ファミリーマートの公式サイトの商品写真が「センスがない」「おいしくなさそう」と評判です。公式サイトを見ると、確かにバウムクーヘンがおかしな角度から撮られていたり、プレミアム とろっとチーズケーキバウムが謎の物体に写っていたり、さぬきうどんが冷凍のまま写っていて、ちっともうどんらしくなかったりと、残念な写真がいくつかありました。
「カメラマンに頼む予算がなくてしょぼい機材で担当者ががんばって撮っているんだよ」との声も聞こえてくるこれらの写真。でも、実はプロカメラマンに頼まなくても、機材や照明を駆使ししなくても、ちょっとしたコツでちゃんとした写真が撮れるんです!
『デザイナー&ディレクターが写真を上手に撮る本』の筆者、岡田陽一さんに、一般の人でも実践できる商品写真撮影のコツをお尋ねしました。
撮り慣れない人でも商品の魅力を伝えられるちょっとしたコツ
ファミリーマートの写真が残念な理由は、岡田さんによると大きく2つあるのとのこと。
- 真上からフラッシュを使って撮ったように見えて、商品の厚みや大きさ、魅力が伝わらない
- 食べ物はちゃんとお皿などの食器に載せて撮影するのが“おもてなし”
普段写真を撮り慣れない人でも、次のように考えて進めると、“使える”写真を撮ることができるそうです。
- その商品がおいしそうと感じるのはどの部分なのか?を見つけて撮影
- 見つけられなければ、食器などを回しながら角度を変えて数枚撮り、おいしそうに見える写真を選ぶ
岡田さんに具体的にはどのようにすればよいのか、「一般の人でも撮れる環境で」との制約付きで、お手本を撮ってもらいました。
使用するカメラについては『デザイナー&ディレクターが写真を上手に撮る本』で詳しく解説しているので、そちらを参考にしてもらうとして、まずは、どんなところで撮ればよいのでしょうか?
「一般の人が撮影をする場合、スタジオを使うことはないでしょう。会議室のテーブル、デスクライトなど実際に会社にある物を利用しましょう。ただし、デスクライトだと光量が足りず暗いので三脚は必須です」(岡田さん)
商品を乗せるお皿などの食器は、手近にあるものでかまいませんが、商品と同色のものは避けます。食器の色によって露出の設定やライティング(照明の当て方)を変更するのは大変なので、多くの商品を連続して撮ることを想定して、今回はクリーム色系の食器だけで撮影を進めました。ちなみに、使った食器は100円均一ショップで購入しました。
100円ショップ調達した材料で簡易スタジオを作る
会社の会議室や執務室などで撮影すると、背景に不要なものが映り込む可能性が高いため、最初に簡易スタジオを作ります。
頻繁に撮影するのであれば背景紙と背景紙サポート(背景紙を吊ったり、貼ったりするもの)を用意するのがベストですが、そうではない場合は代用品で間に合わせます。今回は、背景紙に100円均一ショップで購入した白い模造紙と背景紙サポートの代わりに、パソコンのモニターを使いました。
照明は、一般的なデスクライト(インバーター蛍光灯 昼光色)を使います。
バウムクーヘンの厚みと周囲のコーティングを伝えたい
バウムクーヘンをお皿に載せ、ファミリーマートの残念写真のように真上からフラッシュを使って撮影しました。バウムクーヘンの厚みが表現できず、お皿もテカテカと光ってしまっておいしそうではなく、やっぱり残念な写真になります。
そこで、バウムクーヘンの厚みを表現して、おいしそうに見える角度で撮ることにします。
デスクライトで直接商品を照らすと商品が白っぽくなったり、お皿がテカテカと光ってしまったりします。バウムクーヘンを買ってきたときのレジ袋をそのままかぶせてディフューザー(光を拡散させる撮影機材)代わりにしました。
食べ物を撮る場合、照明(今回はデスクライト)は真上より少し後方に配置して若干逆光で撮影すると、表面にテカりができてシズル感(みずみずしさ)をかもし出せます。手前が影で暗くなるので、食べ物にあてた光を反射させるようにレフ板を置いて影をやわらげます。レフ板は100円均一ショップの材料で手づくりできます(作り方はこちらを参照してください)。
お皿を回しながら、何枚か撮影しておいしそうに見える角度を探します。
バウムクーヘンの厚みや周囲のコーティングがうまく表現できて、おいしそうな写真を1枚選びました。
バウムクーヘンと同じ撮影設定で「プレミアムレアチーズケーキバウム」も撮ってみました。
バウムクーヘン同様、プレミアムレアチーズケーキバウムをお皿に移して、おいしそうに見える角度を探すため、何枚か撮影しました。
プレミアムレアチーズケーキバウムのバウムの厚み、上に乗ったチーズケーキのボリューム感が表現できて、おいしそうな写真を1枚選びました。
桜餅のシズル感を表現しよう
洋菓子に続いて、和菓子の桜餅も撮ってみました。販売されている容器のまま、真上からフラッシュを使って撮ってみると、桜餅の丸みや質感がやっぱり表現できず、おいしそうではありません。
バウムクーヘンのときと同様に、桜餅をお皿に移して、おいしそうに見える角度で撮ることにします。
桜餅の真上、やや後方から光を当て、手前にできる影をレフ板でやわらげます。桜餅の上部がハイライトで少しテカり、みずみずしく美味しそうに撮れます。このテカりがシズル感です。
お皿を回しながら、何枚か撮影しておいしそうに見える角度を探します。
桜餅の丸みやシズル感がうまく表現できて、おいしそうに見える写真を1枚選びました。