サーバーをItanium 2に変えざるを得なかったHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

文●大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

2019年12月09日 12時00分

搭載プロセッサーに悩まされ
Itanium 2への移行を余儀なくされた

前回の最後で、「Itanium 2でなければうまくいったんじゃないか」とは書いたが、ただこれは結果論でしかない。

McKinleyが出た当初と言えば、2002年頃になるわけだが、当時Itanium 2以外にマシなプロセッサーがあったのか? と言うとかなり怪しかったからだ。

インテルはPentium 4とXeonをメインに据えていたが、これがそのあと悲惨なことになったのはご存じの通り。後継のCoreプロセッサーについても、もちろん2Pくらいであれば十分であるが、コア数が増えると特にXeon向けはひどいことになり、PaxvilleだのGreencreekだのと失敗を重ねていた。

この連載では取り上げないが、そもそも製品化に失敗したWhitefieldという製品もある。つまるところ、Pentium 4/Core系でまともなマルチプロセッサーのサーバが構築可能になったのは、Nehalemが投入された2009年あたりからである。

「7年後にまともなプロセッサーが出てくるから、それまでItanium 2は待て」などと言われて待つ経営者はあまりいないだろう。

加えて言えば当時のPentium 4/Core系列は、RAS(Reliability/Availability/Serviceability)機能が貧弱というか、最小限でしかなかったため、これは、TandemのNon-stopはまだしもDECのAlpha Serverの後継としてはかなり厳しかった。

TandemのNon-stopにしても、もちろんRAS機能がそれなりに充実していれば、その方が稼働率を上げやすい。NonStop Himalaya Sに採用されていたMIPS R10000はそれなりにRAS機能が搭載されていたから、これと同等レベルのRAS機能は欲しかったのは当然だろう。

Core系列でこのあたりが充実し始めたのは、2014年に発表されたIvyBridgeベースの初代Xeon E7あたりからである。「12年待てばRASも充実したXeonが出てくるから、それまで待て」と言われたら、まぁ普通は断るだろう。

AMDはまだOpteronが出てくる前の段階で、こちらも安定したのは90nmに移行したRevision D以降になるので、2002年の段階でこれにかけるのはチャレンジもいいところだった。

MIPSはそもそもアウト、Alphaもアウトとなると、後はSPARCくらいしか選択肢がないが、Sun Microsystemsとまさ市場を争ってる段階でSPARCを採用するという選択肢は、技術的以前に戦略的にナシだろう。そういう意味ではこの時点でのItanium 2の選択は必然だったとも言える。その意味では時期が悪かった、ということだろうか。

Itaniumを実装した最初のモデル
HP i2000を2002年にリリース

以上のことから、2002年からHPのサーバーは順次Itanium 2ベースへの移行を開始した。最初にリリースされたのは、実はMercedこと初代Itaniumを実装した、HP i2000である。Mercedで製品出荷していいのか? という気もするのだが、実際にHPからニュースリリースも出ている。

HP i2000はデスクサイドワークステーションだった模様

CPUは1Pないし2PのMerced 733MHz/800MHzで、チップセットはインテルの82460GX。メモリーはMEC(memory Expansion Card)経由での接続で、1枚のMECにPC100 Registered 1GB SDRAMを8枚まで搭載可能、これを2枚装着できるため最大16GBの容量がサポートされた。

拡張スロットはAGP Pro×1、64bit/66MHz PCI(3.3V)×5、64bit/33MHz PCI(5V)×2という構成で、なんというかインテルのリファレンスデザインそのものといった構成である。

OSとしてはHP-UX 11i Version 1.5/1.6、Windows XP Professional 64bit Edition/Windows XP 64bit Edition Version 2003、Windows 2000 Server IA64 Edition β及びWindows Server 2003 Itanium-based Edition、FreeBSD/ia64、それとLinux for Itaniumが提供されるという構成であった。

価格は不明であるが、結構高価だった「らしい」。というのは、このマシンはPoC(Proof of Concept:コンセプト実証)用に広く使われたらしく、購入者はエンドユーザーというよりは、Itaniumへのアプリケーション移植などを考えるメーカーの開発者が主だったらしいからだ。

後述するOpenVMSの移植にも絡んで、当時COMPAQでOpenVMSをItaniumに移植する部隊では、さっそくこのHP i2000を購入して実際に移植作業に用いていた、という話が出ている。こうした用途であれば、性能が低かろうが価格が高かろうが構わない、ということであろう。

HP独自のZX1チップセットを採用した
HP zx2000/zx6000シリーズ

HP i2000の後継として、今度は900MHz動作のMckinleyを搭載した製品が2002年に投入されたHP zx2000/zx6000シリーズで、のちにMadison/Deerfieldを搭載したモデルも追加されている。

HP zx2000シリーズ。やや小さめのフルタワークラスになった
内部構造。MECは廃止されている

こちらの特徴は、HP独自のZX1チップセットを採用したことだ。まだ拡張バスはAGPおよびPCI/PCI-X対応であるが、メモリーはDDR SDRAMに対応。発表当時はまだ1GBまでの容量のDIMMしか存在していなかったので最大メモリー容量は4GBとやや減ったが、2GB DIMMが出てきたらこれを利用して最大8GBになるとされた。

