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CRISPR-Cas3が狙ったDNAを切断する仕組み解明、応用へ前進

2022年08月31日 06時46分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学、理化学研究所、金沢大学の共同研究チームは、ゲノム編集技術である「クリスパー・キャス3(CRISPR-Cas3)」が狙ったゲノム配列を認識して二本鎖DNAを切断する仕組みを、世界で初めて明らかにした。研究チームによると、CRISPR-Cas3は、広く使われているCRISPR-Cas9のように二本鎖DNAを同時に切る方法とは異なり、二本鎖DNAをほどいて片方の鎖を手繰り寄せながら、一本鎖DNAをそれぞれ別々に切ることで、大きなDNA断片を切断しているという。

東京大学、理化学研究所、金沢大学の共同研究チームは、ゲノム編集技術である「クリスパー・キャス3(CRISPR-Cas3)」が狙ったゲノム配列を認識して二本鎖DNAを切断する仕組みを、世界で初めて明らかにした。研究チームによると、CRISPR-Cas3は、広く使われているCRISPR-Cas9のように二本鎖DNAを同時に切る方法とは異なり、二本鎖DNAをほどいて片方の鎖を手繰り寄せながら、一本鎖DNAをそれぞれ別々に切ることで、大きなDNA断片を切断しているという。 研究チームは、CRISPR-Cas3システムを実験室で再構築して特性を解析。同システムによって、狙った配列周辺の一本鎖DNAが非特異的に切断されることを明らかにした。さらに、同システムの持つATP依存性ヘリカーゼドメイン(DNAの二重らせんを一本にほどく部分)によって一本鎖DNAが手繰り寄せられることで、標的部位の上流側で一本鎖DNAの切断が繰り返され、二本鎖切断が導入されることを見い出した。 同チームはまた、金沢大学が開発した顕微鏡技術「高速原子間力顕微鏡(高速AFM)」を用いて、CRISPR-Cas3システムのDNA配列の認識から切断までの一連の様子の動画撮影にも成功した。 日本発の新しいゲノム編集技術であるCRISPR-Cas3は、CRISPR-Cas9とは異なり、ゲノムを大きく削る特徴を持ち、認識標的配列が長いためオフターゲット(標的としない部位)への影響も低いと考えられている。安全性が高く、確実に遺伝子を破壊できるゲノム編集技術として、創薬や遺伝子治療などへの医療利用や、農水産物の品種改良といった産業利用などが期待されている。

(中條)

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