業務を変えるkintoneユーザー事例 第121回
社内に浸透させるならゆるいルール作りと連携サービスの活用が効果的
利用7年目に突入した星野リゾート、愛されるkitnoneのはぐくみ方を語る
2021年10月14日 09時00分更新
他社事例を参考にkintone開発の環境を整備
たとえば、アプリの作成者申請に関しては、アプリの名前や担当者、用途をしっかり書いてもらうことにした。申請をチェックすることで、似たような名前のアプリが乱立しないような仕組みを作ったのだ。また、申請アプリに書いた内容はアプリアクションで棚卸しアプリに飛ばし、担当者や利用状況を管理することにした。定期的に「kMailer」(トヨクモ)で利用状況を伺うようなメールを送り、放置アプリを少なくする取り組みを行なったのだ。
「kintoneをもっと活用しようと思ったときに、コーディングでカスタマイズすることもできるのですが、エンジニアではないスタッフにももっと活用してもらうために、プラグインを使いました」(小竹氏)
さらに日本語で条件と動作を書くとJavaScriptファイルに変換してくれる「gusuku Customine」(アールスリーインスティテュート)や、kintoneの中のデータ連係を容易にできる「krewData」(グレープシティ)、ワークフローの管理をより強力にする「コラボフロー」(コラボスタイル)などを活用し、スタッフ達がやりたいと思った時に、やりたいことをできる仕組みを整えた。
「そうするうちに、皆さんがkintoneを楽しくしようとか、愛そうとか、わくわくするような気持ちがたくさん伝わってきました。私たちはその気持ちをkintoneに取り入れました」(小竹氏)
ワークフロー申請が完了したときに、「ありがとうボタン」が現れるようにしたのだ。ユーザーがボタンを押すと、処理を担当してくれたスタッフにありがとうという通知が届く単純な仕組みだ。設置してから半年で50件のありがとうが集まったそう。こういった業務には関係ないが、気持ちが温かくなるようなカスタマイズを「ほっこりカスタマイズ」と呼んで、積極的に取り入れているという。
社内にも変化が起きた。星野リゾートでは、スタッフ自身が講師となる社内ビジネススクール「麓村(ろくそん)Market」という取り組みを行なっている。その中で、kintone講座の開講をリクエストされたというのだ。
早速、小竹氏が手を上げて講師となり、オンライン開催を実施したそう。初回は初級編だったが、反響を受けて中級編や上級編も継続開催する予定だという。
「kintoneの畑が育つ環境を振り返ると、kintoneは自由なぶん、難しいところもありました。何もない状態から発展させるのは難しいですし、だからといって整然と管理するのも合いません。そこで、守るべき価値観だけを決めて線引きし、それ以外は自由にやってよいよとしました。畑ですが、柵ではなくガードレールくらいでkintoneの利用促進をしています」(小竹氏)
kintoneを運用するための4つのルール
小竹氏たちが作ったルールは4つ。1つ目が、kintoneはチームで作ってみんなの意見を取り入れてくださいということ。2つ目が情報の閲覧範囲で、見えてはいけない情報は見えない状態にすることと。3つ目が、一番守らなくてはいけない顧客情報は厳密に管理して情報システム側でもチェックを行なうこと。4つ目はスタッフや業務が変ったときも、継続的にアップデートして使い続けられるシステムを作ろうということ。このくらいゆるい方がkintoneのポテンシャルを発揮できるという。
「このようにして私たちは7年間、試行錯誤しながらkintoneアプリをたくさん作ってきました。そして、その先にやりたいことがあります。それは「全スタッフIT人材化」です。スタッフが3000名ほどおりますので、とても大きな目標ですが、着実に取り組みを進めています」(小竹氏)
もちろん、全員がエンジニアを目指すということではない。接客業をしていると、「あと5分あったら」「あと1人いたら」、「あのお客さまにもうちょっとちゃんと向き合えるのに」という悔しい場面が起きる。業務改善により、そんな「たられば」をなくして、新しい価値を生み出していきたいという。
「私たちが生み出したい価値は『お客さまの感動』です。お客さまの感動も業務の改善も、業務に一番近いスタッフから生まれます。そのため、私たちはkintoneで全スタッフIT人材化を目指しているのです。そして、システムの力を借りるときに、普段接客に忙しいスタッフが使えるシステムってなんだろうと思った時に、直感的に操作できるkintoneはとても大きな武器だと思っています」と小竹氏は締めた。
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