ところでこのZX1チップセット、実はPA-RISCとItaniumの両対応になっており、実際2004年登場したHP 9000 rp3410(PA-8800×1)/rp3440(PA-8800 or PA-8900×1~2)はこのZX1チップセットを利用して構築されている。

なので技術的にはItaniumを搭載したHP 9000シリーズがこの時点で登場しても良いはずなのだが、HP 9000を名乗るItaniumマシンが登場するのはもっと後になる。

実を言えば、HP 9000 N-Classが最初のHP 9000系のItanium搭載製品となる予定だった。このN-Classに属するHP 9000 N4000そのものは1999年に投入されたが、当初は64bit版のPA-RISC 8500/8600/8700を1~8 CPU搭載するという構成であり、これに続いて最大2 CPUのItaniumを搭載するバージョンが追加されるはずだった。

そもそもN4000に採用されていたStretchというチップセットそのものはItanium Busに対応していた。このStretchはちょっと複雑な構成で、概略は下図のようになる。

Stretchの構成図

Preludeというのが中核となるメモリーコントローラー兼システムバスコントローラーで、4本のDDR-266メモリーコントローラーと2本のItanium Bus(各々133MHz/64bitで2.1GB/秒)を出す。

CPU自身はRunway BusというPA-RISCの独自Busを利用していたので、間にDEWと呼ばれるCPU Bridgeを挟み、これでRunway BusとItanium Busの相互変換を行なっていた。

ただプロトコル的にはこれでいいとしても、各々のDEWとCPUの間の帯域もやはり2.1GB/秒なので、明らかに帯域が足りてない気はするが、それはおいておく。

一方I/Oは、やはりItanium BusにIKEというI/Oコントローラーがぶら下がるが、このIKEからは266MB/sの帯域を持つI/Oリンクが12本出て、その先にElroy PCI Bridgeというブリッジチップを噛ますことでPCIなりPCI-Xが出るという構成になっている。

こういう構成であるから、Itaniumを使う場合はDEWを全部取り払い、直接Itaniumに接続するだけでいいはずである。最大2Pということなので、1つのPreludeから出る2本のItanium Busに、それぞれ1つのItaniumとIKEがぶら下がる構造を想定したと思われる。

「思われる」というのは、このItanium版のHP 9000 N4000は結局出荷されなかったためだ。理由は定かではない(なにしろ公式には一切発表がない)が、HP 9000対応ソフトウェアのItaniumへの移行準備が整わなかったとかそんな理由な気がする。そんなわけでItanium対応を名乗るHP 9000シリーズは、いきなりハイエンドのSuperdomeとなった。

縦置きにしてデスクサイドでも使えた
Integrityシリーズ

Superdomeは、HPのハイエンドサーバーシステムで、2000年にPA-RISCベースの製品がまず投入されている。実をいうと後述するIntegrityもハイエンドはSuperdomeに分類されているようで、外部からはすこしわかりにくい感じになっている。

だいぶ後になるが、2010年に第2世代となるSuperdome 2(正確にはIntegrity Superdome 2)が発表された記事があるが、もうこのあたりになるとHP 9000というブランドそのものがほぼIntegrityに統合されてしまった感がある。

要するにRISCベースのUNIXワークステーションという市場がx86+Linuxに飲み込まれた結果として、HP 9000のラインそのものが消えたのではないかと思う。

Superdomeの話は後でするとして、まずはIntegrityの方を。ワークステーション向けにHP i2000やzx2000/6000といった製品は出荷され始めたが、これはAlpha Workstationの代替にはなっても、TandemのNon-stop系列やDEC/COMPAQのAlpha Serverの後継としては不十分であった。

そこで既存の製品ラインとは別に、改めてItaniumベースのサーバーの構築を開始する。2003年9月に登場したのがIntegrity rx2600シリーズである。

Integrity、という名前はかつてTandemがUNIXベースのNonstop製品につけていたブランド名であるが、こちらのIntegrityシリーズはMIPSベースのもので、2002年にはR14000ベース、2004年にはR16000ベースの製品が投入されている。

Integrityシリーズ。2003年の時点では、同じなのは名前だけだったわけだ

Nonstop向けのIntegrityはこの後2005年に投入されるが、これと並行して同じIntegrityの名前を冠しつつ、まったく別のItaniumベースの製品が用意された形だ。

最初のIntegrity rx2600は、ベースとなるワークステーション向けであるHP zx6000にzx2000の拡張性を引き上げたような構造で、Madison/Deerfieldの2P構成ながらメモリーは最大12GB(1GB DIMMが利用可能になったら24GB)になっていた。

また当初から2Uラックサイズでの提供を前提にしており、必要ならこれを縦置きにしてデスクサイドで使うための台座も提供されていたが、基本的にはラックに収めるタイプの構成である。

機械的形状を別にすると、2P構成が可能なのがzx6000の最大の違い。それはともかく、2Uラックを90度回転して縦置きにするのはいいが、デスクサイドというにも奥行きがありすぎる気がする

Integrity rx2600はこのzx6000をベースにしつつ、若干CPUの動作周波数を引き上げた構成で提供された。対応するOSはおおむねzx6000に同じながら、さすがにWindows XPなどのサポートはなく、Windows Server 2003 64bitのみになった。また、このIntegrity rx2600ではOpenVMSのサポートが追加されている。(続く)

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