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43.6%の回答者は、1ヵ月の赤字額が100万円以上

157人の酪農家を対象とした調査、85%は赤字経営だと明らかに

2023年03月23日 14時00分更新

文● ASCII

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やめたいと考えることはあっても、やめられない

 このような経営状態が続けば、離農(※)を考える酪農家も増えてしまうかもしれない。実際に、調査では「酪農経営を続ける中で離農を考えた経験」について、24.8%が「よくある」と、33.1%が「たまにある」と回答。本調査の範囲では、58.0%もの酪農家が離農を考えているか、考えたことがあるということになる。

※農業の仕事に従事する人が、農業をやめたり他の職種に就いたりすること

 一方で、「酪農経営を続けている理由」という質問では、「自分自身・家族の生活を維持するため(85.4%)」「借金を返済するため(64.3%)」「日本の食の基盤を維持するため(50.3%)」「飼育している牛に愛着があるから(50.3%)」といった回答が多く見られた。

 「やめたいと考えることもあるが、複数の理由からやめるわけにもいかない」という、悩ましい状況に置かれている酪農家が多くいることがうかがえる結果だ。

国内の酪農家を守るために、消費者ができることは?

 この状況を、専門家はどう見るか。公益財団法人 日本農業研究所所属で経済学博士の矢坂雅充研究員は、以下のようにコメントしている。

公益財団法人 日本農業研究所所属 経済学博士 矢坂雅充研究員

「食料に関する安全保障という側面から考えると、世界の牛乳・乳製品はほとんどが自国で消費されており、輸出に回る量は多くありません。つまり日本が今後長く、安定的に輸入していけるという確証はありません。日本の酪農を今後も維持していくためには、一定の酪農生産規模を確保するという長期ビジョンを持った農業政策がますます重要になってきます。また、酪農乳業界だけでなく、流通業者や消費者自身なども、日本の酪農を維持していこうという意識を持つことが必要です」

酪農経営継続のために望むこと

 調査では、今後の酪農経営継続にあたって、酪農家が望む取り組みについても調べている。回答が集中したのは「飼料価格の抑制(91.7%)」や「生乳販売価格の上昇(89.2%)」「子牛販売価格の上昇(77.7%)」といった項目。大規模で長期的な改善としては、国家レベルでこうした施策に取り組んでいくしかない部分もあるのかもしれない。ただ、「新鮮でおいしい酪農品を気軽に楽しめる日本」を維持するためには、私たち消費者にも心掛けられることがあるはずだ。

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