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業務を変えるkintoneユーザー事例 第132回

慣れている不便さにあえてメスを入れる強引さも

問い合わせ対応、コスト管理、売上予測まで ここまでできる飲食業でのkintone活用

2022年05月16日 10時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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 「kintone hive fukuoka 2022」がZepp福岡で開催された。kintone hiveはkintoneのユーザー事例を共有しあうイベントで、優勝した企業は「kintone AWARD」に進出できる。2番目に登壇したのはIMD Allianceの大峯幸雄氏で、「kintoneを活用した飲食業の業務改善とコストの適正化」というテーマでプレゼンしてくれた。

IMD Alliance 大峯幸雄氏

シンプルながら効果が高かった問い合わせ先一覧アプリ

 IMD Allianceは2010年に設立され、和洋中のレストランからカフェ系の店舗まで12店舗と仕出し弁当を販売する3店舗の事業を手がけている飲食企業だ。大峯氏は2020年8月に入社し、社内DXの推進を担当している。

 入社当時の課題は大きく4つあった。売り上げ報告がフリーテキストでチャットで送信していたり、業務では紙が根付いており、業務の属人化や情報の散在など、よく目にする課題だ。もちろん、2020年なので飲食業界にとって一番インパクトが大きかったのはコロナ禍だ。そのため、ウィズコロナという前提で、意識の改革とコストの適正化を行なった。

「飲食業界の原価は食材と人件費、2つ合わせて60%以下が理想とされています。たとえば、年間10億円の売り上げがあっても、原価率の1%にこだわることで、年間に残る利益がだいぶ変わります。利益率の低い業界だからこそ、コストにこだわって活動しようという目標がありました」(大峯氏)

大峯氏が入社した当時の課題

 当初はkintoneで何ができるのか、何をしていいのかよくわかっていなかったのだが、事務所でよく見る光景がヒントになって最初のアプリを作成することとなった。具体的には、各店舗から事務所によく電話がかかってきたのだ。たとえば、トイレが壊れたと問い合わせが来たら、管理部は連絡先を調べて対応してくれる会社を教えていた。しかし、これがお互いにとってストレスとなっていたのだ。

 店舗は営業に集中したい。管理部門は店舗のことは店舗で解決してよ、と考えていた。そこで大峯氏は店舗でインシデントが起きた時に、問い合わせ先を一覧で表示するアプリを作った。とてもシンプルなアプリだが、それでも効果は大きかった。このような問い合わせが管理部へ寄せられることがなくなり、店舗が自分たちで解決できるようなったのだ。

「こういった目に見えない業務、売上報告とか稟議システムとか、受発送管理のようなものを全部kintoneに移していきました」(大峯氏)

 これらの課題は約半年から8ヵ月かけてkintoneを導入することで、解決が進んだという。

店舗からの問い合わせが課題になっていた

連絡先アプリを作成

原価率予測の乖離の低減や、スタッフの効率的なシフトにkintoneを活用

「当社は、歩留まりという考え方にこだわっています。歩留まりとは、玉ねぎにを実際に使う時には皮を取るので、100gのものが90gになります。この90gになった歩留まり単価を使って、使用量をかけて原価率を求めています」(大峯氏)

 弁当の原価率は35~45%が目安とのこと。同社も40%未満を前提に商品開発をしている。しかし、実際に売ったところ、タイムセールスで割引で販売したりとか、売れ残って破棄したりと、原価率が想定通りになっていない、もしくはわからない、という状態だったそう。

 そこでコストを確認するアプリを作成した。スタッフには前日に残った弁当の数、仕入れた数、割引で売れた数、定価で売れた数を入力してもらう。これで、理論原価と実質原価がわかり、原価率の乖離を確認できるようになった。

 何が売れたのかを記録していくと売れ筋の商品がわかるようになった。さらにはリアルタイムな評価により、的確な仕入れとスピーディーな商品開発もできるようになった。この仕組みのおかげで、最大20%乖離していた原価率を5%以内に抑えられるようになり、月間約120万円の利益回復のきっかけになったという。

売上は管理できるが原価率は管理できていなかった

 飲食業の人件費の比率は売り上げに対して30%が目安となっている。たとえば50万円の売り上げで30万円の人件費をかけると過剰投資だし、売り上げは立っているのに、それに対して人のリソースを割り当てられてないとサービス品質の劣化が考えられ、望ましくない。

 大峯氏はつねに望ましい状態にするため、売り上げを予測して、そのために必要なシフトを組んで、当日を迎える、とシンプルな3点に注力した。

 まずは、店ごとに閑散/低/中/高/繁忙といった5パターンの売上レベルを設定し、シフトを作成。その上で、営業日の売上を予測し、それにあったシフトを作る。その後、管理側がExcelのフォーキャスト関数やトレンド関数を駆使して売上を予測する。この予測が合っていればよし、アンマッチだとシフトの組み替えを指示するという。そして、営業日を迎え、翌日にモニタリングするというフローをkintoneで行なった。

売上予測を5段階設定し、それぞれに最適化したシフトを作成した

 博多廊の3月31日木曜日のシフトは中の売り上げ予測とシフトを組んでいる。

 この売上予測と振り返りは毎日行なっているそう。月ごとに確認する場合は、数値がずれているときに原因がわからない。毎日確認することで原因がわかるようにして、一つ一つ是正していく取り組みを行なっているのだ。

「定性的な視点で見ると、管理部門はこれまで店舗がどういったシフト体制を組んでいたのかがわかっていませんでした。それを振り返ることで、適切な店舗運営を考える貴重な機会になったと思います。実はフォーキャストが外れていたら破綻する考え方なんですが、定量的な評価で見ると売り上げ予測は97%当たってます。ここが当たっていれば、人件費と総労働時間もほぼ100%に近い数字になります。本当に必要な人員コントロールができるようになってきたという評価が得られました」(大峯氏)

ときには「強引にkintoneを使って」という現場へのメスも

 最後に、同社で行なっているkintone活用の工夫を3つ紹介してくれた。まずは、ポータル直下のお知らせにアプリのショートカットを並べた。アプリを作ると右側に並ぶが、そこから探すのは手間がかかる。そこで、ポータル画面をランチャーのように使えるようにしたのだ。

アプリのショートカットをトップに並べた

 2つ目は、計算式の見える化。Excelでは計算式を簡単に見られるが、kintoneでは入力時にはわからない。そこで、編集画面に数式や項目の説明を表示するようにしたのだ。さらに、スタッフが迷いそうな操作には、すぐ近くにマニュアルへのリンクを張っている。ユーザーが迷わず使えるように工夫しているのだ。

 3つ目は、慣れている不便さには強引にメスを入れているという。新しい何かを覚えるくらいなら、今の不便さを続けたい、という考える人は一定数いる。そういった人たちには、「強引にkintoneを使って」とメスを入れることもたまには重要だという。

慣れている不便さにメスを入れてkintoneを浸透させた

「1年半を通して紙業務からの脱却や業務・情報の一元化、数値の見える化とPDCAサイクルを回すことができました。やれることが増えてくると、もっとやりたいことが増えてきて、顧客管理とか予実の見える化、フォーキャストとの連動にも取り組みたいと思っています」と大峯氏。

 なお、今回の話は、なんとkintoneのライトコースで行なっていたとのこと。しかし、今後いろいろと活用を広げていくにあたりカスタマイズが必要なので、2022年1月にスタンダートコースに切り替えたとのこと。今後のIMD Allianceのkintone活用も楽しみだ。

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