今回のことば
「なぜ、今『紙』なのかと思う人もいるだろう。だが、人の感情を動かすために『紙』は大事なツールになる」(日本HPの岡隆史社長)
「紙、復活」を宣言した背景
東京・有明の東京ビッグサイトで開催された国際総合印刷テクノロジー&ソリューション展「IGAS2018」の日本HPブースには、「紙、復活」の文字が大きく掲げられた。
デジタル化やペーパーレス化が叫ばれ、紙の使用を削減する動きが加速するなか、印刷の展示会とはいえ「紙」にフォーカスしたメッセージは驚きをもって迎えられた。
しかも、横文字のメッセージが多い日本HPが、漢字だけを使ってメッセージを示すのは異例だ。それだけインパクトを持たせた仕掛けともいえる。
「なぜ、今『紙』なのかと思う人もいるだろう。だが、人の感情を動かすために『紙』は大事なツールになる」と日本HPの岡隆史社長は語る。
日本HPが紙の復活を宣言した背景には、デジタル印刷によって、これまでとは異なる印刷の提案ができるようになったことが大きい。
デジタル印刷のメリット
デジタル印刷は、従来のオフセット印刷にはないメリットがいくつもある。
たとえば、デジタル印刷では「版」を不要にするため、それを作ったりセットしたりする手間がない。結果として、いつでも印刷したいときに、必要な部数を印刷できる環境が実現する。
HP Inc.アジアパシフィック&ジャパン グラフィクスソリューションズビジネス バイスプレジデントのマイケル・ボイル氏は「必要なときに必要な部数を印刷することで、在庫を持つ必要がなくなる。印刷された書籍のうち、35%が廃棄されている現状を改善できるほか、物流費用や保管費用も削減できる」とする。
デジタル印刷では、1度に異なる種類の雑誌を印刷するといったことも可能だ。
印刷をパーソナライズ化できる
2つ目のメリットは、パーソナライズ化した印刷が可能になる点だ。
食品や飲料などの商品のラベルに、名前を入れたり写真を入れたり異なるメッセージを入れることもできる。
コカ・コーラでは、2012年から、オーストラリアでスタートした異なるラベルを印刷したマーケティング活動を、すでに80ヵ国において展開している。このマーケティングキャンペーンは、日本でも実施されており、ラベルに名前が入ったボトルを見た人も多いだろう。先頃、インドにおいて、29種類のメッセージ、17言語、1億1000万枚のラベルを3ヵ月に渡って制作したという。
また、HP Mosaicソリューションと呼ぶ独自技術を使えば、素材データを入力するだけで、自動的に拡大、回転などを繰り返して、世界にひとつだけのユニークなデザインを大量に自動生成できる。ロッテでは、キシリトールガムのパッケージに採用。世界にひとつしかないデザインで製品を販売した。日本HPでは、このほどCollage(コラージュ)ソリューションと呼ぶ新たな技術を発表。複数のイラストなどを自動的に拡大、縮小、回転させたり、色を変えたりしてレイアウトすることで、同様に世界にひとつだけのデザインを生成することができるという。
さらに、雑誌では個人ごとにメッセージを入れたり、ダイレクトメールには直接送付先を印刷したりなども可能になる。
「産業印刷のデジタル化が、ビジネスを変えることになる」(ボイルバイスプレジデント)というわけだ。
さらに、日本HPは環境対応にも力を注いでおり、これもデジタル印刷を提案する同社の強みのひとつだとする。
「省電力や、健康被害がないインクを使用するなど、地球に優しく、人にも優しく、社会に対しても優しいということを重視している。そして、水性インクであるため臭いもしない。環境対応への意識が高いのがHPの特徴」(日本HPの岡隆史社長)とする。
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