アップル「WWDC 2014」の見どころは4つある

文●海上忍(@u_shinobu)

2014年05月30日 11時00分

本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。

UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。

6月2日から6日までの5日間、毎年恒例の開発者会議「WWDC 2014」(Worldwide Developers Conference)がサンフランシスコはモスコーンセンター・ウエストで開催される。注目の基調講演は日本時間の6月3日午前2時スタート、その内容はリアルタイムで全世界へ向けストリーミング配信される。

WWDC本来の役割は、開発者を対象に、近い将来リリースされる製品に関連した新しい開発技術を秘密保持契約のもと伝えることにある。しかし、Macworld Expoなど他社主催の展示会から撤退後は唯一のリアルなイベントとなったこと、CEOの基調講演で新製品が発表されることが恒例化していることから、一般ユーザーの注目度も高い。特にiPhoneが世界的にヒットしてからというもの、企業としてのAppleの動向を占う重要な材料と見なされている。

どのような新製品/サービスが発表されるかはフタが開かなければわからないが、必ずや言及されるであろうトピックはいくつかある。ここではそのうち4つをピックアップし、証拠を挙げつつ分析してみたい。

日本時間の6月3日午前2時から始まる基調講演で幕が開ける「WWDC 2014」

iOS 8を解くキーワードは「ハブ」

2007年以降、iPhoneに関連した新製品/サービスは必ず取りあげられている。ソフトウェア開発者を対象としたカンファレンスという本来の趣旨からしても、新しい「iOS」に関して言及がないとは考えにくい。そしておそらくは、メジャーアップデートとなる「iOS 8」が発表されることだろう。

iOS 8の詳細は不明だが、ハードウェア(iPhone)ともども「ライフログ」的機能が強化される方向にあることは確かだ。iPhone 5sから採用が始まったモーション処理用コプロセッサ「M7」は、iPad Airに搭載されたことからしても今後のiOSデバイスで定番化することは確実、健康管理ツールとしての存在感は増すはずだ。

M7は直接iOSデバイスを健康管理ツールとして利用するための機構だが、もうひとつの流れとして「ハブ化」がある。iPhone/iPadを親機とし、子機で取得した情報を集約するという役割だ。その子機に相当するApple製デバイスは今のところ存在しないが、Nikeのリストバンド型計測機器「フューエルバンド」の開発者を採用するなどの動きもあり、「iWatch」などと噂される新製品が発表される可能性は十分ある。

家電製品のハブになるという見立てもある。Appleはすでにホームオートメーション関連の特許を複数取得しており(US8577392 B1)、今回のWWDCでは照明のオン/オフやドアの施錠といった機器を管理するための技術が発表されるのではという報道もある。

Appleはホームオートメーション関連の特許を複数保有している。その「ハブ」としての役割がiOSデバイスに求められる?

Beats買収の目的は?

5月28日、噂されていた「Beats Music」と「Beats Electronics」2社の買収が正式に発表された。買収価格は30億ドル(約3000億円)、役職は明らかにされていないものの、共同創業者のJimmy Iovine氏とDr. DreもAppleに参加する。

「Beats Music」ロゴ

気になるのは、その目的だ。技術力がある企業をたくみに(外注先として)使うことに長けたAppleのこと、Beatsの音が欲しかったとは考えにくい。Beatsは定額配信(聴き放題)サービスで先行しているとはいえ、Appleが同様のサービスを提供していなかった理由は技術的問題にあるわけでもない。欲しかったのはむしろ「b」ロゴであり、音楽業界における影響力と見るべきだろう。

いずれにしても、音楽に関連した新製品・新サービスへのなんらかのコメントがあることは確実だ。Jimmy Iovine氏とDr. Dreが今後どのような役割を果たすのか、それがわかればBeats買収の背景が明らかになるに違いない。

「Beats Music」アプリ

iOSデバイスのハイレゾ対応はある?

iOSデバイスがハイレゾオーディオに対応する可能性も濃厚だ。iOS 7以降のiOSデバイスであれば、44.1kHz/16bit以上のデータ量を持つハイレゾ音源を再生できるが、「iPad Camera Connection Kit」を使うというトリッキーな方法に頼らなければならない(関連記事)。今後はそのような非公式の方法に頼らなくてもハイレゾ出力が可能になる、という観測があるのだ。

これまでiPhoneでハイレゾ再生(USB DACへの出力)をしようとすると、iPad Camera Connection Kitを使うというトリッキーな方法に頼らざるをえなかった

具体的な方法は不明だが、出力にはLightningコネクタを活用することも考えられる。Lightningにある表裏あわせ計4つある未使用の端子をオーディオ出力に利用できるとすれば、iOSデバイス単体でのハイレゾ再生が可能になるかもしれない。

そうだとすると、iTunes Storeでハイレゾ音源の取り扱いが始まる、という可能性も浮上してくる。iTunes Storeで扱う楽曲はAAC 256kbpsと、Music Unlimited(AAC 320kbps)など他の音楽配信サービスに比べ見劣りする状況が続いており、その対策としてハイレゾ配信が始まっても不思議はない。

進むOS Xの「ファームウェア化」

今回のWWDCで言及があることはほぼ確実と考えられるのが、OS Xの次バージョンだ。しかし、Mavericksに続きカリフォルニアの地名が与えられること、iOSとの融合を進める方向で変化すること、ソフト/サービスのiCloud依存度が増すこと……それら既定路線に大きな変更があるとは考えにくく、基調講演では比較的地味な印象を受けるのではなかろうか。

むしろ注目すべきは、OS Xの扱いかもしれない。OS XはSnow Leopard以降安価に提供されるようになり、Mavericksから実質的に無償化されたが、ベータ版は開発アカウント保有者に限り有償(7800円/年)で提供されてきた。それが先日発表された「OS X Beta Seed Program」では、Apple IDを持つユーザーであれば無償でベータ版を入手できるようになった(関連記事)。この一連の動きは、OS Xの「ファームウェア化」と無縁ではない。

ファームウェア化が進めば、iOSとの違いを強く意識することは少なくなるはず。現在は「Mac」と「iOS」で明確に分離されている開発リソースも、統合しやすくなることだろう。ベータ版の無償公開は、不具合の検出精度を高める狙いもあるだろうが、アーリーアダプタを取り込むにも効果的な手段だ。そのあたりの意図が、OS X関連の発表の際に透けて見えるかどうかにも注目したい。

Appleは4月に「OS X Beta Seed Program」を開始。アーリーアダプタに「これからのOS X」を浸透させるための手段か?


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