エンコードを趣味としているユーザーをはじめとして、DivXといえばコーデックの代名詞というイメージが日本では根強いのではないだろうか。
ところが昨年来、DivX社のWebページはDivX対応機器の紹介やDivX形式で視聴できる映画などのコンテンツ紹介がメインになっている。PC用コーデックの印象が強かったユーザーの中には、久しぶりにWebページを訪れて面食らってしまった、という方もいるのでは。
実は、日本ではあまり紹介されて来なかったが、すでにDivXは単なるコーデックから、DivXをコアテクノロジーとした「DivXプラットフォーム」とでもいうべきものに進化しているのだ。
そのプラットフォームによって、PCとデジタルAV機器(+携帯電話や携帯情報端末)は完全に融合し、ユーザーはコーデックの細かな部分を意識せずに、どのデバイス(機器)からでもシンプルなインターフェイスで映像を楽しめる。この利点は大いに評価されており、すでに海外では映画配信などで成功を収めている。
かつてエンコードブームを生んだDivX社は設立以来10年を経て、ワールドワイドレベルの映像プラットフォーム会社になったと言っても過言ではないだろう。
ここ数年DivXは細々とアップデートされ続けていたが、エンコード主体のユーザーにはマイナーバージョンアップにしか見えなかった。しかしそのマイナーに見えていたバージョンアップは実のところデジタルビデオのプラットフォームとしての機能強化であり、その甲斐あってか現在ではデジタルAV機器の多くがDivXプラットフォームに賛同している。
果たしてDivXは今後どのような進化を遂げるのか。その概要をDivX社のプロダクト・マーケティング・マネージャーであるポーフィリオ・ランデロス氏に伺った。
デジタル家電に浸透したDivXの秘密
―― DivXが爆発的に普及した要因の1つにエンコードブームがあると思います。しかしここ数年はそのブームも落ち着きました。DivXのプラットフォーム化はそのようなユーザー層の変化に対応するためですか?
ランデロス マーケットをどのように見るかで変わりますが、弊社のダウンロード数を見る限り、市場規模は変わっていませんね。DivXは家電向けライセンス事業にも注力しています。DivXが再生できるDVDプレイヤーなどがそれです。
現在では、大手の家電量販店で売られている国内メーカーのデジタルAV機器も幅広くDivXが採用されているので、マーケット的には縮小どころか、右肩上がりの傾向なのです。
―― コアなPCユーザーから見ると、コーデックはDivXからMPEG-4 AVC/H.264にシフトしつつあり、全盛期のような盛り上がりではありません。それをカバーする形でデジタルAV機器のDivX対応を進めたというわけですか?
ランデロス コアなエンコードユーザーの皆さんは発言力も大きいですから、DivXユーザーが減っているように見えるかもしれませんね(笑)。しかし実際は、DivXも2009年からH.264を採用しています。また、DivXの使われ方やユーザー層は変わってきているんですよ。今は“知らないうちにDivXを使っているかもしれない家電のユーザー”も多くいらっしゃいます。