ターボリナックス ジャパン(株)は、新製品「Turbolinux 7 Server」や、「PowerCockpit」を紹介する新製品セミナーを行なった。
ターボリナックスの戦略
最初に、11月1日付で同社社長に就任した矢野広一氏が登壇し、今後の戦略について語った。
ターボリナックス ジャパン(株)代表取締役社長 矢野広一氏 |
同氏は、Turbolinuxグループ全体として、これまでのディストリビューション企業としてのビジネスだけでなく、Linuxを基盤としたプロダクトを提供するという戦略を発表し、
- ディストリビューションの継続的開発による業界内でのリーダーシップ
- Linuxを基盤とした企業向け製品の販売による事業収入
を軸にした「両輪型のビジネスモデル」を紹介した。
また、これまで地域ごとに独自に行なってきた開発などの事業について、以下のように明確な役割分担を決めることで、効率的になったとした。
- ターボリナックス ジャパン(株)……Turbolinux WorkstationおよびTurbolinux Serverの開発
- 米Turbolinux……PowerCockpitなどのプロプライエタリな製品開発、IBMアーキテクチャ向けのディストリビューション開発
- 中国Turbolinux……アプライアンス製品向けアプリケーション
- 韓国Turbolinux……韓国SamsungとのアライアンスによるSI事業
ディストリビューション事業については、同社にとっては重要なビジネスベースであると同時に、技術的なリーダーシップを維持し、必要なときに必要なソリューションを提供するためにも、今後とも継続する方針を強調した。年内には、ワークステーション版、サーバ版に引き続き、IA-64やメインフレームLinuxなどのHPC向け製品が登場する予定だという。また、「PowerCockpit」などのプロプライエタリな製品群については、Linux上で動作することを前提に開発する一方、ほかのプラットフォームへの対応もあり得ることを示唆した。
最後に、研修や資格認定サービスについて触れ、「ユーザーが多ければ多いほど、その製品はいい製品であるといえる」とし、ユーザー教育の強化策として、2002年3月から、上級者向け資格「Turbo-CE Pro」を開始する計画を明らかにした。
Turbolinux 7 Server
引き続き、12月7日に発売される「Turbolinux 7 Server」について、同社マーケティング部プロダクトマネージャである久保和広氏が説明を行なった。
同社マーケティング部プロダクトマネージャ 久保和広氏 |
同氏によると、「Turbolinux 7 Server」は、IDCやASPなどのエンタープライズ分野向けだけでなく、Windowsや商用UNIXから移行するユーザー向けに提供するため、信頼性と同時に、Turbolinux 7 Workstationベースの使いやすいユーザーインターフェイスを採用しているという。
そのほか、
- SMP性能向上やジャーナルファイルシステムの安定性向上により、エンタープライズシステムに対応した
- メールサーバのSSL対応や、ファイル改ざん検知ソフト「Tripwire」オープンソース版をバンドルするなどセキュリティを強化した
- デスクトップにKDE 2.2.1を採用、システム管理ツール「Webmin」搭載など、ユーザビリティを向上した
といった製品の特徴について説明が行なわれた。
また、FHS(File Hierarchy Standard)2.2やLi18nux(Linux Internationalization Initiative)Basic Levelへの対応、中国での販売に対応して、2001年9月より使用が義務づけられた文字コード「GB18030」に準拠したことなどが説明された。
今後の製品ロードマップについては、2002年6月に、開発コード「Silverstone」(次期ワークステーション製品)を、10月に「Viper」(次期サーバ製品)をリリースすることを目標に開発を行なうという。バージョン番号など詳細については明らかにされなかった。
PowerCockpit
同社の今後のビジネスモデルで重要な位置を占める新製品「PowerCockpit」については、同社マーケティング部の土居史子氏がデモを交えて紹介した。
同社マーケティング部 土居史子氏 |
「PowerCockpit」は、Linuxシステムのイメージをリポジトリに保存し、複数のマシンに同じシステムを導入するというツール。一度サーバを設定すれば、まったく同じ構成のサーバを数時間で複数構築することが可能になり、人為的ミスの防止や作業時間の短縮によるコスト削減などが可能になる。システムのイメージは、ファイルセットとXMLメタデータ、論理ディスクレイアウト情報により構成される。ディスクレイアウト情報は物理的な情報ではないため、ハードディスクの容量が異なるマシンにも同じシステムを導入することが可能になっているほか、ハードウェアの違いについてはPowerCockpitが自動的に検出し、対応することができるという。
ほかにも、管理対象サーバをグルーピングし、一括してファイル送信やコマンドを実行することも可能で、特定のグループにたいして、RPMパッケージのソフトウェアをインストールすることもできる。実際の導入事例としては、米Egeneraのデータセンター向けソリューション「BladeFlame」システムとのバンドル提供により、データセンター内のサーバを短時間で構築したり、大学での教育用端末の管理などで利用されているといい、さらに社内システムの管理や、SIがハードウェアにシステムをプリインストールして提供する際などにも利用することができるという。
デモでは、実際にPowerCockpitに保存されているシステムイメージを3台のマシンに転送してサーバを構築し、さらにそれらのサーバに同時にファイル転送やコマンドの実行、RPMによるアップデートなどを行なった。
今回行なわれたデモのシステム構成。 |
システムを導入したいマシンを選んで、IPアドレスなどを設定し、導入したいシステムをリポジトリから選択して、 |
あとは導入ボタンを押すだけで、簡単にシステムを構成できる。 |
クラスタリングソリューション
最後に、同社テクニカルソリューション部の中村恵夫氏による既存のクラスタリング製品の紹介があった。
同社テクニカルソリューション部 中村恵夫氏 |
クラスタリングソリューションは、現在Turbolinuxグループ全体の売り上げの半分程度を占める、重要な製品として位置づけられている。
「Turbolinux Cluster Server 6」はTurbolinux 6.xなどで動作する、負荷分散型クラスタリングソフト。IPロードバランシングによる負荷分散を行なう。また、クラスタサーバを2重化することで、信頼性を高めることも可能になる。
また、「Turbolinux CLUSTERPRO Server 6 Lite」は、フェイルオーバークラスタリング用のソフトウェアで、2台のノード間でハードディスクをミラーリングし、一方のノードが停止した場合でももう一台のノードがサービスを継続する。
「Turbolinux CLUSTERPRO Server 6」は、負荷分散とフェイルオーバーを同時に行なうことができるクラスタリングソフト。共有ストレージを利用し、最大16ノードの構成が可能だ。
矢野新体制の下で新しいスタートを切ったターボリナックス ジャパン(株)。今回のセミナーで紹介された、「Turbolinux 7 Server」と「PowerCockpit」は、「両輪型のビジネスモデル」の今後を占う重要な製品となるだろうし、それだけに完成度の高い製品であることが期待されよう。