60以上の企業を紹介してきた「業界に痕跡を残して消えたメーカー」シリーズだが、このあたりでひと段落付けたいと思う。その最後は、ハードウェアやソフトウェアのメーカーではなく、販売店チェーンだったCompUSAである。
画像の出典は、“Wikipedia”
1990~2000年頃にアメリカに訪れたことがあるならCompUSAのショップを見た人も多いだろう。かく言う筆者もその1人。シリコンバレーのPCショップチェーンといえばFRY'sが一番有名だろうし、こちらはまだ健在であるが、ショップの数そのものはそれほど多くない。むしろBEST BUYの方がショップの数は多い。ちょっとしたものならBEST BUYで片付くはずだ。
他には2009年に破綻したCircuit Cityや、80年代まではアマチュア無線関連製品を手広く扱っていた、いわば「街の電子パーツ屋さん」的ポジションだったTandy RadioShack(2000年からRadioShack Corporation)など、いくつかのチェーンが存在した。
ちなみに1997年にはT-ZONEがシリコンバレー、それもFRY'sのまん前に出店、その後サンマテオ(当時の見解ではシリコンバレーの北端を越えたあたりだが、シリコンバレーの範囲がどんどん北進していった結果、今ではシリコンバレーの一部)に出店し、さらにもう1店舗を出そうとしたところでアメリカ撤退となっていたりする。
ではCompUSAは? というと、位置づけ的にはBEST BUYに近いが、BEST BUYほどにはオーディオや家電を扱っておらず、ややPCに振った品揃えという記憶がある。
コンピューターのスーパーマーケット
Soft Warehouseとしてスタート
CompUSAの前身は、Soft Warehouseという名前の会社で、1984年にダラスで創業した。このSoft Warehouseはコンピューターのハードウェアとソフトウェアを直接企業に販売するビジネスだったが、ここで単に企業に販売するのではなく、いわばスーパーマーケットスタイルの店を構えるというアイディアを思いつき、翌年25000ft2(2323m2)の売場面積を持つ最初の店をオープンする。
こうしたアイディアそのものは、すでにトイザらスやOffice Depotなどが実現しており、家電などではCircuit Cityが先駆者であったが、ことコンピューターに関しては専門性が高いために難しいと思われていた。ところが実際にはSoft Warehouseのショップは成功を収める。
1989年1月、Soft WarehouseはRonald N. Dubin氏が率いる投資家グループによって900万ドルで買収される。新たなCEOとしてはHome DepotのCEOを勤めていたNathan Morton氏が就く。Morton氏は拡大戦略を取り、1989年末までに店舗を18ヵ所に増やす。この結果、同社の売上は1988年末に6600万ドルだったのが、1990年には6億ドルまで増えることになった。
同時期にTandy CorporationもComputer Cityというチェーン店を展開しており、こちらは売上こそさらに多い10億ドルを記録したものの、赤字決算という有様だった。もっともSoft Warehouse(CompUSA)もこのあと赤字に転落するのだが。
CompUSAに改称し株式公開
PC販売は利益率が低いのでPC教室で稼ぐ
さて、1991年にはCompUSAに改めるとともに、新規株式公開も果たすことになる。この当時、同社の主力製品ラインはCompudyneブランドのPC互換機を中心に、その他のPCメーカーの製品とさまざまな周辺機器、消耗品などを扱っていたが、同年Apple Computerの製品も扱うことになった。
さらにその後、Compaqの製品の扱いも開始し、「CompUSAに行けばなんでもそろう」という評判を勝ち得ることに成功する。この時期、おおむね売上の35%が企業向けとされていたが、逆に言えば65%は個人向けということになる。
時期的にはプロセッサーが386から486に切り替わる頃で、ちょうど個人向けのPC市場が急速に伸びていた時期だ。1992年末までに店舗は36に増え、その後6ヵ月でさらに12店舗が追加された。
とはいっても、利益率の低さは(CompUSAに限らず一般的なスーパーマーケットに共通だが)同社の課題であった。この対策の1つとしてコンピューターの教育コースを各店舗で実施した。この教育コースは月額70万ドル近くの売上となり、かつ粗利が非常に高いため、利益率の改善に貢献した。1992年の売上は8億2000万ドルに達している。
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