佐武宇綺が聞いちゃいます オーディオのココが知りたいです! 第9回
エンジニア藤田厚生さんが気付いた“いい音”が生まれる瞬間
ハイレゾ時代でも、狙う音は驚くほどアナログ時代と同じ (1/6)
2014年12月25日 17時00分更新
佐武宇綺がいい音を探す旅。11月から再開したセカンドシーズンでは、プロの現場を取材しながら、さまざまな立場で“いい音とは何か”を語ってもらっています。訪問したのは、有限会社エフ代表取締役の藤田厚生さん。エンジニアとして、DSD録音には早期から取り組み、渡辺香津美さんの作品をはじめとしたさまざまな作品を手がけてきました。
最新作は、e-onkyo musicで12月10日から独占先行配信が始まったピアニスト山中千尋さんのDSDライブ録音(関連サイト)。
今回はそのマスタリング作業の現場にお邪魔して、作業中の楽曲を聴きながら、エンジニアの仕事についてお聞きしました。
お話を伺った人──藤田厚生さん
1953年4月9日生まれ。九州芸術工科大学(現九州大学)音響設計学科卒業。TAMCO、東芝EMI、ファンハウス、バーディハウスなどを経て、2004年3月に有限会社エフを設立。ハイレゾ配信されている作品としては、マーラー:交響曲第5番(ロンドン交響楽団, ヴァレリー・ゲルギエフ指揮)などLSOのライブシリーズ。Acoustic Flakes(渡辺香津美)などギタールネサンスシリーズ。Bewitchedにおけるエディ ヒギンズの諸作の制作などがある。
信頼関係があれば、音は自然とよくなっていく
佐武 本日はよろしくお願いします。私(佐武)もアーティストの活動もしているのですが、レコーディングする際に、スタジオのエンジニアさんたちがどんなことをしているのかは、あまり知らないままで、どんな仕事なんだろうと、ずっと思っていました。
藤田 僕はね、録音の世界に入ってかれこれ35~6年になるんです。
佐武 35~6年!!!! きっかけは何だったんですか?
藤田 きっかけ? そうだなぁ……。
佐武 音楽が好きだったんですか?
藤田 そうですね、単純だけど、音楽が好きだったんだろうなぁ。父親は今でいう“オーディオマニア”で、コンポーネントをいろいろ揃えていたし、僕自身も学生のころからその音を聞いて過ごしていました。そこから興味を持ったっていうのはあるかもしれないですね。
佐武 家庭環境にも恵まれていたんですね!
藤田 大学を卒業してすぐにこの世界に入り、二十数年経ってから、ようやく気付いたことがあります。それは「どうすればいい音を出させるか」を考えたほうが、結果的に「いい仕事につながる」ということ。それまでは一生懸命、マイクを変えてみたり、レコーディングのコンソールをいじったりしていたんだけど、あるとき、何もしなくてもスタジオのほうからすごくいい音が出てくるようになったと感じる瞬間がありました。
佐武 調整なしで音がよくなったんですか。
藤田 そう。そして気付いたのが、お互いの信頼関係が築けると、何もしなくてもいい音が出るんだってことです。だからエンジニアには「人間性が大事なんだ」「お互いを信頼できる空気を作るのが仕事なんだ」って思ったんですね。
もちろん基礎として機材のことや技術的な知識を持つのは大前提になるとは思います。そうでないと信頼関係が生まれないので。
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