評論家・麻倉怜士先生による、今月もぜひ聴いておきたい“ハイレゾ音源”集。おすすめの曲には「特薦」「推薦」のマークもつけています。9月ぶんの優秀録音をお届けしています。e-onkyo musicなどハイレゾ配信サイトをチェックして、ぜひ体験してみてください!!
女性トランペッター、山崎千裕のセカンドソロアルバム。ロサンゼルスと東京で、それぞれ当地のトップミュージシャンと協演した。
トランペット+楽団の録音では、トランペットの音像設定、バックとの距離やバランス、バックの楽団のセパレーションなど音の聴きどころは多い。特にハイレゾになり音像、音場感の再現の度合いが上がり、より制作者側の意図が分かるようになった。その観点で聴くと、明確、明瞭、そして高解像度な録音だと分かる。まさに最新ハイレゾならではの威力だ。
ドラムス、ベース、エレキピアノ……などのバックが明瞭な定位感と存在感を持つになかで、伸びやかで、優しい、そしてグロッシーなトランペットが、センターに正しく定位し、感情感たっぷりに聴かせる。コーラスが透明でふくよかだ。音が強度に複雑に絡み合っても、解像感の高さは変わらずにキープされている。
個が聞こえ、なおかつ音像と音場バランスが好適な、名ハイレゾ録音だ。録音場所のひとつ、ロサンゼルスはyaniv studioはあまり防音されていない一軒家のスタジオで、環境雑音や隣の楽器の音とかが結構、入っているが、それが決して耳触りではなく、逆にロサンゼルスならではの空気感が伝わってくるのが面白い。
FLAC:96kHz/24bit、WAV:96kHz/24bit
キングレコード、e-onkyo music
海外ディスクの輸入会社、キングインターナショナルがハイレゾ製作に進出。第一弾が、ハープ独奏だ。それって、果たしてハイレゾにマッチするのか、聴く前は少し危惧したが、実に素晴らしいではないか。音の立ち上がり/下がり、微妙な質感、そして音の輝き……など、まさに一級のハイレゾだ。しかも、DSD11.2MHzだ。
目も覚めるような鮮烈な音。ハープの単体なのに、これほど音色のバラエティさと、音の優しさ、剛毅さ……が聴けるとは。右手の旋律の音と左手の伴奏の音が同時に発せられる時、空中で音たちが絡み合い、融合していく様子が、むしろ単体の楽器だから手に取るように分かるのは、ハイレゾの恩恵だ。DSD11.2録音ならではの、高い情報性と情緒性の発露が、ハープにとても似合うと聴いた。単音の旋律も綺麗だが、グリッサンドの迫力と響きの連続感は驚く程の感興だ。
FLAC:192kHz/24bit、WAV:192kHz/24bit、DSF:11.2MHz/1bit
キングレコード、e-onkyo music
『Another Time - The Hilversum Concert』
Bill Evans、Eddie Gomez、Jack DeJohnette
ビル・エヴァンス、エディ・ゴメス、ジャック・ディジョネットのトリオの音源発掘の最新版がこの『Another Time - The Hilversum Concert』。まず昨年に1968年6月20日のドイツでのスタジオ録音が『Some Other Time』として作品化された。次いで、Netherlands Radio Unionが保有していた、その2日後の6月22日にオランダのヒルフェルスムで実施したコンサートの音源が、CDやLPで発売されている。これが今回、カナダの2XHDの手によってDSD音源化された。
2XHDが誇るTHE 2xHD FUSION MASTERING SYSTEMによってマスタリングされた。アナログ再生(Nagra-T tape reco)→→歴史的真空管アンプ→→マージングのHorus ADコンバーターとDAWのピラミックスという、凝ったアナログ・デジタル変換の系で制作されている。
2XHDのDSDリマスターには名作が多いが、本作も素晴らしい。やはりDSDがキーワードだ。DSDは2.8MHzでは、まったり的な優しさが特徴だが、5.6MHzになると、情報性と情緒性がうまくバランスしてくる。それは、ビル・エバンスのメランコリーと音色の麗しさ、そして都会的なエモーション……という特徴的な音楽的音調とまことにフィットするのである。DSD5.6MHzならではの華麗さ、美麗さ、グロッシーさが、彼の音楽を美しく彩っている。
FLAC:96kHz/24bit、192kHz/24bit
WAV:96kHz/24bit、192kHz/24bit
DSF:2.8MHz/1bit、5.6MHz/1bit、11.2MHz/1bit
2xHD、e-onkyo music
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