前回のAMD CPUロードマップではあまり詳細な情報が出てこなかったが、COMPUTEXを控えて製品の動きが激しくなっており、またいといろと将来製品に関する情報も出てきたので、まとめて解説する。
まず前回から現時点までの間の主要な製品についてのアップデートを。今年2月、AMDは「A10-7860K」APUと「Athlon X4 845」を発表した。
このうち、A10-7860KはGodavari、つまりKaveriベースの製品であるが、Athlon X4 845はCarrizzoコアのGPUを無効化した製品である。
Carrizoコアそのものは連載294回で解説したが、ここで書いた通り本来CarrizoとそのベースになるExcavatorコアは、Kaveri/Godavariで採用していたSteamrollerコアを低消費電力向けに振ることで、性能/消費電力比を改善した(逆に言えば絶対性能は上がらない)ものである。
そのCarrizoを採用したハイエンド製品はモバイル向けの「FX-8800P」で、CPUコアは定格2.1GHz/ブースト3.4GHz、GPUは8CU(512SP)で800MHzという構成が35Wに収まっているあたりからも、性能/消費電力比が高いことがわかる。
このFX-8800PのGPUを無効にして、動作周波数を定格3.5GHz/ブースト3.8GHzまで引き上げたものがTDP 65Wということで、どうにかAthlon X4 840(定格3.1GHz/ブースト3.8GHz)より微妙に動作周波数を引き上げることには成功した。ただし2次キャッシュは半減しているので、性能的には位置付けが微妙なものである。
ではなぜこんな製品を出したのだろうか? おそらくはCarrizoコアの在庫処分である。後述するが、Carrizo世代のAPUはモバイル向けのみとしたものの、それほど大きく売れるまでには至らなかった。
そして間もなくAMDはプラットフォームを一新するので、そうなると旧世代APUは物理的に売るのが極めて難しくなる。したがって、売れるうちになんとしても売ってしまおうというあたりだろう。
ちなみにこれと絡んでかどうかはわからないが、「A8-7690K」は結局出ないことになったようだ。
続いて3月には「A10-7890K」が発表された。このA10-7890Kが、Godavari世代のハイエンドであり、かつ最後の製品となるようだ。
「A10-7850K」から2年あまりで、やっと定格で4GHzに達するところまで持ってきたのは、(28SHPが事実上AMD向け専用プロセスとはいえ)ファブレスの状態でよくがんばった、と褒めてしかるべきであろう。

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