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Mr.ウォーカー・玉置泰紀がキーマンに聞く「新しい街づくりのOS」 第6回

Google、TwitterなどのIT企業で活躍してきた牧野氏が探る、情報の多層化がもたらす「次世代都市のOS」【一般社団法人メタ観光推進機構・牧野友衛氏】

文●玉置泰紀(エリアLOVEウォーカー総編集長)

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 街づくり、街おこし、そして都市計画。その最前線には、常に常識を書き換える「キーマン」たちがいる。元Walker総編集長であり、長年日本の街を見つめ続けてきた玉置泰紀が、いま最も話を聞きたい相手に直撃。大きく変容する「新しい街の形」を紐解いていく。

 第6回のゲストは、Google、YouTube、Twitter(現X)などで要職を歴任し、現在はTools for Humanity(TFH)の日本代表として、AI時代の人間証明プロジェクト「World(World ID)」を推進する牧野友衛氏だ。牧野氏は、場所が持つ多層的な価値を再定義する「メタ観光」を提唱し、デジタルとフィジカルの境界を溶かし続けている。AIが生成する偽情報と、身体性を伴う街歩きが混在する2026年。私たちが向き合うべき「街のOS」の進化について、深く切り込む。

 メタ観光推進機構は2021年に筆者も牧野氏とともに、6名の理事で立ち上げた。今回は改めて、メタ観光の代表理事である牧野氏に、その活動の核心を聞いてみた。

【牧野友衛氏プロフィール】

牧野友衛氏

【牧野友衛氏プロフィール】 一般社団法人メタ観光推進機構代表理事。Google、YouTube、Twitter(現X)を経て、トリップアドバイザー日本代表やActivision Blizzard日本代表を歴任。2024年よりTools for Humanity(TFH)の日本事業を統括する。位置情報や歴史、SNSの文脈など、一か所に重なる多層的な情報を観光資源と捉える「メタ観光」を提唱し、その普及と社会実装に尽力している。

観光まちづくり教育が変える「街の未来」

玉置: 今回のメタ観光推進機構の総会(2026年3月26日開催)のテーマは「観光を若者が誇れる産業へ」ですが、観光まちづくり教育についてお聞きしたいと思います。山口県では昨年(2025年)、5つの高校を対象に、実際に街歩きのプランを出してもらう「次世代観光まちづくり教育」を実施しました。これまで牧野さん自身は、特に墨田区や江東区などで、大人や専門家の方々とワークショップを行い、メタ観光マップを作ってこられました。それに対し、今回のように高校生が街の面白さを発掘し、教育も含めて街のレイヤーを掘り起こしていくということが、これからのまちづくりへの影響力としてどのような可能性があるとお考えでしょうか。

牧野: 実際には今年度(2026年度)ではなく昨年度(2025年度)、香川県の坂出第一高校で、パイロット的な形で授業を頼まれたのが最初でした。そこで初めて高校生を対象に取り組んだのですが、探究学習の中でワークショップ形式で実施してみたところ、非常に面白い手応えがありました。まず、生徒たちが非常に集中して取り組んでくれましたし、先生方も割と楽しんで参加してくれたんですね。「観光」という枠組みで、自分の好きな場所を紹介するというワークショップにしたのですが、これが非常にハードルが低いんです。自分たちが普段から知っている街のことなので、生徒も先生も話しやすく、非常に盛り上がったという感覚がありました。

 一方で、学校側から呼んでいただいた理由を伺うと、切実な課題が見えてきました。一つは「地域に観光資源がない」という悩み、もう一つは、高校生たちが卒業後に大学進学や就職で外へ出てしまい、そのまま帰ってこないという人口流出の問題です。メタ観光を通じて地域のことを知ってもらうことが、その場所に残ったり、あるいは一度出てもまた帰ってきたりするような、地域への愛着を育むきっかけになればいいというのが元々の出発点でした。

 今回の山口県での実践では、坂出の時よりも更にがっつりと一日時間を取って集中して行いました。内容としても、自分たちが知っている内側からの視点での魅力を語るだけでなく、「電線」や「暗渠」、「ドンツキ(行き止まりの路地)」といったジャンルの専門家を呼んで「外の視点」を入れ、自分たちの地域をもう一度見つめ直すという二つのアプローチを行いました。さらに、単に好きな場所を紹介するだけでなく、そこからどう実際の観光に関わっていくかという、より実践的な事業プランの作成まで踏み込んでいます。

 出てきた内容も非常に興味深いものでした。高校生の行動範囲は限られていますが、家族といつも行く飲食店であったり、自宅近所の通学路から見える海の景色であったりと、本当に身近な場所が紹介されました。また、これまで20回以上のワークショップをやってきましたが、初めて「心霊スポット」という切り口が出てきたのも高校生ならではの視点で新鮮でした。

 教育的な効果としては、先生方が「生徒がここを好きだとは知らなかった」と驚くような発見がありました。また、普段からいる友達同士であっても、自分の好きな場所を教え合う機会というのは意外とありません。お互いの感性や好きな場所を知ることは、グループワークとしてお互いの距離を縮めるきっかけになります。メタ観光が、単なる地図作りを超えて、コミュニケーションのツールやコミュニティ形成の場として機能したと感じています。

メタ観光の概念図。その定義は「GPSおよびGISにより位置情報を活用し、ある場所が本来有していた歴史的・文化的文脈に加え、複数のメタレベル情報をICTにより付与することで、多層的な観光的価値や魅力を一体的に運用する観光」

【メタ観光とは】(公式サイトからまとめた説明)

 ICTや位置情報を活用し、一つの場所に歴史、文化、アニメの聖地といった多層的な価値(レイヤー)を重ねて提示する新しい観光概念。

 従来の観光学が個別分野(ヘリテージやコンテンツ等)に閉じていたのに対し、メタ観光はそれらを統合し、レイヤーを横断する観光客の視点で捉え直す。これにより、SNSでの発信を目的とした新しい観光行動も可視化される。

 ビジネス面では、自治体による資源の再発掘や、情報を束ねるICT事業者の参入など、観光のポテンシャルを拡張する枠組みとして期待されている。

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