Haswell-EやSkylake、5年前のSandy Bridge-Eと比較
それでは今回のベンチマーク環境を紹介しよう。比較対象に前世代のHaswell-E、さらに定格クロックでは現在最速のCore i7-6700Kを搭載するマシンを用意した。さらに5年前のハイエンドPCからの買い替えを想定し、Sandy Bridge-E搭載マシンを準備した。定番構成を使ったライバル的構成と、旧世代PCとの比較をご覧頂きたい(所々年代の合わないパーツはあるが……)。
【Broadwell-E/Haswell-E環境】
CPU:Core i7-6950X(10C/20T、3GHz、TB2.0時最大3.5GHz)、Core i7-6900K(8C/16T、3.2GHz、TB2.0時最大3.7GHz)、Core i7-6850K(6C/12T、3.6GHz、TB2.0時最大3.8GHz)、Core i7-6800K(6C/12T、3.4GHz、TB2.0時最大3.6GHz)、Core i7-5960X(8C/16T、3GHz、TB2.0時最大3.5GHz)、Core i7-5930K(6C/12T、3.5GHz、TB2.0時最大3.7GHz)、Core i7-5820K(6C/12T、3.3GHz、TB2.0時最大3.6GHz)
マザーボード:ASUS X99-DELUXE II(インテル X99)
メモリー:DDR4-2133 8GB×4
グラフィックボード:GeForce GTX 1080 Founders Edition
ストレージ:インテル SSDPEDMW400G4R5(NVMe SSD、400GB)
電源:クーラーマスター V1200 Platinum(1200W、80PLUS Platinum)
OS:Windows 10 Pro 64ビット版
【Skylake環境】
CPU:Core i7-6700K(4C/8T、4GHz、TB2.0時最大4.2GHz)
マザー:ASUS Z170 PRO GAMER(インテル Z170)
メモリー:DDR4-2133 8GB×2
グラフィック:ASUS STRIX-GTX980-DC2OC-4GD5(GeForce GTX 980)
ストレージ:インテル SSDPEDMW400G4R5(NVMe SSD、400GB)
電源:クーラーマスター V550 Platinum(550W、80PLUS Platinum)
OS:Windows 10 Pro 64ビット版
【Sandy Bridge-E環境】
CPU:Core i7-3690X(6C/12T、3.3GHz、TB2.0時最大3.9GHz)
マザー:ASUS X79-DELUXE(インテル X79)
メモリー:DDR3-1866 8GB×4
グラフィック:ASUS ENGTX580 DCII/2DIS/1536MD5(GeForce GTX 580)
ストレージ:インテル SSDSC2BW240A4(SATA SSD、240GB)
電源:クーラーマスター V1200 Platinum(1200W、80PLUS Platinum)
OS:Windows 7 Professional 64ビット版
まずはCPUの馬力を見るのに最適な「CINEBENCH R15」を使用する。3DCGレンダリング処理は極めて多コアCPUが有利となる。そのため、コンテンツクリエイターとBroadwell-Eの上位モデルは非常に相性が良い。
Core i7-6700Kがシングルスレッド最速、マルチスレッドでも5年前のCore i7-3690Xの処理性能に匹敵する性能を持っていることにまず驚くが、やはりCore i7-6950Xの10コアパワーの破壊力は抜群。1世代前のフラッグシップであるCore i7-5960Xでも太刀打ちできない。同じ8コアであってもCore i7-6900Kが5960Xを完全に打ち負かしているのも興味深い。多コアCPUでもクロックを上げられるITBM3.0の効果ありといったところだろう。
