2014年12月14日、秋葉原の富士ソフトアキバプラザにて行われたGUGEN2014展示会・授賞式。GUGEN2014は、「実用性や商品性の高いアイデアを表彰し、その具現化をサポートするものづくりプログラム」。展示会・授賞式に向け、4月より各地方なども含めたハッカソンや試作品製作支援などを通じて、アイデアのブラッシュアップやプロトタイプづくりを応援する取り組みが行われてきた。
授賞式では、より実用性/商品性の高いハードウェアを評価するため、審査員だけでなく来場者からの市場評価も重要審査ポイントとして加算される。応募126作品から一般来場者による投票とGUGEN委員会の審査団による審査結果から大賞・優秀賞候補として選び出された1次審査通過10作品がプレゼンを実施した。今回は、いずれも要注目な受賞チームのプレゼン内容をお届けする。ただ製品を作って出すだけで終わるものではない、背後にある考えが特徴的だった。
■赤ちゃんクラウドデータベース実現なるか 大賞『おしゃぶりセンサ』
賞金100万円が進呈となる大賞に選ばれたのは、なんでもセンサ開発チームの『おしゃぶりセンサ』。
おしゃぶりの吸い方をパターン分析して、赤ちゃんの気持ちを解析する。いわば赤ちゃんの活動センシングだ。「次に寝るのか、それとも泣くのか、我慢しているか」などの行動分析・予測までを見据えている。
センシングは、口の動き、おしゃぶりの吸い方、活動量から推定。微妙な動きも感知できるようにするため、実装にあたりワイヤレス化、重量を口に含められるように工夫している。赤外線反射センサーをおしゃぶりのビニール内部に入れ、Arduinoによる専用基板も組み込んでいる。将来的には、温度センサーなども組み合わせ、「Bluetooth 4.0 Low Energy」にも対応させる予定。
感知方法は、口に含む部分に綿を仕込み、赤外線反射センサーで反射する量から距離・圧力を計測するというもの。実用化に向けては、大人による動作テスト、信号処理&分類、赤ちゃんからのデータ収集を行っている。
見守り機能の面で、海外では服にセンサーをつけるmimoが人気だ。また、足に装着するOwletのベビー・モニターもある。だが、いずれも約200ドル(約2万4000円)以上の価格設定のため、たくさんのデータを収集するには分が悪い。
目指すのは、赤ちゃん活動のビッグデータ分析から、変化の兆しをタイムリーにアドバイスできる環境だ。今後はさらに、「赤ちゃんが次に何をしそうかを探っていきたい」とビッグデータ解析にも力を入れるという。
審査員からは、「子育て中のためユーザーとしての共感がわく。実装が軽く安くできそう」「赤ちゃんは結局何を考えているのかわからない、予測ができるのは画期的だと思う。システムとして耐久性もありそう」といった賞賛があがった。
■リハビリ装具に付けるアシストデバイス『Raplus』
優秀賞に選ばれたのは、Hack the Bodyの『Raplus』。高齢化社会での歩行のリハビリに焦点をあてた「リハビリアシストデバイス」だ。
歩行は日常生活で重要な要素だ。高齢者の場合、脳卒中による症状が多く、全国で130万人の片麻痺の症状で足に力が入らなくなってしまう患者がいるという。回復させるためにはリハビリテーションが必要だが、元通りの歩行ができるようになるサポート装具としてRaplusは開発された。
機器自体は、もともと普及している「装具」に取り付けるシンプルなもの。足の力をサポートし、100%の補助を行わないことがコンセプト。「歩くときは膝に力が入らないため転んでしまうため、そこをサポートする。曲がった角度に応じて力を仮想的に出すバネ」があり、歩く際の角度を計測したロボットアシスト装置となっている。さらに、立ち上がり動作のときにもトルクを発生させひざをサポートする。
Raplusもおしゃぶりセンサと同様に、どのように動かしたかといった患者の歩行情報がデバイスで確認できるようになっている。リハビリのデータが蓄積・見える化されることで、回復傾向も医者・患者含めて共有できる。患者自身の回復が見えることは、モチベーションアップにもつながるという。さらに、医者や理学療法士による出力の調整も、データが見えることで容易だ。リハビリ歩行でのデータを共有して集め、リハビリでの保険適用も検討されている。
開発チームのHack the Bodyは、ソニーコンピュータサイエンス研究所(Sony CSL)のプロジェクトの1つ。Raplusの現状での試作品コストは約50万円だが、量産したら価格はおさえられそうだという。できるだけ早く臨床試験に進める予定とのことなので、今後の実用化に期待したい。
■スマホに挿して簡単に長さを計測できるアクセサリー
同じく優秀賞は、コロジャーの『コロコロプラグ』。スマホに物差しとしての機能を与える、イヤホンジャックに付けたローラー型のアクセサリーで長さを図るデバイスだ。
溝がついたフォトリフレクターセンサーの深さを読み取る仕組みで、センサーの波形から山の数で回転量、長さを計算する。外部電源は必要なく、イヤホンジャックからの電源供給のみでOKだ。直線だけでなく、曲線計測もできるのが強み。
iOS/Androidのマルチプラットホーム対応で、コストは1台あたり500円。量産化すればさらに抑えられるとして、クラウドファンディングでの販売も予定している。
デバイスだけで終わらないポイントは、プログラムをフレームワーク化して公開予定する点だ。例えば、高さ・幅・奥行きで計測した距離を自動的に計算して荷物の運賃計算をするAPIの開発といった応用ができる。先々は開発環境も作りコンテンツがたまってきたとところで、消費者や企業へ届けたいという。
サイズ縮小にも試行錯誤を行い、「8月に開発して、いろいろなセンサーで試した結果10月に試作品にたどり着いた」とのこと。
■光センサーで積木をつないで、ラジコンにもできる
最後にGoodIdea賞に輝いたのは、川口 一画氏による『Hikari×Tsumiki(ヒカリツミキ)』。
『Hikari×Tsumiki(ヒカリツミキ)』は、複数の独立した機能をもつ積木を光でつなぎ、さまざまな機能を実現できるデバイスだ。「積木のつながりを目視して直観的に理解できるモジュール型の電子回路を組み合わせたおもちゃ」だという。
開発の動機は、「1歳半の娘が楽しめるおもちゃ」を作ること。アナログな現実を今より面白いものにして、スマホやゲーム機でのデジタル依存を解決したいという思いがある。
そのため、積木というおもちゃを機能拡張するのが目的となっており、積木に回路、バッテリー、光センサー、さらに接合部にはマグネットが仕込まれている。積木側面からの光をつなぐインターフェースを採用し、小さな子供でも直感的かつ安全に楽しむことができる。
積木の種類は、Input、Joint、Outputの3種。スイッチを入れると赤い光がでる、距離に応じてライトの色が変わる距離センサーはInput部。無線に対応するJoint部や、モーターを内臓したOutput部で組み合わせて楽しめる。
会場ではデモとして、無線の積木とモーターを組み合わせ、ラジコンのようなものを作って動かしていた。「ライトと距離センサーで障害物レースのようなデモもできる。子供向けなので、積木だけで独立させた」
おもちゃとしてのネックは、コストと電源だ。会場での展示を通しても、商品化してほしいという声が多くあり、趣味のレベルから製品化を前向きに検討するという。審査員からは、「商品化に向けては、値段を伝えたときにバイバイとなってしまわないようによく練ってもらいたい」といった声もあがった。