今回からは久々に黒歴史編を再開する。テーマはグラフィックチップ(GPU)である。GPUはそもそもベンダーの数が多く、その一方で事業規模が小さい会社が多いこともあって、CPUほど黒歴史製品がない。というよりも、一発出してコケると事業部ごと消えたり、下手をすると会社そのものがなくなったりするからなかなか難しいものがある。そうは言っても、ネタがいろいろあるのは事実なので、このあたりをゆっくりひもといてゆきたいと思う。
初の製品で市場を席巻
3D専用チップVoodooがヒット
初の製品ながら、いきなり一世を風靡した「Voodoo Graphics」。写真は1998年発売のカノープス「PURE3D」
さてその栄えある(?)第1号の話を何にするかはだいぶ悩んだのだが、いにしえに一世を風靡した「3dfx」のグラフィックチップ「VSA-100」をご紹介したい。当初は3Dfx Interactiveという社名でスタートしたこのメーカーは、独立系のファブレスグラフィックチップベンダーとして1994年に創業された。創業メンバーはSGIからのスピンアウト組で、1995年のCOMDEXで最初の製品「Voodoo Graphics」を発表。1996年に発売を開始した。
当時はまだグラフィックといえば、2D性能がメインだった時期だ。3Dといえばおまけ程度の性能しかなかった時期に、3Dグラフィックしか表示できないグラフィックチップをリリースするというのは、なかなか勇気ある行動である。そのためVoodooを利用する場合は、別に2D表示を担当するグラフィックカードが必要となった。
具体的に言うと、図1のようにグラフィックカードとVoodoo Graphicsの2枚をPCIバスに装着。グラフィックカードの画面出力をいったんVoodoo Graphics側に入れて、Voodoo Grpahicsの出力をディスプレーにつなぐという形になる。Voodoo Graphics内部にはビデオスイッチが内蔵されており、通常は入力されたグラフィックカードの信号をそのまま出力側に通すが、Voodoo Graphicsチップが3D出力中はグラフィックカードの信号を切ってこちらを出力する。
この仕組みでは、原理上全画面表示しかできないが、当時はまだWindows環境でのゲームは非常に限られており、特に3Dゲームは無条件でDOS上で動く全画面表示が当たり前だったから、その点は特に問題にならなかった。
3DfxはVoodoo Graphicsの発売にあわせて、3D表示を行なう「Glide」というAPIライブラリも同時に発表する。当時3D表示を行なうためのAPIといえば、「GKS」(Graphical Kernel System)か「OpenGL」しか存在していなかった。そのうえ、どちらもワークステーションなどで3Dモデリングを作成する場合に使われていた規格であるため、3Dゲームの表示にはあまりに機能のミスマッチが多かった。しかもライブラリ自体がDOSで動かすには重過ぎるものだったから、Glideの登場は多くのゲームベンダーに歓迎された。そして多数のゲームが、ゲーム内部からGlideを呼ぶ方式で、Voodooに対応した。
そんなわけで、最初の製品でいきなりマーケットシェアを握った同社は、これに引き続き「Voodoo Rush」「Voodoo2」「Voodoo Banshee」といった製品をリリースし、1998年あたりまでは上り調子であった。1996年の時点では、マーケットシェアを握ったといってもマーケットそのものが非常に小さかったが、その後新製品の投入や対応ゲームの充実、競合メーカーの出現などでマーケットそのものが急速に拡大してゆき、結果として同社の売り上げも非常に大きなものになった。
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