東北大学と科学技術振興機構(JST)は6月9日、和紙を使って高性能電極を開発したと発表した。
充電池や燃料電池の性能向上の決め手のひとつが電極の表面積であり、金属を多孔質にする表面加工を行うなどして表面積(反応面積)を増やしている。ナノサイズの孔の開いたスポンジ状構造体であるナノポーラス金属が有望視されているが、孔が小さすぎて応用が限られ、ナノポーラス金属をさらに別のサイズの孔(マイクロポーラス構造)を持つ多階層な多孔質材料に加工する手段が必要とされていた。
東北大学 原子分子材料科学高等研究機では、JST戦略創造研究推進事業の一環としてこれに取り組み、大盛工業の協力を得て和紙の技術を用い多孔質な合金を製造した。ナノポーラス金属粒子を和紙に染み込ませ、そののち焼結することで和紙成分などを除去するとマイクロポーラス金属合金でできた多孔質構造の「紙」となり、合金紙を酸処理することでイオン化して溶液に溶け出す元素を選択腐食する。合金紙は厚みを薄くすれば柔軟性も保たれる。
製作した水酸化ニッケルとマンガン酸化物による合金をスーパーキャパシター(コンデンサーの一種の蓄電素子)の活物質としてみると、これまでのナノポーラスニッケルに比べて体積あたり4倍以上、炭素材料に比べ10倍以上の性能を示し、また水の電気分解における電極としても高い性能を持つことが分かったという。
多孔質構造による表面積増大は充電池や燃料電池、電気分解用といった電極だけでなく、触媒の効率向上などあらゆる電気・化学産業に役立つ可能性がある。研究グループでは、製造プロセスを最適化、合金系を拡張することで幅広い用途・応用展開を予定しているという。