Macはやっぱり「クリエイティブワーク」向き
最後にPCの総合性能を計測する「PC Mark Vantage」の結果を見てみよう。
項目 | Mac Pro | Core i7-965 | Phenom II X4 955 |
---|---|---|---|
PC Mark | 5580 | 5356 | 9284 |
Memories | 4016 | 4731 | 6295 |
TV and Movies | 4546 | 4728 | 5238 |
Gaming | 6428 | 7541 | 9444 |
Music | 3883 | 4420 | 9896 |
Communication | 5370 | 5092 | 7727 |
Productivity | 5658 | 4135 | 10488 |
HDD Test | 3939 | 3046 | 17201 |
Phenom II X4 955にSSDを使用しているのは,PC Mark Vantageがストレージデバイスの影響を大きく受けるという点を見て頂くため。本来はHDDを揃えるべきだが、Phenom II X4 955とCore i7-965ではCPUパフォーマンスに大きな開きがあるためハンデとしてSSDを採用したところ、筆者の予想以上にスコアが開いてしまったのも事実である。
実質、MacProとCore i7-965を比較するテストとして見ていただき、ストレージデバイスをSSDにするとかなり快適になる、ということを知っておいてほしい。
さて、MacProとCore i7-965を比べると、総合スコアでMac Proが上回っている。その要因は「Communication」と「Productivity」のスコアの高さだ。逆にグラフィックスカードの性能がモノを言う、「Memories」「TV and Movies」「Gaming」ではCore i7-965が大きく上回っている。
Communicationは、データの暗号化やデータの圧縮、Webページのレンダリング、データの暗号解読を行うもの。全般的にCPUパワーを使う負荷がかかっている。
Productivityは、テキスト編集やファイル検索、メール検索、ウェブページのレンダリングをしながらHDDからアプリケーションを読み出すというテストだ。これは、実際にウェブページを作成するときの作業をトレースしたもので、クリエイティブな作業をした場合の性能を表しているだろう。
つまり、Mac Proは、想定されているように「クリエイティブな作業」に強いことが分かる。もっとも、スコアは全体的にHDDの性能を強く受けるため、SSDなどを使ったPhenom II X4 955のほうが有利だ。逆を言えば、Mac ProにSSDを装着できれば、かなり高い性能が期待できるだろう。
Mac Proは「アリ」か「ナシ」か?
こうして見ると、Mac Proの実用性に疑問が出るかもしれないが、いずれもCPUパワーを引き出せないことが原因で高いスコアに結びついていないことが分かる。
ただ、ベンチマークに現れない部分もある。エンコードやトランスコードをしていても、OSそのものは非常に軽く、マウスポイントが飛んだりせずに「普通に」作業することが可能だ。例えば、映像の編集をしながら、バックグランドでMediaShow Espressoなどでトランスコードといった芸当も余裕でできてしまう。
このあたりを数値化するのは難しいが、PC Mark Vantageのスコアを見る限り、複数の作業を同時に行なう、あるいは複数のアプリケーションを起動して作業するような環境では、Dual Xeon E5520のパワーを活かせる可能性は高い。
一方でハイエンドゲーマーPCとしてMac Pro+ATI Radeon HD 4870を導入するのはあまり意味がないだろう。なぜなら、ゲームのほとんどは16CPUを想定しておらず、対応していても2CPUないし4CPUが関の山だからだ。とはいえ、ATI Radeon HD 4870なら、より快適になることは間違いなく、Windows環境をメインで使うならぜひとも導入しておきたい。
64bit環境がハイエンドPCでは定番になりそうなことを考えると、クリエイターにとってMac Proは、ハイエンドなWindows PCとして十分、検討に値するモデルだと筆者は考える。ただし、そのパワーを生かすアプリケーションを揃えることを考えると予算は+20万円くらいは必要になりそうだ。