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不整脈の治療薬開発に活路、イオン経路の仕組み解明=京大・順大

2022年05月25日 06時35分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学と順天堂大学の共同研究チームは、最先端の「クライオ電子顕微鏡による単粒子解析」と「定量的な機能解析」を組み合わせることにより、心臓の超巨大カルシウムイオンチャネルである「2型リアノジン受容体(RyR2)」が開口する分子メカニズムを明らかにした。不整脈疾患に対する新しい診断法、治療薬や予防薬の開発への応用が期待される成果だ。 心筋の筋小胞体に局在する2型リアノジン受容体(RyR2)は、心収縮の引き金となるカルシウムイオンを筋小胞体から放出するイオンチャネルであり、その遺伝子変異がさまざまな不整脈疾患の原因となることが知られている。しかし、「カルシウムイオンのような小さな分子が、一体どのようにして自身の6万倍も大きな超巨大分子RyR2を制御しイオンを通す穴を開くのか?」という仕組みは分かっていなかった。 研究グループは、ヒト由来の培養細胞を用いて2型リアノジン受容体(RyR2)を大量に発現させ、その標本をクライオ電子顕微鏡で解析することにより、RyR2の閉じた状態(カルシウムイオン無し)と開いた状態(カルシウムイオン有り)の構造を、3.2オングストローム(1オングストロームは1ミリメートルの1000万分の1)の分解能で決定することに成功。極小分子であるカルシウムイオンが「てこ」と「ドミノ倒し」を巧みに組み合わせ、自身の約6万倍もの大きさのRyR2のイオンの通り道を開く仕組みを明らかにした。 RyR2の遺伝子変異を原因とする不整脈疾患に対して、根本的な治療薬はこれまでに存在しなかった。今回の研究により、機能欠損型には「ドミノ倒し」を生じやすくする化合物を、機能亢進型には「ドミノ倒し」を弱める化合物を設計すればよいことが明らかとなったという。研究成果は、2022年5月20日、科学雑誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」にオンライン掲載された。

(中條)

5月25日16時55分更新:掲載当初、京都大学と東京大学の共同研究としていましたが、京都大学と順天堂大学の誤りでした。訂正してお詫びいたします。タイトルも変更しました。

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