続いては「3DMark」でゲーミング環境における総合的なスループットを比較した。3DMarkだとグラフィックボードを通じて画面描画を指示する仕事のほかに、CPUを使った強烈な物理演算作業も評価される。特に最近はリアルさ追求のために演算処理も複雑化しているため、CPUパワーは高いほうが良いのだ。このテストはGPUの性能差で大半が決まるため、グラフィックボードをGeForce GTX 1080 Founers Editionで統一した場合も計測した。ちなみにHaswell-Eはどちらの場合でもGTX1080を装備させ、Broadwell-Eと直接比較できるようにしている。
GPUが異なるプラットフォーム対決では、突出した描画性能を誇るGTX1080を装備したBroadwell-E&Haswell-Eの圧勝。特にその中でもCPUのクロックが上がりやすいBroadwell-Eのスコアーが高くなっているということは、物理演算テストでCPUのパフォーマンスが評価されていることがわかる。10コアのCore i7-6950Xが2番手に甘んじているのは、1コアを除けば全体に低クロック動作であるためだろう。
さすがにGPUをGTX1080に統一するとスコアー差はぐっと小さくなるが、ここでもCPUパワーに余裕のあるBroadwell-E、特にCore i7-6850K以上が魅力的だ。旧フラッグシップのCore i7-5960Xより安いのに、スコアーは同等以上。安くて速いという点ではCore i7-6800Kも良さげだが、PCI Expressが28レーンと狭いためマルチGPU環境を視野に入れるならやや避けたい選択肢だろう。
とはいえ、Broadwell-EやHaswell-Eなどの高価な多コアCPUのゲーミングにおける恩恵はコストを考えると現時点では少ない。10コアCPUを生かすなら、CINEBENCHのような3DCGレンダリングか、動画のエンコードだろう。そこで、再生時間およそ3分20秒の4K動画をH.264コーデックのMP4ファイルに書き出す時間を比較してみた。編集には「Premiere Pro CC(2016)」、エンコードは「Media Encoder CC(2016)」を使用。ビットレート10MbpsのVBRでエンコードするが、1パスと2パスで違いが出るかもチェックしている。
Core i7-6950Xでは、元素材とほぼ等速で4K動画への出力ができた。Core i7-6900K以下3モデルのパフォーマンスも前世代より優秀だ。Haswell-E対Broadwell-Eだと差は小さいが、Sandy Bridge-EやSkylakeのマシンなら圧倒的なアドバンテージをもって作業を行なえる。クリエイティブ系ワークにおいて多コアCPUは正義なのだ。
しかし、性能が向上してもワットパフォーマンスが悪化すれば、今時のシステムとしては厳しい評価を下さざるを得ない。そこで「Watts Up? PRO」を用いシステム起動10分後(アイドル時)と、「OCCT Perestroika 4.4.2」のCPU Linpack実行から10分後(高負荷時)を比較した。このテストは高負荷時にCPUにのみ負荷をかけるため、GPUは統一していない。
トップはCPUもGPUも省電力性に劣るSandy Bridge-Eのシステムだ。電源ユニットに今風の80PLUS PLATINUM電源を使っていても、CPUの燃費の悪さは隠せない。そこで注目したいのがBroadwell-Eの4モデル。今回テストした範囲では、Skylakeには及ばないものの、Haswell-Eよりもほんのすこし扱いやすいCPUであることがわかった。
コア数を生かす処理をITBM3.0で底上げ!高性能だがコスパは問うな
インテルのエンスージアスト向けCore i7はコスパ云々を問うてはならない。もちろん動画編集やCG作成をメインで考えるなら、通常のCore i7より有効だろう。PCI Expressのレーン数も多いため、バスの帯域に悩むことなくマルチGPUやNVMe SSDを組み合わせたシステムができる、というのも長所。
ゆえにBroadwell-Eはコストをかける前提のマシンのためのCPUであるため、コスパ云々を問うのは野暮の極みだ。Core i7-6950X以外のCPUはスペックと値段のバランスはHaswell-Eとほぼ同じだが、ITBM3.0をしっかり生かせば従来よりもパフォーマンスは出しやすい。ただし、ITBM3.0関係の対応が不透明なため、導入時は十分なリサーチを積んでから導入すべきだろう。
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