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平面駆動型の魅力、AR-H1は見晴らしいい良音質 (1/2)
2017年09月24日 17時30分更新
春のヘッドフォン祭で国内公開され、7月に正式発表となったAcoustic Researchの「AR-H1」が9月29日にいよいよ発売となる。高級ヘッドフォンの代名詞とも言える“平面駆動型ユニット”を使用し、価格は8万円台。気軽に手を出せるほどではないが、内容を考えるとかなりがんばった価格設定になっている機種だ。
その発売に先立ち、数週間じっくりと聴き込んでみた。
本当にほれぼれする音だ。解像感が緻密で、音離れがいい平面駆動型の特徴に、セミオープン型の開放感が加わる。音の立ち上がりが速く、ボーカルや楽器の見通しにも優れる。一方でダイナミック型に負けない低域の力感があったり、10Hz~60kHzと非常に広い周波数帯域をカバーしたりと、万能に使える機種である。
特にボーカルの再現力が素晴らしくクリアだ。ひとりひとりの声質や子音、ブレスといったニュアンスを明確に描き分ける。ここはこもりの少ないセミオープン型であるという点も利点になっていると思う。
平面駆動型の魅力が存分に味わえる
この記事では、そんな特徴を持つAR-H1に迫っていこう。
まずは最大の特徴である平面駆動型ユニットについてだ。本機はその中でも平面磁界型というタイプで、ボイスコイルを使う一般的なユニットとは、異なる仕組みで動作する。開発の歴史は古いが、ここ数年、脚光を浴び始めている。その背景には、ヘッドフォン市場の世界的な広がりがあるはずだ。海外の高級モデルを中心に、数十万円と高価な機種が多い。庶民にはなかなか手が出ないが、イベントなどで実機の音を耳にし、関心を持つ人が増えてきている。
一般的なヘッドフォンのドライバーはお椀やドームのような形の振動板の後ろに、ボイスコイルを付けて振動させる。対して平面駆動型は、振動板が文字通り平らだ。平面磁界型の場合、その振動板には電極(コイル)が引いてあり、小さな穴をたくさん空けた、磁石と磁石で挟む構造になっている。ここに信号を入れると、振動板の周囲に磁界が発生し、磁石と反発したり引き寄せられたりする。これに連動して、振動板が動く仕組みだ。方式としてはダイナミック型の一種だが、振動板が平面であるため、(振動板が平面ではない)一般的なダイナミック型ドライバーとは区別されることが多い。
均一に力が加わるため振動板の変形による音の歪み(分割振動)が少なく、音が平面で伝わる点もメリットだ。AR-H1の場合は、コイルを振動板の片面だけに配置して、振動板の軽量化を図っているようだ。
平面駆動型のユニットは、一般的に解像度が高く、細かな情報も再現することができると言われている。弱点は大きくて、高価になる点だ。構造上、振動板の振幅が少ない。これは歪みの少なさにもつながるが、音圧が取りにくく低音の力感では一歩譲ると言われている。
AR-H1に関して言うと、課題というべき低域の力感も十分にあり、大口径のダイナミック型ヘッドフォンから乗り換えてもまったく違和感がない。一方で中音、高音の抜けの良さは圧倒的で、ここまで聞きやすく、開放感のあるサウンドは、同価格帯の機種ではなかなか得られないと思う。
感度が92dB/mWと低く、少々音量が取りにくいので、できれば据え置き型の高出力なヘッドフォンアンプと組み合わせたいが、iPhone 6sでも音楽を普通に聴くのに十分な音量が得られた。スマホをはじめとしたポータブル機器との相性も決して悪くない機種である。
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