動化を進める事業者は、VMwareに大きく依存しつつある」と語っており、実際100社以上のサービスプロバイダがVMwareを使ってvCloudのサービスを提供しているという。

 また、プライベートクラウドに関しても、多くの企業での「IT as a Service」環境構築にVMwareが寄与している。単なる仮想化と異なり、プライベートクラウドはポリシーベースの自動化やユーザーのカタログ、サービスの課金やレポートなどのインフラ管理機能が整ったものを指すと同氏は表現した。

 そして、マリッツ氏がもっとも強調したのが、プライベートクラウドとパブリッククラウドが共存していくということだ。「われわれにとって重要なのは、コンピューティングがどこで行なわれるかではなく、どのように行なわれるかということ。つまり、効率化を推進し、自動化を高めていくということだ。これを実現するのであれば、リソースが内部だろうが、外部だろうが、関係ない」とのことで、ほとんどの企業はプライベートとパブリックの両方のリソースを併用するという見通しを持っている。そして、同社はプライベートクラウドとパブリッククラウドをシームレスに統合した「ハイブリッドクラウド」として扱えるように、この数年で両者をつないでいく技術や製品に注力するという。

仮想化環境とプライベートクラウドの違い

プライベートクラウドとパブリッククラウドをつなぐハイブリッドクラウド

 その他、VMware Viewをベースにしたデスクトップ仮想化や買収した米スプリングソースをベースにした開発環境のほか、1月に発表された米ジンブラの買収についても言及。電子メール・コラボレーションソフトウェアをSaaS型で提供するジンブラ買収の背景を、「クラウドをイネーブルにするため、もっとも汎用的なメールの環境を提供するようにした」と説明した。

 最後にマリッツ氏は、メインフレーム時代のIBM、オープンシステムのマイクロソフト、Webのアマゾン、グーグルといった代表的なプレイヤーを引き合いに出し、「クラウドの世界で新しいリーダーが生まれてくる可能性がある。その代表がヴイエムウェア」と同社のポジションをこうアピールし、講演を締めた。

 今回の会見は、仮想化のリーダーからハイブリッドクラウドやジンブラ買収についてコメントされたという面で貴重な機会ではあった。しかし、その他の多くは昨年来のイベントや発表会で披露されてきた内容で、やや真新しさ感に欠けた。ジンブラに関しても、あくまでクラウドへの移行を推進させる要素の1つとして、たまたま同社が抱えているといったイメージ。SaaS市場への参入を示唆したものではないようだ。多くのプレスが期待していた新製品やサービスの発表は、次の機会を待つ必要がある。

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