オマーンにある山では、炭素の石化が自然に発生している。この過程を科学的に解明し、効率的に二酸化炭素を隔離する研究がうまくいけば、温室効果ガスを地中に封じ込める新手法を開発できるかもしれない。
二酸化炭素を地中に貯蔵することで、大気中に排出された二酸化炭素量を削減できるかもしれない。科学者チームは現在、二酸化炭素を地中に効率的に貯蔵できるのではないかと考えて、露頭(地層の露出部分)から採取した地球のマントルの貴重なサンプルを詳しく調べている。
化石燃料を燃焼すると、大抵は二酸化炭素が発生して大気に排出されるが、二酸化炭素を回収できれば、地中の奥深くに封じ込めればよい。二酸化炭素の貯蔵は多くの場合、古い油層やガス貯留層の温度や圧力を上げて封入する手法が使われるが、二酸化炭素が漏れてしまうこともある。
ここ最近、アイスランドで実施されたプロジェクトにより、地球上の適切な地点に二酸化炭素を貯蔵するだけで、二酸化炭素がカルシウムやマグネシウム、鉄と化学反応を起こして石灰石のような炭酸塩鉱物を形成することがわかった。石化により、二酸化炭素は数十万年間封じ込められると考えられており、最近では石化の過程が予想されていた以上に早く進むこともわかった。化石燃料の継続的な使用によって起こる影響の一部をすぐにでも緩和しようと考えるなら朗報だ。
一方で、石化の過程をもっと早められると考える研究者もいる。オマーンの山々では、科学者が地球マントルの露出した部分に集中して研究しているが、アイスランドの調査で扱われた石化の反応は地表面で自然に発生する。AP通信の記事によると、コロンビア大学のピーター・ケルメン教授をリーダーとする研究チームはサンプルを求めて4カ月かけて採掘し、現在、石化がどのように発生するのか深く理解するため、13トン分の岩を分析する計画を立てているという。
石化の過程の理解が深まれば、研究チームは自然界で発生する炭素の隔離システムを再現できる可能性がある。研究チームは、オマーンで採掘した露頭がどのように二酸化炭素を吸収するのか解明したいと考えている。またケルメン教授は研究成果を活用して巨大な二酸化炭素の吸収装置を海底に設置する大きな構想も描いている。しかし一方で、二酸化炭素を石化するアイデアは単なる研究プロジェクトに過ぎない。アイスランドでも、今のところ毎年たった5000トンの二酸化炭素を地中に封じ込めただけだ。
その代わり、アメリカでは従来から続いている二酸化炭素貯留手法への期待が続きそうだ。ケルメン教授がミシシッピ州で実施した炭素隔離プロジェクトは惨憺たる大失敗だったかもしれないが、貯留のテクノロジーを実用化しようとする動きにはつながった。最近、無事に再稼働したテキサス州のペトラノバ石炭発電所は、隔離した二酸化炭素で地中から近くの油井に石油を汲み上げやすくしている。また、オンライン・メディアVoxの記事で今週取りあげられたように、民主・共和両党の新たな活動で、将来的に似たような構想の広く導入されるかもしれない。
(関連記事:Associated Press, Vox, “A Power Plant in Iceland Deals with Carbon Dioxide by Turning It into Rock,” “クリーン・コールに懲りない 米歴代政権の闇,” “Researchers say Earthquakes Would Let Stored CO2 Escape”)