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仕事が楽しい! 人生が楽しい! 奧山 睦氏が語るSEのためのキャリアデザイン 第3回

第3回 新たな自分を発見しよう! SEが使えるカンタン心理学

2006年11月21日 00時00分更新

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仕事が楽しい! 人生が楽しい! 奧山 睦氏が語るSEのためのキャリアデザイン

みなさんは、「キャリアの棚卸し」という言葉を一度は聞いたことがあると思います。私は何をやってきて(実績)、何ができて(実力)、何がしたいのか(将来的な展望)。これらを洗い出すことをいいます。
ところが整理しようとすると、意外と自分自身のことについてはよく分からないという方が多いのではないでしょうか? 今回は簡単な心理学をもとにSEが自身の能力をどのように把握すべきかについて一緒に考えていきたいと思います。

「ジョハリの窓」で本当の自分を見つけよう

 心理学の世界では、自分の心の中には4つの窓があると捉えます。これを「ジョハリの窓」と言います。ジョハリの窓は、「自分自身や他人から見ると、自分はどんな人間か?」という観点から作られました。アメリカの心理学者、ジョセフ・ルフトとハリー・インガムが共同で考えた図であり、ふたりの名前の頭文字をとって「ジョハリの窓」と名づけられたのです。

ジョハリの窓では、自分自身のことを2つの軸で表現します。

軸1:自分自身が(知っている自分/知らない自分)
軸2:他人が(知っている自分/知らない自分)

それぞれの軸に2つのカテゴリがあるので、計4つのスペースの図になります。

ジョハリの窓, A:開放の窓, B:盲点の窓, C:秘密の窓, D:未知の窓

自分を成長させるのは、「開放の窓」を大きくすること

 ジョハリの窓で考えた場合、人間が「成長」する方法は2種類あると言われています。

  • 1.自己開示
  • 2.フィードバック

この2つは、「開放の窓」を押し広げる方向に働くと考えられています。1の自己開示とは、自分自身をオープンにすること。そうすると、自分が見ている自分と、他人が見ている自分の差が少なくなります。ジョハリの窓で考えると、「開放の窓」を「秘密の窓」の方向に押し広げることです。そうすると、「秘密の窓」で多くを占めていた部分が、「開放の窓」に変わっていき、より占有率が大きくなります。

 SEという職種にあてはめて考えてみると、自己開示とは、すなわち自分の実力や適性、実績などを十分理解して、それを他人にアピールしていくことです。たとえばプログラムならC言語やJAVA、Perl、PHPができて、OSはWindowsとUnix、Linuxが使える、金融機関のシステム構築の経験があるなど、自分のスキルや実績をどんどん洗い出していって、他人に伝えていけば、それが自分の評価につながり、次の仕事につながっていくのです。

自分を成長させるフィードバックの受け取り方

 2のフィードバックとは、自分自身について他人から意見をもらうこと。意見を受けとることで、自分自身を客観的に捉えることができ、成長することができます。ジョハリの窓で考えると「開放の窓」を「盲目の窓」の方向に押し広げる方法です。そうすると「盲目の窓」だった部分が小さくなり、「開放の窓」が大きくなっていきます。

 しかし、このフィードバックを素直に受け入れることは、意外に難しいかもしれません。たとえば、社内会議の際、上司に「君の声は聞き取りにくいので、何を言っているのかよく分からない」などと言われたとします。そうすると、ある種の反発を覚えたり、自信を喪失してしまうのではないでしょうか? そして、瞬間的に「聞きたくない!」と思ってしまうかもしれません。そんな時は、どう考えればいいでしょうか? 「このフィードバックは、私を成長させてくれるための糧である」と捉えてみましょう。「君の声は聞き取りにくいので、何を言っているのかよく分からない」という言葉をよくよく考えて見ると、「もっとはっきり話したほうが人に伝わりますよ」という逆の意味が隠されていたりします。真意をつかみとって、プラスにつなげること。これが成長のための第一歩です。

「未知の窓」を大きくしていくことで、潜在能力が開花する

「未知の窓」を大きくしていくことで、潜在能力が開花する

 また、Dの未知の窓――自分も他人も知らない自分の面は、潜在能力であると言われています。できると分かっていること(A・B・C)だけではなく、できないだろうと思っていても、新たなフィールドに挑戦していくことも、人間を成長させてくれます。もし人間にA(自分も他人も知っている自分)の面しかないとしたらどうなるでしょうか? いつまでも前と同じ自分、変わらない自分であり続けるしかなくなります。新たな自分を発見するためのアクションも起こさなくなります。

 今までの自分とは違う自分になることも成長のための大切な要素のひとつです。だから、自分にも他人にも、分からなかった面が現れてくること=「未知の窓」が大きくなっていくことも、成長につながるのです。

奥山 睦氏

著者 奥山 睦
財団法人社会経済生産性本部認定キャリア・コンサルタント、メンタルサポーター。
日本キャリアデザイン学会正会員。
専門的なITスキルとキャリア・カウンセリングを組み合わせて、キャリア系ポータルサイトの企画制作や執筆、講演などを行なう。
キャリア・コンサルタント有志によるキャリア開発専門サイト、「ウーマンズキャリアナビ」運営。


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