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【INTERVIEW】なぜ日本にGoogleが生まれないか? 東大の坂村教授が指摘する日本企業に欠如したもの

2005年12月05日 19時21分更新

文● 聞き手:遠藤諭、構成:編集部 小林久

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[遠藤] グローバル企業の定義は、いろいろあると思いますが、あるくくりで考えた場合、全世界の30%ぐらいがアメリカの企業だそうです。日本の企業は景気の低迷などで減ったけど、それでも15~20%ぐらいある。3番手はドイツですが、相当な開きがあります。つまり、グローバル企業と呼べる企業を輩出してる国は、現状ではアメリカと日本ぐらいしかない。なのに、戦う前からアジアの元気な企業に負けてるとか、根性のないことを言ってる。中国とか台湾で、現地の人の話を聞くと、やっぱりソニーや松下は凄いし、もっと純技術的で小規模な会社でもその評価は非常に高い。日本国内では、もうアジアには勝てないとか、5年後には逆転されるとか言ってるのにですよ。
[坂村] そういう「ひどい目にあってる」っていうのが日本じゃ受けるんですよ。何ていうかな、そういう国民性もあるよね。
日本の国民性
何かというと「ひどい目にあってる」って考えるのが日本人。しかし、危機感のあおりすぎもいい結果にはつながらない
[遠藤] ひどいって言っちゃったほうが、ニュースにもなりますしね。
[坂村] フォーチュンの表紙などには、成功した経営者が美女と高級車に囲まれている写真が載ったりもするけど、日本の経済誌じゃそれは考えられないでしょう。そういう感覚の違いがある。でもね、日本の会社に実力がないわけないんです。これからは中国やインドのマーケットが伸びると言われていますが、現状見たら日本は世界第2位の経済大国だし、マーケットだって中国よりはまだ大きいはずです。確かに将来どうなるかは分からないけど、将来のことばかり考えてもしょうがないですよ。
[遠藤] せっかくマーケットがあるのに、時代に即した分析ができてないってことですね。
[坂村] そうです。それから危機感のあおりすぎも良くないですね。常に危機意識を持って改善を心がけるのも大事だけど、プレッシャーで神経をくたびれさせている状態で創造力は発揮できないですよ。
[遠藤] 日本は1970年代のオイルショックや、1990年代始めのバブル崩壊などを経験したけど、基本的な商売の仕方は高度成長期から変わっていないと思います。速いもの、強いもの、高性能なものを量産して、モデルチェンジをどんどん繰り返す。とにかく目新しさで売る。企業はブランドが重要だと口を揃えるけど、本質的に変わっていないじゃないですか。でも、今の若い人たちはもっと堅実で、新製品なんか求めてないですよね。長く使えるとか、陳腐化しないとか、大量生産、大量消費とは本質的に異なるものを求めている。このへんが企業と一般のユーザーの間の大きな亀裂になっている。そういう溝を埋めるような活動が必要ですよね。
[坂村] まったくその通りです。
[遠藤] パソコン雑誌を見ると分かるけど、個人の消費行動は矛盾がなく安定していて、楽しめるものを購入しているだけなんですよ。でも企業は悩みまくっている。ものが売れないし、何を売ったらいいかも分からない。一方で音楽配信やプレーヤーの市場はアップルに取られ、検索はGoogle。Amazonは来年、全書籍の5%以上を売ることになるだろうと言われていて、これは、紀伊国屋チェーンよりも大きい数字である……と。日本の腰の弱いところがバンバンやられて、しかもその攻撃は加速している。
[坂村] そういった点を踏まえて、教育の部分では制度設計の重要さとかね。そういうことも教えるつもりなんですよ。
消費行動の変化
企業は“古い製品の陳腐化”と“モデルチェンジ”だけでは、消費者の心を捕まえられないことに気づくべき
[遠藤] それって企業のCIO(Chief Information officer:最高情報責任者)的な範疇なのか、それとも行政的な範疇になるのでしょうか。
[坂村] どっちもでしょね。1人じゃできないことを何人かの人間で分担するためには、制度を決めなければどうしようもなくなる。日本人は組織内ではなんとなく協調できてしまうから、逆にそういう組織間の“制度づくり”が不得意です。法律ひとつとっても、いま多くの時間が費やされているのは、今の法律を理解して、それと矛盾なくどう照らし合わせるかという部分ばかりでしょ? 一方で新しい法律とか制度を作るためには、何をやりたいかが明確にならないとダメなんですよね。
[遠藤] そろそろ時間ですね。最後にメッセージをいただきたいと思います。「来いよ!」でも何でもいいですから、ひとこと。
臆せず来い
臆せず「来いよ!」と坂村氏
[坂村] そうそう。まさに「来いよ!」って心境なんですよ(笑)。12月14日からの“TRONSHOW2006”の会場でコースの入試説明会(※1)を行ないますので、TRONSHOWにまず来てほしい。新コースに入学していただき、新しい世界を一緒に作っていこうという方にぜひ入学してほしい。おまちしております!!
[遠藤] 力強いコメントありがとうございました!

東京大学大学院 情報学環“総合分析情報学コース”説明会について

第2回説明会
日時:12月14日(水) 15:00~16:00
場所:東京国際フォーラム 地下2階“展示ホール” TRONSHOW2006 会場内シアター1

※イベントの詳細はTRONSHOW2006のウェブサイトでご確認いただけます。来場者事前登録が必要です。

第3回説明会
日時:12月18日(日) 14:00~15:00
場所:東京大学本郷キャンパス 大学院情報学環・学際情報学府アネックス2階教室

※申込方法や内容に関する問い合わせは下記のメールアドレスで受け付けるそうです。
  infoanalysis@iii.u-tokyo.ac.jp

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