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大正製薬が創業以来初リストラ、製薬業界「異常事態」の背景

2018年09月25日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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長年上原家が経営をリードする大正製薬HD本社 Photo by Masataka Tsuchimoto

 製薬中堅の大正製薬ホールディングス(HD)が今月発表した1912年の創業以来初の早期退職募集結果は、全従業員約6300人の約15%にも当たる948人だった。かつてなく各社がリストラを断行する今年の製薬業界の中で、最多となった。

 上原明社長が、「急速な環境変化に対応する」として、募集を公表したのが今年5月。勤続10年以上かつ40歳以上が対象で、その数は全従業員のおよそ半分に当たる約3000人。さらに募集人数は定めなかったため当初から、「今年最大のリストラになる」と業界内で見られていた。

 本誌取材や発表で今年明らかになった製薬業界の早期退職は、仏サノフィ日本法人250人超、アステラス製薬600人(年度内想定数)、独ベーリンガー・インゲルハイム日本法人300人超。これに大正HDの948人、昨年末にあった米メルク日本法人「MSD」の約400人を合わせれば、約1年間で計2500人余りが職場を去る異常事態だ(表参照)。

 各社が決断した背景には、大型医療用医薬品の特許切れや今春の薬価(医療用医薬品の公定価格)制度の抜本改革がある。

 大正HDは売上高(2018年3月期で2801億円)の約3分の1が医療用医薬品事業だが、他社から出た後発品(ジェネリック)による浸食などで、売上高は年々減少。そこに今春の薬価制度改革がとどめを刺したようだ。

 早期退職募集を発表した5月、大正HDは同時に議決権ベースで34%の株式を保有する製薬会社、富山化学工業の全株式売却を発表。これは医療用医薬品事業に見切りをつけ、売上高の約3分の2を占める大衆薬事業で生き残りを図る経営方針の表れと見られる。

大衆薬に未来は?

 大衆薬の業界団体「日本OTC医薬品協会」の前身「日本大衆薬工業協会」は、かつて一部業界関係者から皮肉と羨望を込めて、「日本“大正”薬工業協会」と呼ばれていた。それほどまでに大衆薬業界で、大正HDの存在感は大きい。

 だが、その大衆薬事業も前途洋洋ではない。

 大正HDが抱える3大ブランドのうち、風邪薬「パブロン」は好調なものの、栄養ドリンク「リポビタン」は下げ止まらず、売上高は毎年度約20億~50億円ずつ下がっている。大衆薬の発毛剤市場を独占してきた「リアップ」も、いよいよ8月に男性用シャンプー大手のアンファーから後発品が参入して牙城が崩れた。さらに年内にロート製薬なども参入見込み。市場活性化で追い風となるか、大正HDのパイが奪われるだけの結果となるか、読めない状況だ。

 故に大正HDは今年業界で最大のリストラだったにもかかわらず、複数の業界関係者は「厳しい業績見通しを思えば甘かった」と話す。

 創業以来の大決断が残った社員に奮起を促し奏功するか。退職加算金をもらって会社を去った元社員たちがほくそ笑む結果となるのか。環境変化の激しい製薬業界で、明暗はっきりする日はそう遠くない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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