一気通貫のデジタルサービスの提供へ
そして、サイボウズとの提携、PFUの子会社化によって、リコーは、デジタルサービスを一気通貫で提供できる体制を整えることができる。
リコーの山下社長は、次のような例をあげる。
たとえば、手書きの契約書や納品書を起点としたワークフローを構築する場合、多様なサイズや紙種を、一度に正確に読み取ることのできるPFUのイメージスキャナーで、紙の情報をデータ化。納品書や契約書データの作成、ワークフローによる社内承認、契約書ファイルの作成およびアップロードといった業務プロセスにおいては、リコーブランド版kintoneで、ローコード・ノーコードツールとしての特徴を生かして、現場の社員が構築したシステムを運用。これを社内の購買システムなどと連携したり、納品書の自動保存をDocuWareと連携させたり、より複雑な業務はAxon Ivyによる自動化を行い、これと連携させたりできる。これらをRSIプラットフォーム上で統合し、デジタルサービスとして稼働させることができるというわけだ。
DocuWareは2019年7月に、Axon Ivyは2022年2月に、それぞれリコーが買収した企業であり、まさにデジタルサービスの実現に向けたピースがひとつずつ揃ってきたことを裏づける。そうした流れを捉えると、今回の2つの発表は、リコーのデジタルサービスの強化において、重要な発表であることがわかる。
リコーでは、ワークフローのデジタル化において、2025年度に500億円のビジネス創出を計画しているほか、グローバルのITサポート&サービスの事業規模を、2025年度に2000 億円規模に拡大する計画を打ち出しており、ここでも、PFUの子会社化、サイボウズとの連携が重要な意味を持つ。
リコーは、OAメーカーから脱却し、デジタルサービスの会社へと変貌することを目指している。
この言葉において、「OAメーカーから脱却し」という「前の句」があることは、実は重要な意味がある。それは、OA(オフィスオートメーション)という言葉は、1977年に初めてリコーが提唱した言葉であり、言い換えれば、リコー自らがその言葉を捨て、新たな企業に生まれ変わるという意思を込めているからだ。だからこそ、あえて、「OAメーカーから脱却し」という言葉をつけているのだろう。
リコーは、創立100周年となる2036年に向けたビジョンとして「“はたらく”に歓びを」を掲げている。「人がより人間的な創造性のある仕事に注力し、はたらく歓びを支える企業になることを目指す」という。
2022年4月の2つの発表は、その実現の加速に向けた大きな転換点になりそうだ。
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