仕事が楽しい! 人生が楽しい! 奧山 睦氏が語るSEのためのキャリアデザイン 第6回
第6回 汎用性のある自分になろう! SEに必要とされる「コンピテンシー」とは何か?
2007年01月09日 00時00分更新
ここ近年、人事評価にコンピテンシーという言葉が使われるようになったのを知っていますか? コンピテンシーとは【高業績者に共通してみられる行動特性】のことを言います。社内で高い業績を上げている社員の専門技術・ノウハウ・基礎能力などを見極め、何がその人を「仕事のできる社員」にしているのかを分析してまとめられたものがその企業のコンピテンシーとなるのです。企業側は、この行動基準や評価基準を活用することにより、社員全体の行動の質を上げていこうと考えるのです。今回は、SEのキャリアデザインに必要なコンピテンシーについて一緒に考えていきたいと思います。
コンピテンシーの概念のルーツって?
もともとコンピテンシーの概念は、ハーバード大学の行動科学研究者であるD.C.マクレランド教授を中心としたグループが、米国務省から「学歴や知能レベルが同等の外交官(外務情報職員)が、なぜ開発途上国駐在期間に業績格差がつくのか?」という調査・研究の依頼を受け、「業績の高さと学歴や知能はさほど比例することなく、高業績者にはいくつか共通の行動特性がある」と回答したのが始まりであるとされています。 この調査結果によって、判明した行動特性は以下のようなものだったと言います。
- ・異文化に対する感受性が優れ、環境対応力が高い
- ・どんな相手に対しても人間性を尊重する
- ・自ら人的ネットワークを構築するのが上手い
これらの研究結果から、さらにマクレランド教授は、人の行動の目に見える部分である『スキル、知識、態度』に対しては、目には見えない『動機、価値観、行動特性、使命感』など潜在的な部分が大きく影響を与えていることに注目していきます。行動の目に見える部分は氷山の一角であり、実際に氷山を動かしているのはその水面下の大きな部分だという認識です。この考えは「氷山モデル」と呼ばれ、成果を上げる行動を評価する現在の人事システム構築のためのコンピテンシー理論の基準となったのです。
行動科学研究者D.C.マクレランド教授の氷山モデル |
なぜ、今コンピテンシーが注目されるのか?
さて、ここで現在コンピテンシーが注目される背景について考えていきたいと思います。
1つは企業の成果主義導入への転換があります。その最たるものが、連載第1回で触れ、現在社会的にも賛否両論を巻き起こしている【ホワイトカラー・エグゼンプション】です。人事評価での業績・成果のウェイトを高め、評価の客観性を保つには、「能力評価基準」(コンピテンシー)が必要になります。この評価基準は、「結果」と「プロセス」の関係性を明確にすることによって表れてきます。
2つ目は、現在の競争社会の中で、組織としての生産性を今までよりも高めていかないと企業の存在そのものが危うくなる時代になってきたということが大きいと思います。組織は業績を向上させるコンピテンシーを分析・整理し、社員に理解を求め、個々がそれを基に具体的な行動に移し、業績を上げていく努力を求められるようになってきたと言えるでしょう。
SEにもコンピテンシーが求められる
SEにとっては「知識やスキルだけあれば十分」と思うところがあるかもしれませんね。でも、専門的な知識やスキルがあっても、実際の仕事の場面で活躍できなければその能力が埋もれ、企業から評価される行動基準、評価基準から外れていってしまいます。
たとえば、ある仕事の中で「阻害要因」になっているものがあったとします。それを判断し、状況を変えようとするときに、独自の工夫やアプローチをしたことがあるでしょうか? 状況に従属した行動を取るだけなら簡単なことです。これに対し、状況を「変容」させる行動を取ることができるのが、コンピテンシー能力が高い人と言えるでしょう。
まず状況に簡単に従属しないというポリシーを持つこと。いままでやってきた仕事の進め方のみにとらわれるのではなく、今の状況を変えてしまおうという姿勢が大切です。また、自分の考えを社内はもちろんのこと、顧客にも自ら提案して成果につなげていくことが必要です。しかし、こうした姿勢を貫くことは、周囲からの反対やプレッシャーもあり、困難に直面する場面も多々あるかもしれません。けれどもその困難に直面したときに、切り抜けていく行動がとることができれば、大きな自信にもなり、次のステップにつながるきっかけにもなります。
SEには、まず知識・スキルが必要です。しかし、それだけではなくコンピテンシーを問われるのは、「一企業内ではなく世間で通用する汎用性のある自分」になるための、ひとつの目安にもなるのです。「知っている」だけでなく「できる」ために行動に移せること。これが大切です。
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