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秘密のベールに包まれた開発環境の姿が明らかに!?

XBOX開発システムの秘密に迫る

2001年04月04日 02時21分更新

文● 月刊アスキー 編集部 小西

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[アスキー編集部] 「XboxはPCでメジャーなDirectXでゲーム開発ができるので容易だ」とよく言われますが、日本のコンシューマゲームメーカーでPCでの開発経験があるところは少ないですよね。DirectXは日本市場でメリットとなるのでしょうか。
[吉岡] DirectXだからどうというわけではないのですが、すでに多くの開発者に使われているため利点も欠点も分かっているAPIセットは、現状ではDirectXとOpenGLくらいのものでしょう。我々はXboxをDirectXに合わせた設計にしていますので、パフォーマンス的にDirectXを使うのが一番有利なんです。確かに日本のコンシューマメーカーで、自社でPCゲームを開発して販売しているところはアメリカに比べれば少ない。しかしどこも基礎研究レベルではPCも研究していますし、今までいろいろなゲーム機で経験を積んでいらっしゃるので、DirectXだから何か問題になるということは考えにくいですね。メリットはあってもデメリットはないでしょう。
[アスキー編集部] 開発者がXboxやDirectXに慣れるための学習量は、ほかのゲーム機と比べると……。
[吉岡] 圧倒的に少ないと思います。またDirectXはXboxのハードウェアと非常に密着したものになっています。ですからDirectXを使うのが、XBoxを使う上で一番効率のいい方法なのです。
[アスキー編集部] DirectX以外にハードウェアを直接操作する方法は用意されるのですか。あるいはそのために必要な情報はデベロッパ側に提供されるのでしょうか。
[吉岡] PCのDirectXの場合、ハードウェアに密着したHAL(Hardware Abstraction Layer)とソフトウェアでエミュレーションするHEL(Hardware Emulation Layer)という2つの層がありました。これはハードウェアの違いをレイヤで隠してDirectXを動作させるための手法なのですが、Xboxの設計ではまったく逆の方法をとっています。まずDirectXというレイヤがあって、そこに向かってハードウェアを積み上げるように設計していく。ハードウェアそのものが、DirectXを実行させるために設計されているのです。だからXboxでDirectXを使うということは、ハードウェアを直叩きしているのと同じことなんです。

 たとえばDirectXのAPI上で規定されているレジスタは、XGPU上でハードウェアで実装される本物のレジスタになっています。100%ハードウェアで実装、とはいきませんでしたが。PCのDirectXではピクセルシェーダやバーテックスシェーダはソフトウェアでエミュレーションしている場合が多いのですが、Xboxでは100%ハードウェア上で実装されています。Xboxでは特にハードウェアを叩く必要はないんです。
[アスキー編集部] PS2の場合、当初は開発ソフトウェアがそろわなかったためハードウェア情報をとにかくデベロッパに流して、自前で解析・開発を進めさせたそうですね。
[吉岡] バランスの問題になるでしょうね。ゲームに対するユーザーの要求はうなぎ登りに上がっています。もちろん開発側が基礎技術まで自前で持ちたいというのは理解できますが、それを実現するのはコストや開発期間との兼ね合いで非常に難しくなっているのではないかなと思います。だからといって、PC上のAPIのように「すべてマイクロソフトにお任せください」というやり方では、よいゲームタイトルは出てこないかもしれない。そのバランスをどう取るかの解決の1つが、DirectXをハードウェアで実装してしまうという方法なのです。
[アスキー編集部] 逆にデベロッパ側から「XGPUに関する詳しい情報が欲しい」と要望があった場合はどうされます?
[吉岡] やみくもにハードウェアすべての情報を公開してくれ、という場合はお断りするかもしれません。将来の互換性維持のために支障になるかもしれませんから。しかしそれがXboxのゲームを良いものにするのに役に立つと判断されれば、あり得るかもしれません。
[アスキー編集部] 通常PCでのゲーム開発は、あまりターゲットハードを厳密には想定せずに行ないますね。いっぽうゲーム機はハードウェアの限界を見極めた上で開発を進める。PCのほうがハードウェアに対してアバウトな開発ができるわけですが、XboxでPC的なアバウトな開発はできるものでしょうか。
[吉岡] どこまで作り込むかによる話と思いますが……。まずPCとXboxを比べると、Xboxはハードが1種類しかないわけですから今までのゲーム機と同じです。ハードウェア性能の限界を見極めてソフトを設計していく。しかしXboxではDirectXを使っているおかげで、開発での試行錯誤にかかる時間が今までのゲーム機より圧倒的に早いのです。だからギリギリまでチューニングして開発を行なう場合は、Xboxは非常に効率がいい。

 たとえばですが、今までDirectX用に書かれた優れたグラフィックアルゴリズム(グラフィックエンジン)を移植しようとした場合、今までのゲーム機とは比較にならないほど簡単にできます。

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