2017年秋に登場したiOS 11。その後もアップデートを続けている。どうしてもコンシューマーの視点で新機能に目が行きがちだが、企業が顧客サービスで利用できる「Business Chat」など、法人ユーザー向けの機能も数多く備えるという。
Appleで、Apple Pay担当バイスプレジデントを務めるJennifer Bailey氏が、1月初めに米国で全米小売業協会(NRF)が主催したイベントの基調講演に登場。Appleの技術とiPhoneを企業がどのように活用できるのかについて話をした。
顧客と直接コミュニケーションが取れる
ビジネス向けメッセンジャー「Business Chat」
まずBusiness Chatから。iMessageを使って企業が顧客とコミュニケーションが取れるものだ。現在Developer Previewの段階で、2018年中のローンチを予定している。
現在普及しているメッセンジャーサービスはFacebook Messenger、LINE、WhatsAppなどさまざまなものがあるが、その中でもBusiness Chatの強みは「友達とメッセージする感覚でサービスや製品情報について聞いたり、技術サポートを得たり、注文することなどが可能」と説明する。
デモでは早期パートナーであるホームセンターの「Lowe's」が紹介された。顧客が最寄りの店舗を調べると、その店舗の詳細ページにBusiness Chatのアイコンが表示されている。これをタップすると顧客はLowe'sとチャットを開始する。
文字入力が面倒な人なら、Siriに「近くにあるLowe'sは?」と尋ねるかもしれない。その際も、結果を知らせるMapアプリにBusiness Chatのアイコンが、「通話」「Webサイト」「共有」の各ボタンとともに表示されてタップできる。Safariで検索時もBusiness Chatアイコンを表示できる。
実際にチャットが始まるとなにができるのだろうか。「iPhoneから操作できるドアロックを探している」と入力すると、製品情報がチャット上に表示される、気に入った製品を伝えると、Apple Payアイコン付きの購入メッセージが表示される。顧客はこれをタップするだけ。クレジットカードや配送先を入力することなく、Business Chat上でショッピングが完結する。
チャット終了後もオープンにしておくと、製品のTips、他の製品の提案などのデジタルメッセージが送られるという。Salesforce、Nuance、Genesysなどの企業向けシステムとの統合も可能とのことだ。
iOSのマップアプリにも屋内マップ
さらにNFCタグも活用可能に
Bailey氏が次に紹介したのが「Indoor Maps」だ。Googleマップではすでにおなじみの機能だが、Apple Mapsではまず世界の主要な空港38ヵ所、米国の125のモールの屋内マップを提供する。「店舗の正確な位置を把握したり、最寄りのレストランを探すことなどが可能になる」と説明する。今後も利用できる施設を拡大していくという。
3つ目の「Core NFC」は、iPhoneに搭載するNFCの利用を拡大するものとして期待されている新機能だ。ポスターなどにタグをつけておくことで、顧客はそこにタップしてNFCの通信を利用して詳細な情報を得ることが可能になる。スマートフォン登場前から技術的には可能だったが、Bailey氏は「NFCタグが業界標準となり、安く実現できるようになった」と語った。
デモでは、製品にタグをつけることでショッピング中に顧客がその商品の詳細情報にアクセスできるようにし、Apple Payと連動して決済までできる例。ストア内で紙のクーポンを配る代わりにポスターなどにタップしてクーポンを獲得する例。店頭でロイヤリティープログラムのプロモーションとしてタップすると登録URLに飛ぶ例などが紹介された。
Core NFCはiOS 11ですでに提供されており、年内に上記のような店舗で利用される事例が登場する見込みという。
「NFC技術とタップというジェスチャーにより、電車の改札、ショッピングなどさまざまな体験が実現する」とのことで、「物理的な財布を置き換えることになる」と語る。
Apple Payそのものについては、2014年に開始以来3年以上が経過しており、「世界で最も高速に受け入れが進んでいる決済手法」という。物理店舗では上位100のチェーンのうち67ですでに利用でき、世界で2000万ヵ所の店頭で利用できるという。