序章:ネットさえあれば
見知らぬ海外の土地も困らない(はず)
「Travel means “trouble”.」
これは筆者が師匠から教えてもらった、海外旅行の格言だ。海外旅行って、思わぬ所でとんでもないトラブルに出会ったり、日本でフツーに生活していたら考えもしない様な不便を感じたりするんデス。
ネット環境もそのひとつ。考えてもみてほしい、見ず知らずの土地を闊歩するには、ウェブとGPSを使ったマップサービスを使うのが一番有効だ。TwitterやFacebook、LINEといったSNSサービスだって毎日のように利用する、ましてや旅行をしているなら尚更である。旅行先の観光名所やレストランを調べるのだって口コミサイトだし、航空券や列車の予約もWEB経由での電子チケットで完結する(これは予め印刷しておけばいいのだが、それでも「何が起こるか分からない」のが海外旅行というものだ)。
ネットがこれだけ生活に浸透し、もはや「あって当たり前」な時代。日本の大手3社は現地の通信事業者に通信乗り入れをする「国際ローミング」というサービスを提供しており、ケータイのローミング設定をONにするだけで「とりあえずは」日本と同じように使える。
しかし、国際ローミングでの通信は高額な通信料がかかるというのが常識だ。青天井で「パケ死」もかくやという頃ほどでは無いが、それでも1日あたり約3000円ほどの料金が発生するので、まだまだ気軽に利用するというわけにはいかないのが普通の感覚だろう。
そういった事情もあって、海外旅行によく出かける人達の間では現地の通信事業者からプリペイドSIMを購入するのが常套手段となっている。日本ではほとんど利用されないプリペイドSIMだが、ヨーロッパをはじめとした海外では結構普通に提供されている。国際ローミングと比較して、1日数千円、1週間で1万円オーバーという通信費が、格安通信と同等レベルまで下がる訳だから、これを利用しない手は無い。
という訳で、今回はドイツのベルリンで開催されるIFAの取材を名目(言い訳)にして、ドイツ、オーストリア、イタリアの3ヵ国を周遊してみた。その間、各地のメジャーキャリアを使って、各地の「あんな所やこんな所」でロードテストをやってみたい。「SIMを買ってみた」という企画はあっても、「比較してみた」はあまり無いので、思いもよらぬ結果を期待したい。
大手3社と各MVNOがひしめくドイツの携帯キャリア
ドイツの携帯キャリアはT-Mobile、Vodafone、O2、E-Plusという大手4社と、congstar、blau、FONICなどのMVNOブランドが通信を提供している。もっとも、E-Plusは昨年 O2に買収された(ブランドは現在でも存在している)ので、インフラとしては3社のうちどれかの電波を使うという事になる。
回線品質は元国営のT-Mobileが安定しており、ドイツのプリペイドSIMとしては定番だ。また、MVNOはドコモ回線一辺倒な日本と違って、大手各社の電波を利用している。MVNOは多くの場合、大手キャリアのサブブランド的な扱いとなっていて、プリペイドSIMに関しては街のストアや親会社のキャリアショップで購入できる。
ただし、MVNOを利用する場合は登録にかかるすべての作業を自分で行なう必要がある(場合によっては全編ドイツ語の可能性も)ので、大手よりも導入のハードルが高い。
今回ドイツではT-Mobile、Vodafone、O2の、大手3社のプリペイドSIMを買ってみた。
ベルリン・テーゲル空港に
キャリアショップは無かった!
空路の経由地がフランクフルトやミュンヘンなどのドイツ国内なら、空港ターミナルにキャリアショップがあってSIMの購入も可能なのだが、今回はチケットの都合上北欧経由だったので、ショップはベルリン市内で探す事になった。
ベルリンにおける空の玄関口・テーゲル空港は、首都の空港であるにもかかわらず小ぢんまりとしたもので、残念ながらケータイのキャリアショップは無い。建設が遅れに遅れているブランデンブルク新空港(当初予定ではとっくに開港しているはずだが、現在の予定では早くとも2017年開港で、これも実現するかどうか危ういらしい)に、生暖かい視線を送りながら期待(?)したいところだ。
余談はさておき、ホテルをとったシャルロッテンブルクエリアには、「ヴィルマースドルファー通り」というショッピング通りがあり、この通りに面してT-MobileやVodafone、O2といった各キャリアショップがそれぞれ複数あった。今回はまとめて購入をするため、「SUPERFIT Charlottenburg」というショッピングモールに入っていたそれぞれのキャリアショップを利用した。どこに行ってもパスポートの提示を要求されたので、最低限お金とパスポートは持っていく必要がある。まあ、安全上の問題もあるので、海外渡航先でパスポートとサイフは肌身から離すべきではない。