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製造、製薬、商社、運送など、国内9社の中堅企業が自社DXプロジェクトの進捗や成果を披露

デルとNAISTが「中堅企業DX支援プログラム」中間報告会を開催

2021年02月04日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 デル・テクノロジーズは2021年2月3日、国内中堅企業(従業員数100~1000名)のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けた総合支援プログラム「中堅企業DXアクセラレーションプログラム」の第1回中間報告会を、オンラインで開催した。

 このプログラムは1年前の2020年2月から、同社と奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)が共同で開催しているもの。最新技術を研究しているNAIST研究員が講師となり、AIやブロックチェーン、IoTなどDX関連技術の概要や活用方法を学ぶ講座や、プログラミング技術の習得を支援するDXエンジニア養成講座を通じて、中堅企業のDXを推進している。

「中堅企業DXアクセラレーションプログラム」の概要

デル・テクノロジーズ 上席執行役員 広域営業統括本部長の瀧谷貴行氏、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)博士研究員の平尾俊貴氏

 デル・テクノロジーズ 上席執行役員 広域営業統括本部長の瀧谷貴行氏はまず、同プログラムを開始した背景を説明した。同本部が毎年実施している「中堅企業IT投資動向調査」の結果からは、中堅企業がDXを実現していくうえで「何から始めればよいのかわからない」「情報交換する場がない」「技術を学ぶ場がない」「エンジニアリングリソースが確保できない」といった障壁があることがわかっている。「こうした課題を解決するために、NAISTと共に中堅企業DXアクセラレーションプログラムを開始した」(瀧谷氏)。

 2020年10月7日に開催された本選においては、参加14社のうち9社が上位入賞した。瀧谷氏は、入賞した9社は「先進的、効果的、実現可能なプランを提示した」と述べる。本選後、11月にかけてキックオフミーティングを行ったのち、毎月定例で進捗報告会を実施してきた。さらに現状分析、プロトタイプ実装に向けた要件定義などを行い、“ゴール”に向けた取り組みを進めていく。

同プロジェクトのスケジュールイメージ

幅広い業種の中堅企業が取り組みを披露

 今回の報告会では、上位入賞した9社(アズワン、イグス、ヴィッツ、ピーチ・ジョン、平井精密工業、水上、ユーネットランス、レニアス、CDISC-SDTM Blockchain Team)から、各社が取り組むDXプロジェクトの概要や進捗状況が説明された。

 産業機器や病院用品などの総合商社であるアズワンでは「適正在庫AIモデル」を開発している。受注予測モデルを精緻化するうえでは、メンターからの指示により、マルコフ連鎖モデルの採用や主成分分析による複合変数作成を実施。各変数の推移や受注量推移を自動で比較しながら、有用な変数をAIが自動で見い出し、変数と受注量との関連性調査AIモデルを作成することを目指しているという。

アズワンにおける「適正在庫AIモデル」開発の取り組み概要

 産業用樹脂製品メーカーのイグスでは、Pythonを使って「AIによるデータ精度向上および災害対策サービス」を自社開発。変換CSVとのマッチング後に、更新SQLを自動生成することに取り組んでおり、「新たな費用をかけずに開発環境を構築している」という。

 組込みソフトウェアやITソリューションの開発会社、ヴィッツでは、次世代工場の安全化と効率化を実現するためのIoT/AIソリューションを開発する「SF Twin WANDプロジェクト」を実施。生産設備の課題をデジタルツインで解決することを目的とし、人とロボットが、安全に、生産的に活動できる生産設備を実現することを目指している。2021年1月にはロボットの制御シナリオなどを実装、3月末までに“仮想工場”を稼働させる予定だという。

 下着通販会社のピーチ・ジョンは「社内AIポータル」を開発し、購買情報や在庫情報、 ECサイトの検索履歴といったデータ活用に取り組む。受注予測、顧客行動分析、市場分析など、社員が意思決定に活用できる環境を目指しており、メンターの提案により「10分割交差検証(10 fold cross validation)」などの分析手法を用いているという。

ピーチ・ジョンが取り組む「社内AIポータル」の概要

 金属エッチング加工の平井精密工業では「歩留まり向上のための製造工程AI 解析サービス」の開発に取り組んでいる。IoTを活用して製造条件やパラメータなどの情報を自動収集し、歩留まり向上に寄与する条件を導き出すことで、効率化につなげていくという。

 住宅部品メーカーの水上においては「音声マイニングによる受注電話応対の自動化」に取り組んでおり、「Google Speech to text」や「IBM Watson Text to Speech」など、さまざまな音声認識サービスの精度を比較検証しているところだという。

 貨物運送業のユーネットランスでは「最適運行ダイヤ作成システム」を開発。時間条件やエリア条件、荷量(最適パレタイズ・車載)情報などをもとにダイヤに関する情報を蓄積。AIによって最適なトラック運行ダイヤを提示することを目指している。

ユーネットランスは「最適運行ダイヤ作成システム」に取り組む

 樹脂/アルミ加工品メーカーのレニアスは、「工程の並び替えおよび需要予測」に取り組む。当初はAI技術やPythonなどで試行錯誤していたが、現在は「Filemaker」を活用して工程全体の最適化に取り組んでいるという。

 製薬会社やCROの合同チームであるCDISC-SDTM Blockchain Teamでは、データベース化されている各種臨床データの共有を活発化させるため、データのアクセス権ややり取りの記録、各プロセスをブロックチェーンで管理。スマートコントラクトによってデータフローの分岐、匿名化処理ロジックを規定して、プロセスの共通化を図っていくことに取り組んでいる。

 受賞企業各社からは「NAISTのメンターの支援がなければここまでたどり着いていなかった」「普段の業務とは違った体験ができ、ありがたく思っている」「メンターから紹介された論文をもとに実装や検証を行っている」などの声が上がっていた。

 奈良先端科学技術大学院大学 博士研究員の平尾俊貴氏は、「(キックオフ以後の)この3カ月間で素晴らしい進展がある。中には発表時とプロジェクトの方針が異なっている企業もあるが、それも良いことだと思っている」と述べた。

 「AIの活用は手段であり、重要なのはいかにビジネス課題を解決するかを定義し、ゴールを定めること。そこに向けたアプローチはさまざまだ。NAISTの技術メンターとデル・テクノロジーズが並走しながら取り組んだことで、プロセスへの考え方は実感してもらえたのではないか。次の3カ月は実証実験に入り、開発に関わる作業が増えてくることになる。どんどんプロトタイプを作り、先に進んでいけるようにサポートをしていく」(平尾氏)

 またデル・テクノロジーズ 瀧谷氏は、このDXプロジェクトが日本全国の中堅企業における取り組みを触発するものになることへの期待を語った。

 「DXの実現においては、技術面だけでなく『経営層と現場の相互理解』が必要であり、従来のプロセス慣習にとらわれずに挑戦していくマインドも大切だ。参加企業同士がDXを推進するうえでの工夫や苦労を共有し、それを日本全国にも広げ、中堅企業のDXが推進されることで、日本の経済が活性化され国力が底上げされることを期待したい」(瀧谷氏)

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